第十四話 各国の思惑2
今回も学園話はなしです。今しばらくお待ち下さい(大汗)
アメリア合衆国連邦 首都クルセイダー スターダストハウス
「まさか真っ向から世界男性保護委員会の意見を跳ね除けるとはね」
惑星『アース』最強の列強国であり民主主義国家の象徴とも言える『アメリア合衆国連邦』大統領であるレジーナ大統領は『日本』が『大和帝国』で行われた男性保護委員会に対する会談内容の資料を見て感心した様に呟いた。
「しかし大統領。ニホンも我が世界に転移して一年は経過しています。男性保護委員会を敵にすればどうなるか理解は出来ているはずです」
レジーナの補佐官は『日本』の『非常識』とも言える行動に不思議に思いレジーナ大統領に答えた。
「確かに貴女の言う通り世界男性保護委員会を敵に回せば世界から孤立してしまうわ。でもニホンは例外よ。あの国は世界男性保護委員会を敵に回してもたいして問題は起きないわ」
「何故ですか?」
世界男性保護委員会は列強最強であるアメリア合衆国連邦ですら無視できない絶大な権力を保持しており、世界男性保護委員会は『世界各国』の『男性』達の代弁者とも言われており、その影響力は絶大である。
「価値観の違いよ。ニホンが以前いた世界『地球』では働き手の主力は男性よ。我々の世界では男性が働き手の主力なのは非常識だけど、地球世界出身のニホンが世界男性保護委員会の要求を飲むわけがないわ」
「ならば大統領。世界男性保護委員会の要求を飲まないならば男性解放を口実にニホン男性の亡命政策を実行に移しますか」
「既に各国はニホン男性解放という理解で動いている噂もあります。各国に乗り遅れない様に我々も早く実行しましょう」
「そうね……ニホン男性がアメリアに亡命するならプラスでしかないからやって頂戴」
レジーナ大統領は部下達に日本男性亡命政策を許可するが、亡命に関しては『日本』に大ダメージが受けるほど成功するとは思ってはいなかった。外交官やレジーナ個人で雇った諜報員の資料から調べてみても『日本』が、そこまで甘い国ではない事は理解しているからだ。
(軍を動かしてニホンを屈服させるのが手っ取り早いけど、いかなる理由があっても男性国と戦端を開けば国民は黙ってはいないし、私を蹴落としたい議員もここぞとばかりに非難して私を大統領の地位を落とそうと動くでしょうね。それより本当に愚かね。ニホンにはアメリアの外交セオリーが機能しない事に今でも気づいていないなんて)
アメリアの勢力に組み入れたいから日本を屈服させるために戦端を開くメリットがレジーナには感じられないからだ。そもそも日本男性が惑星『アース』と同じ男性思想と思っている時点で亡命政策は失敗している事に気づいていないこの部屋にいる部下達に対してレジーナは呆れていた。
(まあいいわ。腹黒やボルシチもニホンに対しては現状は強く動けないでしょうから今はセオリーしか守れない石頭の議員を私の政権から追い出す所から始めないといけないわ。あの腹黒は少数とはいえアリストクラットをヤマトに入学させる事に成功している。早く動かないとまずいわ)
レジーナは日本にたいして有効な議員の新たな選抜を始める様に動き出す事を決意した。そして『日本』が世界男性保護委員会に対して真っ向から反発した事には個人的には痛快と思っており、彼女も世界男性保護委員会の横暴な態度には呆れ果てていたからだ。
ーーー。
コザック共和国 首都モルスト コザック宮殿
「あそこまで堂々と世界男性保護委員会に反論するとは……ニホンに対する認識を改めなければいけませんね」
「……同志ユリーナ」
コザック共和国最高指導者は日本の世界男性保護委員会に真っ向から反論した事実の資料を目の当たりして険しい表情をしていた。
「現在の各国と国内の反応はどうなのですか?」
「各国とも我が国同様にニホンに対して困惑しています。何より女性優位な発言を全面的に出した事で我が国の男性保護過激派がニホンに対して猛抗議、またはニホンの男性を解放する為に戦争すべきとの声も……」
