初クエスト
美人受付嬢との接点を持たなかった残念なクラウド。
気持ちを切り替え、初クエスト達成に挑みます!
北門へ辿り着いた俺達は、各々武器を取り出し、草原フィールドへと飛び出した。
「適当にフィールドを歩き回って、モンスターを倒していればクエストは達成出来そうだな。」
この辺に湧いて出るモンスターだから、しばらくレベル上げしていれば達成になるだろう。
「そうだな。」
「わ、わかりました。」
俺とヴァンが前を歩き、スカイが後ろという配置で、モンスターを見つけるために歩き始めた。
ウルフ2体がいるな。
「俺が1体仕留めるから、ヴァンはスカイともう1体を仕留めてくれ。」
「了解。」
「は、はい。」
戦闘開始圏内に入ったため、ウルフの名前が赤色に変化する。
「「オォォーーン!!」」
ウルフは吠えた後に、俺とヴァンに向かって突進してくる。
「はっ!」
俺は、半身になってウルフの突進を回避すると、そのままウルフの胴体を一刀両断する。
「来い、犬っころ!」
ヴァンは石盾を構えて、ウルフを挑発する。
「キャン!?」
ウルフは石盾にぶつかり弾き飛ばされる。
「やーー!」
ウルフが態勢を立て直す前に、スカイが杖を振り下ろしてトドメをさした。
「お疲れ。スカイ、今日は動きがいいじゃないか。」
「本当ですか!? ありがとうございます。」
昨日の訓練の成果が出ているな。
「あれ? なんか落ちてるぞ。』
俺は、ウルフが消滅した場所に毛皮が落ちていたのに気が付いた。
うおぉ!!? めっちゃモフモフして気持ちいいな。
俺が毛皮を拾い上げると、『ウルフの毛皮』と表示された。
「初ドロップアイテムだな。今まで落ちてこなかつたから、ドロップ率も低いんだろう。」
「だな。レア物だと嬉しいんだけど。」
戦闘後にメニューのクエスト一覧を確認すると、ウルフ討伐2/5と表示されていた。
「じゃあこの調子でドンドン行ってみよう!」
俺達はその後も戦闘を繰り返し、遂に俺とスカイのレベルが5に達した。
今回レベル5になったことで、スキルポイントが5付与されたため、スキルを解放することが可能となった。
やっと俺にもスキルが使える時が来たぜ!
ヴァンは、このスキルポイントで必殺技? の盾突撃を覚えたそうだが、俺はどんな技を覚えられるんだ。
メニューを開き、スキルツリーの項目を開く。
いくつかスキルポイント5で覚えられるものが有ったが、俺はその中からサンダースラッシュを覚えることにした。
このサンダースラッシュは、雷属性を剣に付与して敵を攻撃するものだ。
MPを消費するが、威力は魔力分が上乗せされるので、ただの攻撃よりも威力は格段に上がる。
そして、俺は剣を扱う上に、マジック型にしているので、攻撃力・魔力が高く、MPも結構あるので、このサンダースラッシュは、正に俺の為にあるような技なのだ。
因みに、スカイは空間固定のスキルを覚えたそうだ。
「空間固定って何?」
いや、スキル何にしたのって聞いて、いきなり空間固定ですって言われても、どんなのか想像つかないよね?
「……空間を固定するだけみたいです。」
「「……他になかったの?」」
ヴァンと反応が被っちまったぜ。
「これしかありませんでした。」
スカイも落ち込んだ表情をしている。
「げ、元気だせよ! もっとレベルが上がればスゲェ技覚えるってきっと。』
「そ、そうだ! そうに違いない! なんせお前の属性は激レア属性なんだからな!」
俺とヴァンは必死にフォローをするが、結構厳しい。
「なんか、すいません。」
俺達は気を取り直して、戦闘を再開し、その後はウルフ3体とワイルドボア5体を撃破した。
今日はドロップ率がいい日なのか、ウルフの毛皮が合計2つとワイルドボアの毛皮が1つ手に入った。
「ゴブリンが出てこないな。」
「そうだな。そろそろ出てもいい筈なんだが。」
「そ、そうですね。」
俺達は、未だにゴブリンと遭遇出来ていなかった。
ゴブリーン! ゴブリンさーん! ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン! 早く出てくださーい!
俺が心の中でゴブリンコールをしていると、目の前に
ゴブリン5体が姿を現す。
え? いやいや、ゴブリンコールしていたけど、何もいっぺんに5体来なくてもいいのに。
「ゴブリン5体か。クラウド行けそうか?」
「う〜ん、俺らのレベルなら問題ないだろ。スカイは挟まれないように気をつけろよ。」
「は、はい。」
「ギギィ!?」
俺達が戦闘圏内に入ったため、ゴブリンが武器の棍棒を掲げて向かって来る。
ゴブリンは、2体が俺、3体がヴァンとスカイの方へ行ったか。
1体ずつ確実に仕留める。
「行くぞ! 『サンダースラッシュ』!!」
俺は、自分に近いゴブリンに対してサンダースラッシュを放ち、一撃でゴブリンを消滅する。
この技って、ギガ……なんとか見たいだな。
いや、初期の頃だから、いなずま……の方か。
「よし!! 次!! うらぁ!!」
俺は2体目のゴブリンの棍棒を、石剣で受け止め、そのままゴブリンの胴を切り裂く。
見たか!! 俺の面返し胴!
