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人は簡単に変われない

NM内で、スカイと出会ったクラウド。

今回はログアウトして、現実世界です。

 ログアウトした俺は、現実世界で徐々に意識を覚醒させる。


「ふあぁぁあ。」

 俺は寝っ転がりながら、身体を伸ばす。


 ふと窓の外を見ると、辺りは真っ暗だった。


「今何時だ? げ!? もう夜中の3時かよ! 少しでも寝ないと仕事に影響が出るな。」


 ぐぅ〜♩


 昼は食べたけど、夕飯はまだだったな。


 もう夜食の時間だけど。


 俺は、カップラーメンを速攻で食べて、直ぐにベッドへダイブして眠りについた。




 翌朝、うるさいアラームのお陰で、俺は遅刻することなく職場へ出勤することが出来た。


 交代制勤務のため、本来は指定休なのだが、今日は日勤指定されている日だった為、出勤している。


 職場へ着くと、同じく日勤の風雅も到着したところだった。


「おはよう。昨日はお疲れ。」


「おはよう。お疲れぇ。」

 風雅も目の下にクマが出来てるな。


「眠そうだな。まぁ俺も眠いけど。」


「スカイの特訓に熱が入っちまったからな。」


「そうだな。」


「今日もやる?」

 風雅の頭の中は、ゲームのことで一杯だなり


「勿論。ただ、仕事中は仕事に集中しろよ。」


「オフコース。そう言えば、神は次のレベルで必殺技が解放されるな。」


「そうなの?」


「俺の盾技が、レベル5で解放されて、盾突撃を覚えたから、多分同じじゃ無いかな。」


「成る程ね。そろそろ上がると思うから楽しみだ。」

 てか、風雅は一日でレベル5まで上げてたのか? どんだけやりこんでたんだよ。


「これで更に戦闘がスムーズになるな。」

 風雅と勤務開始までの間、堂平警察署の指示室で話をしていると、指示室内のテレビのニュースで、NMについて取り上げられていた。


「世界初のVRMMOゲーム、New meですが、発売数日で1000万台を突破しました。メーカーの予想では、もっと売れる予定だったそうですが、世界初の完全フルダイブ型ゲームだけあって、様子見の人も多いようですね。」

 女性アナウンサーがボードを指差しながら、他の有識者に話し掛ける。


「そうですね。危険は無いとのことですが、少ししてから購入するという意見が多いそうですよ。」

 関堀と名札の出ている男性が、女性アナウンサーの話に付け加える。


「因みに、関堀さんは実際にNMをやられたそうですが、どうでしたか?」


「いやぁ、凄い技術ですよ。自分の作り上げたアバターが、自分のイメージで仮想世界を歩き回っているんですから。モンスターとの戦闘は、迫力がありますね。」

 関堀は、だいぶ興奮しながら解説しているな。


「そうなんですね。そんなNMですが、現在のゲーム機価格は10万円、決して安くは無いですね。更に、ゲームをするためには、月額1000円の振込みが必要なんですね。この点は、関堀さんどう思われますか?」


「妥当なところではないでしょうか? このNMの開発には莫大な費用が掛かっていますからね。ゲームメーカーとしても、収入を得ないと、社員の給料は払えませんし、今後のバージョンアップにも支障が出るでしょう。また、次回の製作費のこともあるでしょからね。それと、ゲーム内のアイテムや武器等の購入もゲーム内の通貨だけでなく、現実のお金で購入することも出来るんです。つまり、ゲーム内でアイテム製造などを手掛け、買い手が居れば商売が成り立つ訳ですね。」


「成る程。新たなビジネスチャンスとなる訳ですね。丁寧な解説ありがとうございます。今後もNMの動向に目が離せませんね。」

 女性アナウンサーの締めで、NMの話題は終わった。


 ゲーム内アイテムで、商売が成り立つのか。


 公務員は副業出来ないが、これで儲けるのはどうなのだろうか?


