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第十一話 因果応報……地に落ちた者達

少しシリアスです。今回は山崎や白浜達の出番はありません。


日本国 首都東京 異世界戦略研究部


「『また』摘発されて捕まった様ですよ先輩」


「またかよ。今の政権は容赦ねえのに『地球』の後ろ盾がないのにようやるわ」


「『俺達』は何でも許される……いつから自分達が国の頂点だと勘違いしたのやら」


「『地球』で得た偽りの地位なんて、この世界だと意味がない事に気づかないんですかね」


異世界戦略研究部の職員達は呆れた表情でネットニュースを見て呟いた。


日本は異世界転移してあらゆる面で大きく変化した。『地球』で築き上げた経済基盤の復活を第一目標とし、更に『アメリカ』という強力な後ろ盾を失った事により国全体で危機意識が高まり国家としての安全を盤石にする為に自衛隊の更なる国防費の増加や隊員のさらなる募集と日本は躍起になって動いていた。


そのため良くも悪くも『日本』では変化が起きて『地球』の時と比べて大幅な変革が起きている。新たな栄誉を得た者達がいる中で、大幅な変革により『地球』で築き上げた地位がドン底に落ち、生き残りに必死になっている日本の民間組織の代表格がテレビ局・新聞社・ネットニュースで情報を配信する『報道関係者』である。


『日本』が異世界転移して間もない頃に新政権が発足された。自衛隊の国防軍化の必要性や憲法9条の大々的な改正で野党から超タカ派で知られる近藤次郎こんどうじろう首相である。彼は異世界転移という非常事態に対して現状の法では対象できないとして、異世界に対応する新たな法を作り、迅速に動いて日本国内の混乱をいち早く治めた手腕により国民から高い支持を集めている日本国の現首相である。そんな彼が首相として初めに行った仕事は国民や政治家達にインパクトを与えた。


それは日本に根付いていたマスコミ上層部達の一斉摘発による大掃除である。


日本の報道関係者達の間までは『近藤の大虐殺』として知れ渡り、報道関係者にとってトラウマとなった事件である。コレは『地球』にいた時に日本の『隣国』を含めた諸外国の傀儡となり『日本』にとって不利益又はありもしない情報を記載して国民を煽ったりしていた報道関係者達が一斉摘発されたのだ。『地球』の『隣国』や『諸外国』の後ろ盾を失った日本の報道関係者達の上層部とテレビ局のニュース部門においては中核をなす自分達や看板ニュースキャスター達の大多数は逮捕された。


そして野党側にも手が回り、外国の傀儡となっていたマスコミ上層部達と通じて甘い汁を吸って『海外』から賄賂を貰っていた汚職政治家達も『海外』の後ろ盾を失った事を機に近藤首相は電光石火の早技で野党側の闇を摘発して大多数の政治家達を捕まえた。


普通ならマスメディアの不祥事に関しては報道各社が連携して火消しに回り、先ほど言った様に『海外』の力を使っても自分達の所業がバレない様に動くのだが『海外』という後ろ盾を失った報道関係者など政府にとっては脅威を感じる組織ではなくなり、長年に渡る政府批判や『海外』の力を使って自分の欲望を満たして権力を行使していた連中に対する政治家達の鬱憤はかなり溜まっていたので、その鬱憤を晴らす様に近藤政権は支持している政治家達は喜んで報道関係者を一斉摘発して大掃除を実行して報道関係者達の息の根を止めたも同然の事をしたのだ。


そのため、現在日本の報道関係の主力となっているのは腐った上層部によって閑職に追いやられた人間や、海外勢力と関わりがない末端の下っ端達である。そんな人達が新聞やテレビニュースの主力となったのだから各社・各テレビ局は大慌てであり、そもそも取材交渉やニュースの進行状況やニュースキャスターとしての莫大なノウハウを持っていたのが『地球』の『海外勢力』と関わりがあった海外勢力と結託して甘い汁を吸っていた腐った上層部や深く関わりがあった連中だった。その多くの人が逮捕・クビにされてノウハウを失った各社・各テレビ局は立て直しに奔走させられていた。実際に大々的に摘発された所は取材やテレビの撮影を許可を得るのも一苦労であった。


「悪いけど君達の新聞社の取材を受けたら我が社のイメージが悪くなるからお引き取りを」


と、大企業を含めた下請け会社が新聞社の取材を拒否するものが大多数。そして新聞社だけでなく『日本』を代表するテレビ局も……。


「ふざけんな!おたくらのチャンネルのニュースの取材はお断りだ!どうせ俺が喋った事を面白おかしく作り上げるんだろ!」


「事務所の人気が下がる!帰れ!」


『海外勢力』と深く繋がりある職員が滞在していた有名なテレビ局は、政治にある程度は詳しい人間なら呆れる位な政府批判しか流さないニュースや記者達が摘発された事が『近藤の大虐殺』で世間に深く浸透した為に芸能界は無論のこと、一般人も冷ややかな視線を浴びせて取材を拒否した。


