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第十八話 いい加減にしないとキレます……(怒)


日本国 首都東京 異世界情報戦略研究部


「先輩。ロマンス王国に滞在している外交官が大勢のロマンス王国女性高官達に結婚を迫られて困っているから何とかしてくれと」


「異世界女性問題は四科の連中に回せ!」


「〇〇事務所がアメリア合衆国連邦に男性アイドルグループのコンサートを開きたいと報告が」


「安全対策に対してまだアメリア政府との調整が済んでないから却下と〇〇事務所の馬鹿達に伝えろ!」


「あの、女性保護団体が惑星アースの男性優遇の処置廃止の抗議文に対して」


「俺達は異世界案件の部署だ!国内問題の案件をこっちに持ってくるな!」


異世界情報戦略研究部の部署は対応に追われていた。日に日に入ってくる海外に派遣した工作員達による重要情報を元に異世界の対策を各部署より求められて、既に二徹三徹は当たり前にこなして、既に一週間は家に帰っておらずエナジードリンクを飲みながら仕事をしている人間が大多数であった。


「せ、先輩。佐藤の奴が倒れました!目が白目で呪文を唱えて色々とヤバイです!」


「バケツに水を入れてぶっかけて起こせ!アイツが担当している案件の締め切りは明後日だぞ!もしダメなら1時間仮眠室で寝かせろ!1時間経過したら叩き起こして仕事を再開だ!」


「先輩!私を家に帰らせてください!もう家に3日も帰ってないですよ!給湯器のシャワーとウェットテッシュだけで体や頭を洗うのは我慢の限界です!いい加減に家でちゃんとしたお風呂入りたいですよ!」


「俺は一週間家に帰ってねえ!最低でもこの案件の半分が終わるまで絶対に帰るなよ!お前に任せてる案件に他の連中を回せる余力がねえんだからな!」


人は入ってくる。政府からも民間からも優秀な人材は異世界情報戦略研究部に入ってくる。しかし、人が入ってくれば来るほどに仕事が増加されていき、仕事がワンコそばの様に追加されていく現状に異世界情報戦略研究部の職員達はいつまでも終わらない仕事に参っていた。なまじ優秀な人材が集まっている為に、重要な案件から下らない案件までも異世界情報戦略研究部に回されているため彼等達は莫大な仕事に忙殺されていた。


いつまでたっても終わらない異世界案件の仕事に異世界情報戦略研究部の共通する思いが上に対して強くなった。


「こんな下らない案件位は自分達で解決しろ!何よりいい加減に俺達を休ませろ!!」


高度な政治的問題ならば彼らも仕方ないと割り切って仕事するだろう。だが、異世界の女性が迫ってくる、異世界の女性が結婚してくる、異世界の女性達が嫉妬してくる……etc、etc。そんなハニトラ用件でもない男女関係や女性同士の問題まで対策書を要求するな。自分達は都合の良い何でも屋じゃなえんだよボケ!と、最長で一週間も残業して忙しくて家に帰れない大量の仕事の異世界案件の半分は、この惑星『アース』の女性問題なのだから彼らがキレてもおかしくないのは無理もなかった。


「先輩……俺達……いつまで男女問題を解決できないチキン野郎相手に対策書を作成しないといけないんですか?」


「もうイヤ……お風呂……ダメなら寝かせて」


「言うな……役所のお偉方はどんな下らない内容の報告書でも絶対に優劣は決めないで締め切りは伸ばしてくれねんだ」


マジでキレそうだ。そう心の中で呟いて仕事を再開する異世界情報戦略研究部の職員達であった。


ーーー。



大和帝国 帝都秋桜 天魔高等学園


「え、国際パーティに俺達が参加してくれ?」


「う、うん。お母様の手紙に山崎君と白浜君も招待してほしいって書いてあるんです」


午前の授業が終わって昼休みに屋上に集まっている山崎と白浜。そして仲良し三人組の桜、穂乃果、志野と新たにグループに加わったユニオン貴族のキャロルが集まって話し合っていた。内容は国際パーティの招待に関して桜から説明されて、山崎と白浜は首を傾げていた。


「そのパーティには私も招待の手紙が来てますよ、ヤマザキ様シラハマ様」


大和帝国から渡された招待状をキャロルは二人に見せる。


「貴族令嬢のキャロルはわかるけど、一般人の俺達が何で武家や貴族が開く様な国際パーティに招待されるんだ?」


「僕達は大和帝国にきて日が浅いし、何より国際パーティを開く主催者が興味を引く様な実績や繋がりもないよ。僕達を招待するくらいなら大和帝国で滞在している大使館の人達や海外勤務している企業の人に話が行くと思うんだけど」


