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東京都不死区  作者: 渡邊裕多郎
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第二章 謎の通り魔と遭遇・その7

      3




「あれ、ここにこんな店があったのか」


 一時間ほどショッピングモールを歩きまわり、それからエクス学園の寮までの帰路についた俺は、いままで気がつかなかった店を発見して足をとめた。いきなりだったから、腕を組んで一緒に歩いていた由真がつんのめる。


「何よ慶一郎。急にとまらないでよ」


「ああ、悪い」


 返事をしながら、俺は店の前まで歩いて行った。俺の横で由真が怪訝そうな顔をする。


「ここって、人造人間のパーツ屋じゃん? こんな店になんの用が――あ、そうか」


「ごめん、ちょっと寄っていいか?」


「それは、かまわないけど」


 由真が俺から手を離した。俺の後ろについてパーツ屋の扉をくぐる。


「いらっしゃいませ」


 出迎えた店員は、十歳くらいの、金髪ショートのフランス人形みたいな美少女だった。人間ではない。エクス学園でも見たホムンクルスである。同じ魔導師に製造されたシリーズなのか、顔だちもよく似ていた。


「あ、こんばんは」


 と思っていたら、ホムンクルスが俺の顔を見て頭をさげた。俺のことを知っているみたいな感じである。


「すみません、どこかで会いましたっけ?」


「え? ほら、エクス学園で何回かすれ違ったでしょう?」


「あ」


 同じシリーズのホムンクルスじゃなくて、同じホムンクルスだったらしい。


「これは失礼。俺は羽佐間慶一郎って言って、本土からきた人造人間なんだ。よろしく」


「そうですか。私は、アンディードと言います。魔導師街でつくられたホムンクルスです」


 アンディードと名乗ったホムンクルスが言うと同時に、その目が赤く輝いた。結華と同じだな。だから不死街で働いてるんだろう。


 そのアンディードが、俺の背後にいる由真を少し凝視し、それから、あらためて俺に笑顔をむけてきた。


「それで、本日は、何をお求めでしょうか?」


「ああ、ごめん。特に何が欲しいってわけでもなかったんだけど、いざってときのために、いろいろ見ておきたくなって」


「そうですか。では、ご自由に見てくださってかまいませんので」


「スッゲー。慶一郎、見て見て。この腕、プラズマライフル搭載だって」


 俺の後ろから由真が声をかけてきた。


「これ、いまの腕ととり替えたら、いざってときに自分の身を守れていいんじゃない?」


 無茶苦茶なことを言ってくる。俺をなんだと思ってるんだか。しかも振りむいて、その腕を見た俺は苦笑した。


「これは周防シリーズとか、静馬プラスシリーズ用のカスタムウェポンアームだ」


「え、じゃ、慶一郎は使えないの?」


「内装火器なんて使用できるように俺はつくられてない。まあ、よっぽど改造すればわからないけど。俺の身体と互換性があるのは人造人間の雁田シリーズだ。――というか、プラズマライフルなんて、よく売ってるよな」


 俺は感心した。周防シリーズは、本来なら街中には配備されない白兵戦用。静馬プラスシリーズは、暴徒鎮圧用の静馬シリーズをさらに改造した特別機種で、本土でベヒモスレベルの大型DKが暴れたとき、射殺目的で投入される人造人間だった。要するに市街戦用である。そんなウェポンアームが普通に販売されているとは。不死街の住人は簡単に死なないから、防犯グッズも過激になるかもしれない。由真が興味深そうに見まわす。


「じゃ、こっちの眼は? レーザービームだせるってあるけど」


「俺みたいな普通の学生は、普通の腕や眼でいいんだよ」


「――あ、そう」


 由真がおもしろくなさそうな顔をした。


「私、外で待ってようか? やっぱり私、人造人間の趣味とか、よくわかんないし」


「それでいいんだったら、それでもかまわないけど?」


「なんだよつまんない」


 由真がそっぽをむいた。どうしてだか、不機嫌そうである。


「じゃ、私、本当に外で待ってるから。なるべく早くでてきなよ」


「わかった」


 俺から背をむけて由真がでて行った。同時にアンディードが近づいてくる。


「羽佐間さんは、どういうパーツがお好みなのですか?」


「俺のことは慶一郎でいいよ。ここにきてから、ずっとそう呼ばれてるし。それから、パーツは、いまの身体と同じ標準タイプでいいんだ。ただ、何か事故でもあって、再生できなくなるまで壊れたときのスペアが買えるかどうか、見ておきたかっただけだから。雁田シリーズのパーツが使えるから、それでいい」


 何しろ、ここにきて、いきなり首の骨を折られたからな。アンディードがほほえむ。


「そういうことでしたか。では、雁田シリーズのスペアはこちらにありますので」


「どうも」


「それで、不死区はいかがですか?」


「楽しいよ。いきなり友達もできたし」


「それはよかったですね」


 アンディードが、どうしてだか、少しだけ羨ましそうな眼をした。


「ホムンクルスの私と違って、人造人間の慶一郎さんは、普通の人間と同じように行動できるのですね」


「まあな」


 ホムンクルスと人造人間、どちらも肉体はつくられたものだが、俺の頭のなかだけは、バイオテクノロジーで培養された生体脳がメインである。行動の制限には違いがあるのは仕方がないことなのかもしれなかった。

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