ヴァンの方は大丈夫か?
ヴァンに目を向けると1体のゴブリンに押され、残りの2体にスカイは挟み撃ちにされていた。
マジか!? ヴァンが押されるなんて、あのゴブリンは普通のゴブリンじゃないのか? よく見ると、他のゴブリンより筋肉質だし、名前が長いな。
……パワーゴブリン、だと。
「クラウド見てないで、終わったなら手伝ってくれ!」
「わ、わりぃ!」
俺は直ぐに駆け出して、ヴァンよりも挟み撃ちにされて苦戦しているスカイを助けに行く。
「はぁあ! 悪い、遅くなった。」
「ク、クラウドさん。助かりました!」
俺が1体ゴブリンを倒したことで、スカイに余裕が生まれる。
「ヴァンが苦戦している。1体任せる。」
「わ、分かりました。」
レベル的にはスカイでもゴブリン1体は倒せる筈だが、未だに一人だとモンスターと上手く戦えないスカイを一人にするのは不安だったが、今はヴァンの方が危険な状態だった。
「クッソ! このマッチョゴブリンめ! 『 盾突撃』!!」
ヴァンの盾技を発動する。
対するパワーゴブリンが手に持つ太めの棍棒も光を発していた。
は? モンスターも技を放つのか? パワースイング的な?
ヴァンの盾突撃とパワーゴブリンの棍棒技がぶつかり合い、両者弾け飛んで相打ちに終わる。
「行けクラウド!」
「任せろ! 『サンダーースラーッシュ』!!」
パワーゴブリンが仰け反っている瞬間を逃さず、サンダースラッシュを叩き混み、パワーゴブリンは消滅した。
「はぁはぁはぁ。助かったぜクラウド。」
「危なかったな。」
俺はヴァンと拳を突き合わせる。
「あ、あのう、僕も倒せました。」
おおぉ、スカイも勝ったか。
いや、忘れていた訳じゃないぞ。
「一人でも戦えたな。良くやった。」
「は、はい!」
少し苦戦もしたが、何とかゴブリンを討伐することが出来て良かった。
「おい、クラウド。またドロップアイテムがあるぞ。」
ヴァンに言われて、目を向けると赤色の液体が入った瓶が3本落ちていた。
俺がドロップアイテムを拾い上げると、アイテム名が表示される。
『パワードリンク』×3
成る程、これを飲んだゴブリンがパワーゴブリンになっていた設定なのか。
俺はパワードリンクの詳細目を向ける。
『このパワードリンクを飲めば、筋肉ムキムキになれるよ! 筋肉大好きな人はこのパワードリンクを飲んで、マッスルマッスル♩』
随分とふざけた詳細説明だな。
……これを飲むのか。
折角体型調整もしたのに、筋肉ムキムキになるのは嫌だな〜仕方がない。
「……ヴァン、3本出たから、一人1本でいいよな?これを飲めばパワーが上がるみたいだぞ!」
嘘はついていないぞ。
「何!? パワーアップアイテム何て、今までどこのサイトにも掲載されていなかったぞ! レアアイテムだな! 早速いただくぜ!」
ヴァンは俺の手からパワードリンクを取り、一気に飲み干す。
許せヴァンよ……詳細を見なかったお前も悪い。
「ん? ん!? 力が漲って来る! しかも意外と美味いな。」
ヴァンの身体は、これ以上筋肉ムキムキになることは無かった。
俺はもう一度詳細に目を向ける。
「はぁ!?」
詳細を下までスクロールすると、最後に極小の文字で、『筋肉ムキムキにはなりませんけどね(笑)』と書かれていた。
このアイテム詳細作った奴、性格最悪だな。
俺とスカイもパワードリンクを飲み干し、クエスト達成報告をするために冒険者ギルドへ戻ったのだった。
クラウドは、腹黒い?
クラウド:何だあの怪しいドリンクは、(ここはヴァンに毒味をさせよう。)ヴァン、このドリンクでパワーが上がるそうだぞ!
ヴァン:マジか?いいのか飲んで!
クラウド:どうぞどうぞ!
ヴァン:ゴクゴクゴクン! ム、ムムム! 身体の内側から力が、力が溢れてくる!
クラウド:い、一体どうなるんだ!?
ヴァン:ハッ!
クラウド:な、なんてことだ!? ヴァンがゴリラに!
ヴァン:ウホ?
クラウド:ヴァン。お前のことは忘れない。パーティー脱退。
ヴァン:ウホ??
スカイ:ヴァンさーーん!