第九話 困惑する日本……で、大和でパーティ
日本国 首都東京 異世界戦略研究部
「この世界は色々と『地球』と比べて常識にズレがありすぎる」
「それは私も感じます」
「何しろ男性が世界的に希少で保護すべき対象なんて……『地球』の常識からかなり逸脱してますからね」
異世界戦略研究部に『日本』の外交官がため息を吐いて呟いた言葉である。惑星『アース』に転移して新たな国と国交を結んで新たな国際関係を構築する為に、世界各国に飛んで世界中の女性政治家と交渉している『日本』の外交官達だが惑星『アース』の常識には、未だに慣れないでいた。
「外交官として初めての経験だったぞ……あんなあからさまに夜の相手をしてくれと誘ってくるわかりやすいハニトラは」
「まさかと思いますが受けてませんよね?」
「受けるか……そもそも俺には妻がいるし、娘も結婚して今年には孫が誕生する予定なんだ。そんな大事な時期にハニトラにかかる馬鹿がいるか」
初老男性の外交官に安否を聞く若い女性外交官に、初老男性はハニトラに引っかかっていないとうんざりした表情で拒否した。
「私は大和帝国の女性政治家に色々と非難されて対応に苦慮しましたよ。男性保護、男性保護と、日本の男性人権を守れと」
「いや、何を言ってるんだと言いたいが……日本と違ってこの世界の男性は希少資源扱いだからな」
「何で男性が現場で働かせてるだけで非難されないといけないんですか!私の彼氏は工事現場の職人でガチムチで頼れる男らしい雰囲気に惚れたのに!」
「俺に文句言うな!てか、惚気るな!俺だって男性保護の条約という非常識な問題に頭が痛いんだよ!」
女性外交官の不満の言葉に、同い年の男性外交官は困惑して返事を返した。
「話を戻そう。この世界に転移して一年で、この世界で多大な影響力を持つ勢力図は理解はできた。民主主義国家の代表である『アメリア合衆国連邦』。共産主義国家の筆頭『コザック共和国』。絶対王政の『ユニオン王国』の三カ国だ」
「地球で例えるならアメリアが『アメリカ』でコザックが『ロシア』でユニオンが『イギリス』と言った感じですか」
「そうだな。今言った三カ国は世界の影響力も強く無視できない。現在、この三カ国を中心とした三極構造による睨み合いが続いている。更に『ナチス第三帝国』を思わせる『神聖ガリアン帝国』も無視はできない勢力に急成長を遂げている」
「1940年代の最も裕福なアメリカを思わせる国家に、ソ連を連想する共産主義国家に、イギリス全盛期に近い王政国家に、ナチスドイツと同じファシスト国家……どっちの勢力図にも巻き込まれたくないですね」
特にナチスドイツやソ連を思わせる国家とは、出来れば距離を置きたいと若い男性外交官はため息を吐いてつぶやいた。『地球』で起きた第二次世界大戦の『ナチス』と『ソ連』が行ったあまり聞きたくもない所業を知れば、そう思われても仕方なかった。
「どの国も自国の勢力図に組み込もうと必死に動いてはいるが……はぁ」
「何であんな欲望丸出しの人間が外交官に任命されてるか疑問に思いますよ」
「男性外交官と一緒に仕事してるだけで、各国の女性政治家に殺されるんじゃないかと思うくらいの殺気を当てられましたよ私……」
「そもそも男性保護って何だよ……『普通』逆だろ」
男性に近づきたい。そんな感じに鼻息を荒くして深い関係を築こうと近づいてくる各国の外交官に男性外交官は頭痛を覚え、日本では男性政治家が多く女性政治家が少ないと各国の女性政治家に知れ渡ると嫉妬され、日本の女性政治家を殺す勢いの殺気を当てる。そんな感じで『地球』との常識が色々な意味で通用しない事に気が滅入る日本外交官達であった。
ーーー
大和帝国 帝都秋桜 アミューズメント施設『神門』