 まぁ、考えても仕方ないか。


 勤務開始時間となったので、俺は仕事に取り掛かる。


 俺は、単独でパトカーに乗車して管内のパトロールを行い、途中で別所(べっしょ)交番に立ち寄る。


 俺と同じ係で、本日交番で日勤勤務をしている本郷 武(ほんごう たけし)巡査部長と、部下の大附 空(おおつき そら)が在所していた。


「係長お疲れ様です。」

「お、お疲れ様です。」

 俺が別所交番の扉を開けると、二人は椅子から立ち上がり、俺に敬礼する。


「お疲れ様。」

 本郷部長は、55歳のベテラン警察官であり、若い頃は柄の悪い連中を相手にバリバリ仕事をしていた人だ。

 見た目の顔もアッチ寄りです。


 大附巡査は、警察学校を卒業して3年目の若手警察官だ。

 身長は170に少し届いていないくらいで、黒縁眼鏡を掛けて、見た目は気の弱そうな男だ。


「いつまでも突っ立てないで、係長にお茶出ししろ!」


「は、はい!」

 動こうとしなかった大附に、本郷部長が指示を出す。


「ど、どうぞ。係長。」

 大附がお茶をお盆で運んできたのだが、手が震えているのか、湯飲みのお茶が大きく波打っている。


「てっめぇ、このやろう!! お茶を波波入れてくる奴がいるか!! 何度注意すれば成長するんだ!!」

 本郷部長が顔を真っ赤にして、大附を叱り付ける。


「す、すいません。」

 大附は、お茶を机に置くことなく、台所へ戻ろうと踵を返す。


「全く近頃の若い奴は常識がなってない!」

 本郷部長は、椅子にドカッと座り込む。


「構いませんよ本郷部長。大附ありがとう。そのままいただくよ。」

 俺の言葉受けて、大附は湯飲みを机にそっと置く。


「お前、今朝の交番の掃除はちゃんとやったのか?」

 本郷部長は、床に落ちていた埃を目にして大附にドスの効いた言葉を送る。


「えっえっと、まだですした。」

 大附はモジモジしながら答える。


「何度同じことを言わせるんだ。交番に着いたら最初に掃除しろとあれほど言っていただろ! 一度言われたら、覚えろ!!」

 俺も交番勤務の時は、毎朝掃除していたのを思い出していた。


 俺も若い頃は、掃除がなってない。

 お茶がヌルい、薄い、濃すぎる、色々言われたもんだ。


「す、すいません。」

 大附は掃除を始めようと、箒を取り出す。


 本郷部長も苦労しているな。


「馬鹿野郎!! 今やれって誰が言ったよ! 係長がお茶飲んでるんだ! 埃が舞うだろうが! 後でやれ! そのくらい常識だろ!」

 本郷部長、そこまで言うと、俺もゆっくりお茶が飲みにくいのですが……。


「し、失礼しました。」


 顔が強面で、ちょっと言葉遣いは乱暴だけど、間違ったことを言っている訳じゃないんだよな。


「大附、本郷部長も言いたくて言っている訳じゃない。一度言われたことは、しっかり出来るようにしような。」

 大附が箒をしまっている側まで近付いた俺は、大附に耳打ちする。


「は、はい。頑張ります。(僕も警察学校を出て、3年経って少しは変われたと思ったけど、全然ダメだ。この性格も治らない。人って簡単には変われないんだな。……それでも、僕は変わってみせる。)」

 大附の元気のいい返事を聞いた俺が、別所交番を出ようとしたその時である。


 無線機が鳴り響いた。


「至急至急、せせらぎ本部から堂平。刃物所持の男の徘徊。現場は、慈光寺公園内。至急係官を派遣願います。」

 おいおい、刃物所持の現場かよ。


 堂平警察署は、せせらぎ県の中でも事案の少ない警察署である。


 一日の110番件数も少なく、重大な事件等も滅多に起きない。


「堂平101から堂平。雲河原、本郷、大附の3名、現場へ急行します。」

 俺は警察署へ現場へ向かう旨の無線を入れる。


 俺は本郷部長と大附を乗せて、パトカーを緊急走行、つまり空を飛んで走行し、現場へ急行した。


「本郷部長と大附は、盾を装備して下さい。俺が電気銃を使用します。」

 昔の警察は、刃物を持った相手に対して、拳銃の使用か警棒、刺股等で対応していたそうだが、今の時代は、電気銃を使用して、相手の動きを封じることが出来るのである。


 昔の警察官は、大変だったろうな。


「相手は刃物を所持している。気を抜くな。」

 指示している間に、現場である慈光寺公園へと到着した。


「きゃーー!」

 パトカーから降りるなり、女性の悲鳴が響き渡る。


 俺達三人は、直ぐに声がした方へと駆け出す。


 目に見えてきたのは、尻餅をついて後ずさる女性と、包丁を持った男の姿。


 不味い!


「警察だ! 武器を捨てろ!」

 俺は、電気銃を構えて大声を出した。


 すると、包丁男の意識が女性から離れたのだが、包丁男は、にたっと笑うと、俺達の方へと身体の向きを変える。


 女性が近過ぎて、いくら電気銃とは言え、撃てる射線じゃないな。


 女性は動けそうにないから、少し位置を変えないと。



「武器を捨てろ! 捨てないと撃つぞ! 本郷部長、大附、盾を!」

 俺の指示により、本郷部長は盾を構えて、少しずつ包丁男へと間合いを詰め始めた。


「何ボサッとしてる大附!?」

 大附が反応していないことに気付いて目を向けると、大附は俺と本郷部長から少し離れた場所で、盾を構えることもせず、震えていた。


「あはははははははは! 拳銃を寄越せーー!」

 刃物男が、大附目掛けて一直線に走り出す。


「あ、あ、あぁぁ!?」

 大附は盾を地面に落としてしまう。


「大附ーー!!」

 本郷部長も大声を上げ、大附の身を案じる。



 バシュッ



「あばばばばばばばばばばばば……。」

 次の瞬間、包丁男は奇声を上げて、ピクピクと身体を痙攣させて動かなくなる。


 間一髪だぜ。


 包丁男が女性から離れたお陰で、何とか電気銃を撃つことが出来た。


 俺は男を現行犯逮捕し、手錠を掛ける。


「本郷部長、女性の怪我の有無と周辺に負傷者がいないか確認して下さい。」

 誰かが怪我をしているなら、直ぐに救急車を呼ばないと。


「堂平101から堂平。包丁男確保。負傷者の有無を確認中。勤務員に負傷者無し。」


「堂平了解。」

 俺は無線で、被疑者確保を伝える。



「……。」

 大附は、その場から動くことも声を発することもせず、ただ立ち尽くしていた。


「大附、お前も負傷者がいないか探して来い。」

 被疑者が暴れているなら大附をこの場に残すが、この状態なら俺一人で大丈夫だろう。


「……は、はぃ。」

 大附は、ヨロヨロと負傷者を探しに向かった。



 本郷部長と大附からは、負傷者は居なかったとの知らせを受け、俺は安堵する。


 応援で駆け付けた勤務員に身柄を引き渡し、俺もやっと緊張から解放されたのだった。

閲覧ありがとうございました^ - ^

次回、冒険者登録!


28日、出勤中なのですが、道路混みすぎですよ!遅刻してまう!

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