「なんて愚かなんですか……すぐに逮捕しなさい!男性国ニホンに対して戦端を開いてしまえば我が国は世界の敵になってしまいます!強権を発動しても構いません!盲信的な愚か者の火種が強くなる前に中心人物を逮捕して火種を消しなさい!」
世界の男性不足問題の解決に繋がり、女性が理想とする男性が大勢いる国を敵にしてしまえば列強第二位の力があるコザック共和国にたいしても列強小国関係なく同盟を結んで戦争を始める。我が国を世界の悪の根元にするつもりかと、普段は余程の事でも怒りもしないユリーナは珍しく怒気を放って怒り、高級警官に対して命令を下した。
「全く……それよりユニオンのアリスタクラート同様にヤマトに留学生を送り込む件はどうなりました」
「ヤマト政府との調整が難航しています。今しばらく時間が必要です同志ユリーナ」
「やはり昔の戦争の遺恨がココで響いてしまいましたか……逆にユニオンはかつての同盟国の繋がりを強く活かして来ましたね」
『コザック共和国』は国土は世界一広く人口や天然資源も豊富であるが永久凍土の土地が大半を占めていた為に、コザック共和国の前身であるか『コザック帝国』は凍らない港を確保するために東南大陸の凍らない土地を目指して長らく南方政策を進めていた。そして20年以上前に『大和帝国』が植民地の領土として保有していた大陸の南地域を巡り戦争した経験がある。この戦争は辛うじて『大和帝国』が勝利を収めて『コザック帝国』の南方政策を阻止した経緯があり、そのため両国共に仮想敵国として認識していた。逆に『ユニオン王国』は世界大戦前までは長いこと『大和帝国』との同盟関係を結んでいた経験もあり、同盟関係が解消された現在でも政治民間問わずに繋がりが強い。
「……ままならないですね」
『日本』も『地球』という国家で自国と政治体制が近い『ロシア』という国に酷い目にあった経験もあって警戒心を緩めないでおり『大和帝国』も『コザック共和国』の前身である『コザック帝国』の南下政策の遺恨もあり国交は開いているが仮想敵国としての意識は消えていない為に他国よりも留学生受け入れは難航している。
早く『日本』に対する不信感を払拭しなくては男性不足問題解決に遅れてしまうと焦るも不信感解消には至らず、現時点で留学生受け入れもままならない為に心の中でため息を吐くユリーナであった。
ーーー。
ユニオン王国 王都アルビオン アトランタ宮殿
「ニホンが世界男性保護委員会に反論……ね」
『ユニオン王国』の女王であるクラリッサは会議室で『世界男性保護委員会が『日本』対して猛抗議して『日本』が猛抗議を真っ向から跳ね除けた事が書かれた資料を見て興味がない様な表情で呟いた。
「女王陛下。各国は『一部』を除いて今回のニホンの世界男性保護委員会の抗議を跳ね除けた事を理由に男性保護を理由にニホン男性亡命政策に動いています」
「愚かね」
議員の報告を聞いてクラリッサは呆れた様子で呟き、会議室にいる議員達も同じように各国の政策に対して呆れた様子であった。
「ニホン男性の価値観がこの世界の男性と同じ様に動いている時点で既に失敗に終わっている事に気がつかないなんて、ニホンが男性と女性比率が同等の異世界から来た国家という事実を忘れているとしか思えないわ」
「女王陛下のおっしゃる通りです」
「ニホン男性を甘く見過ぎですよ」
『ユニオン王国』では働き手の主力が『男性』である日本が世界男性保護委員会の抗議と要求に対して反論して要求を飲まない事は予想していた。真っ向からから反論して女性優遇措置を言った事は度肝を抜かれたが『ユニオン王国』の予想からは大きく外れず、更にユニオン同様に『一部』を除いて惑星『アース』で常識になっている男性優遇処置で『日本』の男性を取り込めると本気で思って行動している各国の動きも簡単に予想していた。
「それで我が国はどう反応を返しますか?」