そのため現在の『日本』のニュースの主力は『量』は莫大であるが『質』は安定してるとは言いがたい『比較的』にナショナリズムに関与しないネットニュースやネット番組が台頭していた。そのためネットの普及で利益が下がっている新聞社やテレビ局は、今回の近藤政権の行った大掃除により更に窮地に陥っていた。特に政治が深く関わりが強く『地球』の『海外』の意向が強く反映されたテレビ局ほど大手な為に、立て直しに四苦八苦していた。


「マスコミ本来の役割に徹すれば政府批判しても捕まりもしないのに……馬鹿ですね」


「だな。近藤首相も飴と鞭の使い分けを熟知してるのに、理由もない政府批判と『地球』同様にこの世界の『海外勢力』と結託して甘い汁を吸えば容赦ない鞭が飛ぶ事はよくわかっただろうに」


「今の政府は本当にその手のマスコミには容赦ないですからね」


近藤首相は『日本』の膿を全て出し切るためにもマスコミだけでなく、国家にとって厄介極まりないカルト組織や国家転覆を目論む過激社会主義達に対しても手続きを簡素化して摘発しており、良識のある者からは「現代の魔女狩り」として一部は批判もされているが『地球』にいた時の横暴なマスコミに対してウンザリしていた国民や政治家は大勢いるので近藤政権の行った大掃除に関しては国民は支持していた。


ーーー。


日本国 首都東京 首相官邸


現在首相官邸の執務室において現首相近藤二郎と重鎮数名が話し合っていた。


「首相。なぜ佐藤幸子議員を重要な会議の代表として参加させたのですか?」


「外務省からも非難が殺到しています。この世界にとって無視できない勢力と真っ向から対立する議員を代表に選んでは苦労して掴んだ友好関係を台無しにするのかと、抗議が殺到していますよ」


重鎮達の言葉に近藤は表情を崩さず淡々とした表情で答えた。


「彼女を選んだのは大和や世界に対する我々のメッセージですよ」


「メッセージですか?」


「まあ、口を悪く言えば『お前ら、俺達は男性国だからって甘く見てるだろ。何様のつもりだ、調子に乗るなよ』ってね」


「そ、それは確かに世界男性保護委員会の最低ラインの要求ですら我が国では難しいのは事実です。いえ、ですが……」


あまりの内容に戸惑う重鎮達。


「君達の心配もわからない訳ではないです。この世界に転移して一年。大和帝国と友好を結んで各国の国交樹立や経済の回復も順調に進んで日本が生き残る正念場であるからあまり挑発行為を控えてほしいという理由もわかります。ですが、あまりに及び腰ではこの世界の大国に簡単に飲みこまれますよ」


「ですが我が国が大勢男性がいる事で各国とも慎重に動いています。そんな直ぐには……」


「甘いですよ」


近藤は重鎮達に呟き、一息ついて近藤首相は話を続ける。


「この世界は地球は女性が9割を締める世界ですが、各国とも地球の歴史で例えるなら一昔前の覇権主義全盛期の時代なんです。地球世界の最低限のモラルが列強にあると思いですか?特にコザック共和国や神聖ガリアン帝国の建国内容など、ソビエトやナチスそのものですよ。その二ヶ国がモデルと考えれば男性を大量確保を目的に我が国に侵略戦争を仕掛けてもおかしくありません。民主主義国家のアメリアだって我が国を少しでも邪魔と判断すれば何かしら理由をつけて主要都市に原爆を投下する事はありえますよ。だがらこそ、各国に対してあのメッセージを送ったんです」


地球の歴史を例に出して危機意識を持つ様に説明した近藤首相。確かに地球で第二次世界大戦でソビエトとナチスが行った戦場は悲惨そのものであり、その国がモデルと考えればゾッとする重鎮達である。


「過去の悲劇を繰り返さない為にも軍備を増強し、抑止力として戦略核兵器の実戦配備も許可を出したんです。まあ、核兵器配備を安易にする為に『地球』にいた時に『海外』の甘い汁を吸っていた『クズ』達は邪魔なので処分はしましたが」


そう言ってニヤリと笑う近藤首相に重鎮達も息を飲む。今まで戦後の政府にとって頭が痛かった問題を一年足らずで全て解決してしまった近藤二郎首相の手腕には頭が下がる。タカ派の近藤政権は新世界の惑星『アース』を日本に栄光をもたらすのか、それとも破滅なのかは、まだ誰も知らない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 政治部分が地球の歴史に沿ってるので読みやすくて良かったです [一言] 今日の時勢においても捏造報道に熱心な某テレビ新聞社にウンザリしてたのでこの話を読んで少し気が晴れました 有難うございま…
[良い点] 外国勢力とくっつくメディアは悪い文明だから是非もないね(;´∀`) 近藤首相の判断は吉と出るか凶と出るか。続きから目を離せませんね。 覇権主義まっしぐらのイギリス、ナチス、ソ連、アメリ…
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