アミューズメント施設『神門』。この施設はボーリング場、ビリヤード、ダーツといった施設が合併している総合施設。この様な施設を建てたのも『日本』のアミューズメント施設を参考に作られたとも言われている。そんなアミューズ施設『神門』に、天魔高等学園の女子生徒3名と、いま話題となっている『日本』の男性留学生が来てビリヤード場でプレイしているから周りはこの五人達に注目が集まっていた。
「あ、力加減間違えた。4番が凄い微妙な所に!」
「凄く撃ちやすい所に撃ってくれてありがとう山崎君……ほい!」
「うぉぉおお!」
三階にあるビリヤード場で山崎と穂乃果が『日本』では定番のビリヤードゲームナインボールをプレイしていた。その二人のプレイを白浜、桜、志野の三人は見学していた。
「どう山崎君。僕のビリヤードの腕」
「本当に上手いな穂乃果。俺もビリヤードはそれなりにプレイしたけど、穂乃果には敵わねえや」
「山崎君も結構上手いよ。基礎はできてるしね……あ、五番入った!」
「またか!」
こんな感じで山崎達五人はビリヤードを楽しんでおり、ある程度ビリヤードを楽しんだから次はボーリング場に行ってボーリングを楽しむ。
『ストライク!』
ピンを一回で全て倒して掲示板にストライクの文字が浮かんだ。
「しゃあ!」
『おお!』
山崎がストライクを出してガッツポーズをする。そんなストライクを出した山崎に皆んなが拍手した。
「いやぁ〜マジでボーリングもビリヤードも久しぶりだから楽しいぜ。ありがとうな穂乃果」
「山崎君が喜んでくれるなら僕も嬉しいよ。ねえ、皆んな」
「私も嬉しいです。男性とこんな夢の様に……(顔真っ赤)」
「……楽しい(若干顔赤い)」
と、自分たちが恋愛小説の様に男性と楽しく青春している事に嬉しくて仕方ない三人。そんな五人組を羨ましいと思って前話同様に嫉妬して殺気が篭った視線を浴びせる客員と店員さん達……浴びせるだけならまだいいが、一部の女性の中にはあまりに嫉妬が強すぎて実力行使に出る過激な行為を実行に移す女性もいた。
ーーー。
「大人しくしろ!」
「は、離せ!」
「何でよ!何で止めるのよ!」
一般人に偽装した男性保護警官達が、山崎や白浜達のグループに実力行使に出ようとした過激な女性達を拘束していた。
「全く……手間を取らせないでよ」
「アンタらみたいな連中がいるから私達女性が男性に軽視されるのよ」
山崎や白浜達に気づかれない様に素早く過激行為に出ようとした女性達拘束した男性保護警官達は、ゴミを見るような目で女性達に呟いた。
「うるさい!アンタ達は悔しくないの!あんなガキ達が男達と楽しく遊ぶ光景を私達に見せつけるなんて……私は我慢できない!」
「そうよ!」
「だから離せ!政府の犬!」
ワーワーと叫びながら拘束された体を引き剥がそうとするが、『大和帝国』の警察官の中でもエリートの中のエリートである男性保護警官は、一般部隊の軍人よりも優秀であらゆる戦闘技能を有しており戦闘力も高い為に素人は叶うはずもなく拘束は外れなかった。
「言いたい事はそれだけ。我慢できないからって大衆の目前で貴重な男性を『ヤル』なんて事は許されないわ。刑期は最低でも無期である事は覚悟しなさい……連れて行け」
「は!」
山崎達に対して拉致して、メタ発言になるが、この小説では表現できない行為をやろうとした女性グループは男性保護警官達に拘束されて店を出た。
「全く……現状、あの馬鹿達の様な行為をする連中は他にいないわよね」
「はい。現時点で嫉妬している女性は大多数ですが、過激行為を実行する輩は見受けられません」
「わかったわ。引き続き警戒を怠らない様に……特にあの二人は『日本』から来た男性留学生なんだから下手に傷でもつけたら重大な国際問題になって大和は世界から孤立するわ……上が貴女達を今回の任務に抜擢した理由を今一度思い返しながら警護につきなさい」
「は!」
山崎や白浜といった『日本』から来た男性留学生を警護する為に『大和帝国』側も男性保護警官達を配備していた。そして、この場にいる何名かは山崎と白浜の護衛として派遣されることは、山崎も白浜も現時点では知らない……。