議員の一人がクラリッサ女王に意見具申する。
「当然世界男性保護委員会に非難よ。長年に渡って築き上げたニホンの重要文化を全否定する愚か者に遠慮なんて必要かしら?そんな当たり前の事を私に聞くの」
「は、申し訳ございません」
クラリッサは意見具申した議員を非難したが棘がなく気にしている様子もなく議員の方も平然としていた。
(いつから貴女達『委員会』が世界の代弁者になったつもりかしら。貴女達は世界の列強の都合で産み出されたピエロだって事を忘れたようね。でもニホンと親密になれるチャンスを作ってくれた事だけは感謝してるわよ)
『ユニオン王国』は表向きは世界男性保護委員会の意見を聞いているが、それは本当に表向きであり『ユニオン王国』に都合が悪ければいつでも潰せる哀れなピエロという認識でしかなかった。今回の世界男性保護委員会の惑星『アース』の常識だけを強要して『日本』に対して不信感を抱き『日本』を援護する材料を提供して自爆してくれた事『だけ』は世界男性保護委員会に感謝しているクラリッサ女王であった。
ーーー。
神聖ガリアン帝国 首都ベルカ ベルカ総統官邸
「ヘルマン君。実に痛快だ。そうは思わないかね」
「は!総統閣下。ニホンをこの世界の常識に当て嵌めた事がそもそもの失態です。『委員会』にはそんな当たり前の事も考えられない愚か者の集団となった事実が露呈されました」
ヒドラ総統も世界各国の男性達の意見の代弁者を自称する世界男性保護委員会にはうんざりしている一人であり、ヘルマンもヒドラ総統や国に本気で忠誠を誓っているのに自分を国に巣食うだけの『種馬』と一緒にする世界男性保護委員会には嫌悪感を抱いていただけに、今回の日本の世界男性保護委員会に対して真っ向から反論した事はヒドラ総統同様にヘルマンにとっても痛快であった。
「全くその通りだよヘルマン君。あんな愚か者共に貴重な国民の税金が使われていると思うと不愉快極まるが、ニホンの反論のおかげで少しは胸がスカッとしたよ」
「自分も同感です総統閣下。それより閣下、今回のニホンの行動でユニオンを含めた一部の国はニホンの真意に気づき援護する為に動くでしょうが、列強小国関係なく多くの国は世界男性保護委員会に反論した事を便乗して動くと思われます」
「具体的には?」
「世界男性保護委員会は今回の件でメンツを丸潰れにされて『委員会』はニホン男性の解放を要求すると思われます。多くの各国はコレに便乗してニホン男性確保の為に亡命政策を実行に移すでしょう。しかし、この政策は失敗に終わる事は目に見えています。先ほども言いましたがニホン男性の価値観はこの世界の『男性』達と全く異なります」
ヒドラ総統は最も信用する側近で男性補佐官であるヘルマンの説明に満足した。そのヘルマンは一息ついて話を続ける。
「この世界の多くの男性同様に国に貢献しない『ゴミ屑』は世界男性保護委員会の口車に乗るでしょうがニホンではそんな『男性』はごく一部です。ニホン政府にとっては厄介払いを出来たと内心では感謝すると思われます」
「実に素晴らしいよヘルマン君。我々はユニオンと同様にニホンを援護する様に立ち回れば良いのだね」
「その通りです総統閣下。いつ沈んでもおかしくない穴だらけの船に乗船する必要性があると思われますか?」
「ないな。私は遠慮願う。目先の利益しか興味がない者や世界を支配した来でいる愚か者と行動する方ど私は酔狂ではない。ヘルマン君。世界男性保護委員会がニホンに対して行動を起こしたならば援護して、その見返りにユニオン同様に我が国もヤマトに留学生を送り込める様に動くのだ!」
「ハイル・ヒドラ!」
『神聖ガリアン帝国』もユニオン同様に動く事を決めた。世界男性保護委員会に真っ向から反論した『日本』の行動に一部の国を除いて世界に衝撃が走る。そして更なる日本の行動に世界は注目を集め政治は無論、世界各国の国民は男性国『日本』の動向に注目を集めた。