招待される様な接点が見当たらない為に山崎も白浜も首を傾げていたのだ。


「そんな事ないよ。二人とも男性で、しかも女性に優しくて、女性に対して恐怖心がないのは学園の誰もが知っている事実だから招待されても不思議じゃないよ」


「……武家の桜とユニオン貴族のキャロルと親しい……それだけで二人は誘われる理由がある」


穂乃果と桜は山崎と白浜が招待された理由を説明した。


「だから僕みたいな百姓でも学園出身者で桜の友人って事で招待されてるんだ」


「……同じく」


二人も同じ様に招待状を山崎と白浜に見せた。


「どうする白浜?」


山崎としは貴族達や大企業の重役達が出席するパーティに参加する事が面倒と考えであった。皆んなでワイワイと楽しくやるパーティ好きであるが、堅苦しい格式を重んじるパーティには、自分の様な人間には合わないだろうと思っていたからだ。


「僕は出たほうが良いと思ってる」


それに対して白浜は、参加した方が良いと呟く。


「理由としては桜さんの家からの招待もあるけど、今回の様な国際パーティに日本の学生が招待された前例は聞かないし、参加する価値はあると僕は思うよ」


「頭が良い白浜が参加した方が良いって言うならそうなんだろうな。なら俺も参加するよ」


山崎と白浜が参加すると決めて桜達は嬉しそうな表情になる。


「パーティに参加するならば、衣装を整えないといけませんよ山崎様、白浜様」


「うわ!清水さんいつのまに!?」


山崎と白浜の二人の護衛を学園や警察本部より任されている男性保護警官の清水達が突然現れた事に驚く山崎。


「私はお二人の護衛を任されています男性保護警官ですよ。どんな時でもお二人の近くにいますよ」


「そ、そうですか」


冷静な表情で呟く清水に、山崎も白浜も深く聞く事をやめた。


「男性である山崎様や白浜様は無論のこと、招待されている皆様も、それ相応の格好で参加する事をオススメします。何しろ今回の国際パーティは主催者は大和帝国ですが、参加国にはユニオン、アメリア、コザック、ガリアンの四ヶ国の政府や民間の重役や、天魔に留学生として転校してくる重役達のご令嬢達も参加しますので、お恥ずかしくない格好でお願いします」


「でもな、俺、そんな格式あるパーティに参加したことないからな。どんな格好すれば良いかわからねえよ清水さん」


「それでしたらご安心下さい。格式あるパーティに参加するために着る正装をオーダーメイドを作製してくれるお店を私は知っていますので、今日の授業が終わりましたら直ぐに行きますよ。特に男性の正装は時間がかかりますので」


今回のパーティは『大和帝国』の世界男性保護委員会問題に対する失態で各国に対して不信感を拭う意味で開催されたパーティである。そのため『大和帝国』側も日本男性がパーティに参加すると各国に通達した。未だに日本男性との接点が限定的であるため、未婚の若い女性達を中心に『大和帝国』は無論、各国の女性達もパーティの参加を表明した。


それは、ある意味で数少ない男性達をかけて女性達の壮絶な戦いの幕開けとも取れるが……。


「わかったよ。まあ、大和帝国から送られた補助金にある程度は余裕があるから大丈夫かな」


「そうだね」


そんな男性と出会う機会が本当に少なく、重役や貴族の立場になれば、メンツを一般人よりも意識しなければいけない為に問題を起こしかねない男性との付き合う事は難しい。そんな惑星『アース』の一般女性達より男性と付き合う比率が低い為に、貴族や重役達の娘達から見れば山崎や白浜も完全な優良物件であった。


(今回のパーティでヤマザキ様やシラハマ様に群がる野獣は大勢いる事は確実です。ですから私達でヤマザキ様とシラハマ様を守らないといけませんよ!)


(山崎君を狙ってる腹黒なアンタの提案に乗るのは気にくわないけど今回ばかりは賛成。二人とも女性に対して無防備すぎるからね)


(……無理やり国際結婚されかねない)


(が、頑張って皆んなで二人を守りましょう!)


パーティに参加する女性達の思惑を知っている四人は山崎と白浜を守る為に協力する事を誓う。

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