第十二話 上級生との合同授業……対策する大和
大和帝国 帝都秋桜 天魔高等学園
ユニオンの貴族令嬢であるキャロル・アークライトの転校により天魔高等学園では男性国日本より留学生としてきた山崎と白浜の争奪戦は一層激しさを増していた。同じクラスの一年三組である女子生徒達は山崎と白浜の正妻、もしくは側室になろうと目を光らせている。そしてクラスメイトだけでなく他のクラスの女子生徒達も山崎と白浜との婚約を狙っているし、同学年だけではなく二年生、三年生も同じように婚約しようと腰眈々と正妻・側室としての地位を狙っている。
だが、山崎と白浜を狙っているのは天魔高等学園の生徒だけでなく教師達も同じだ。『大和帝国』では結婚は十六歳から二十六歳までが婚期とされており、それを過ぎれば完全に年増扱いされて男性からは見向きもされないとされている。そのため、若い教師達は今回の争奪戦が最後のチャンスと捉えており、山崎と白浜との結婚に対する気合はそこらの生徒達より高かった。
山崎と白浜に気づかれない様に女性達の水面下の戦いに更に火に油が注がれたのが、今日の体育の授業……。
「今日の体育は二年生との合同授業だからいつも以上に気を引き締める様に」
体育の中年女性教師の話を聞いた体育館で準備運動をしていた女子生徒達の表情か凍りついた。その光景に山崎、白浜、キャロルは首を傾げた。
「皆さまどうして凍りついているのでしょうか?」
「さあ?」
「二年生って聞くと天魔高等学園の先輩達だね。合同体育であそこまで凍りつくって事は何かあるんだろうね」
三人が話し合っていると一年生が緑一色のジャージに対して、赤一色のジャージを着ている女子生徒達の集団が現れた。
「準備体操は終わりました。一年生の皆様」
『は、はい……』
上級生の代表と思われる180センチの白浜に匹敵する高身長と黒髪のポニーテール特徴なモデル体型の女性の言葉を聞いて、一年三組の女子生徒達は引きつった表情と、怯えた声で答えた。
一年三組のクラスメイト達が怯えていた理由を三人は直ぐに知る事になる。
「遅い!もっと早く動きなさい!」
「はい!!!」
「腰が引けていますわ!怖がってないで正面で受け止めなさい!」
「ひえええ!!!!」
今日の体育の授業は『大和帝国』や『日本』でもお馴染みの竹刀を使った剣術である『剣道』と、投げ技や寝技主体の武道『柔道』の武道であり、山崎達が所属する下級生達は、上級生達によって、昭和のスポ根漫画の様にシゴかれていた。
「や、山崎君。み、水を頂戴……」
「大丈夫か穂乃果?」
上級生から解放されて汗だくになって倒れた穂乃果に、山崎は体育館に常備されている水筒から水をコップに注いで、それを穂乃果に渡した。あまりの疲労に手で渡すのも困難であると思った山崎は水を穂乃果に飲ませた。
「はぁはぁ……ありがとう」
「い、いや。これくらいはお安い御用だ」
穂乃果にお礼を言われたが山崎は少し顔を赤くし穂乃果から目をそらして照れていた。今の穂乃果からは火照った身体が熱い為にジャージを脱ぎ捨て体操着一枚。汗で体操着が身体についており、汗をかいた穂乃果からは石鹸の香りもし、バストはEカップの巨乳にくびれたウエストもマッチしてエロい為に山崎は目のやり場に困っていた。普段はお調子者の山崎であるが『日本』では彼女も出来た事もなく、『大和帝国』に来る前まで女子生徒達と頻繁に行動する事がなかった為に女性慣れしてない。そのためどう反応していか分からず困難していた。
「あ、僕汗臭いよね。不快な思いさせてゴメンね山崎君……」
「そ、そんな事ねえよ。今の穂乃果からは良い香りがするから……(顔真っ赤)」
「え!?その……え〜と(顔真っ赤)」
二人は顔を赤くして何とも言えない甘酸っぱい雰囲気になる。周りからは上級生下級生関係なく嫉妬されて暗黒オーラーが発してるのに二人は気付かないで甘い空気を周りに発していた。
「随分とまだ余裕がありそうですね築島さん」
上級生達の代表でもあるポニーテールが特徴な先輩が笑顔で山崎と穂乃果の所にきた。顔は笑顔だか黒いオーラーが身体に纏い目のハイライトは仕事をしてない為に、ある種の恐怖を二人は感じていた。
「物足りない様ですから前の三倍といきましょうか……」
「いえいえ委員長。三倍と言わず六倍にしましょうよ!」
「私たち下級生生達も手伝います!」
ゾロゾロと山崎と穂乃果に集まる女子生徒達。山崎は女子生徒達全員が黒いオーラーを纏い、笑顔で目のハイライトが仕事してない為に更なる恐怖を感じた。嫉妬が高まると黒いオーラーが目に見える事を山崎は本能で感じた。
「あははは……終わった」
穂乃果はこれから何をされるか理解して諦めた様に呟き、引きつった笑みを浮かべて上級生や下級生達に腕を引っ張られて連れて行かれた。山崎は意気地なしと言われても仕方ないと思いながらも嫉妬に狂った黒オーラーを纏った女性達に恐怖しており、上級生や下級生達に連れて行かれてる穂乃果を見ている事しか出来なかった。
ーーー。
大和帝国 帝都秋桜 料亭『神楽』
既に恒例となっている『大和帝国』の首相島田を筆頭とした信頼における重鎮数名との料亭『神楽』での秘密会談。今回の会談内容も男性国『日本』に対する議題である。
「やはり日本は世界男性保護委員会の要求を拒否しましたか」
男性保護委員会大和支部にて行われた『日本』との会議の内容を聞いて険しい表情となる島田首相。
「しかし首相。本当に『日本』は男性保護委員会の要求を拒否したのですか?」
「『この様な男性優位な要求を全て受け入れたら日本は崩壊してしまいます。この理不尽な要求は明らかな内政干渉だ』と言い要求を突っぱねましたね」
世界男性保護委員会は列強国ですら無視できない組織であるのに、その要求を断固として拒否した事に重鎮達は驚く。
「信じられません。いくら日本の働き手の主力が男性だったとしても男性保護委員会の最低限の要求を守らねば日本は世界から孤立してしまいますよ」
「それよりも男性に対する扱いが日本は世界最下位だと日本の男性達もわかった筈です。日本の男性達の待遇改正によるデモが起きてもおかしくありません!」
「男性保護最下位を理由に列強国からは日本に滞在している日本人男性達を保護する動きもあるんですよ。一体日本は何を考えているんですか!?」
惑星『アース』ではあり得ない男性軽視ともいえる『日本』の決定に重鎮の女性達の誰もが不思議に思っていた。
「信じられないと思いますが、日本の男性は多少の不満はある様ですが大規模デモが起こす様子はありませんね」
「そんな!?」
「どういう事ですか!?」
島田の言った言葉に信じられないと感じる重鎮達。『日本』の現在の男性の待遇は世界から見れば非常識であり『男性』に対する虐待だと言われても不思議ではないために大きな不満がない事に驚きが隠せなかった。
「日本人男性達の不満が少ないのは日本が以前いた世界である『地球』で得た『価値観』によるものが大きいと私たち外務省は判断しています。『地球』では私たちの世界と違って『日本』と同様に男女比はほぼ均一であり、男性が働き手の主力として認識されています。その様な理由もあり日本人男性達は不満が少ないと判断しています」
「いや、理屈は理解できます。しかし……」
島田首相の重鎮達の外交官である石田絵理香の言葉に重鎮の誰もが理屈は理解はできる。しかし、やはり価値観の違いに戸惑いが隠せない様子であった。
「我が国としても日本として譲れない理由もある事は理解しています。しかし、やはりある程度は日本にもこの世界の『価値観』を受け入れて貰わねば困るのも事実」
「しかし首相。日本は男性国という事もあり、普段なら強引に理由をつけて不平等な条約を要求するユニオンやアメリアも日本に対しては及び腰で決定打に欠けていますからね」
「そこですよ。世界各国で大問題となっている男性不足を友好関係を結べば解消できる魅力もあり、更に日本にはユニオン・コザック・アメリアといった列強国を相手に戦える巨大な軍事力もあります。そのため各国とも日本に対して強く出れません」
男性国『日本』との友好関係構築は進んでいる『大和帝国』にとっては喜ばしい事である。しかし惑星『アース』の価値観に対して真っ向反発する『日本』に対して困っているのも事実であり、世界各国に対して多大な影響力を誇る世界男性保護委員会の要求を『最低限』でも良いから飲む様に説得するのに苦労している島田首相達であった。




