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スカイとの出会い

クラウドとヴァンが聞いた悲鳴は、一体何だったのか?

 悲鳴を聞きつけた俺達は、直ぐに悲鳴のする方へとかけだしていた。


 しばらく走ると、1体のウルフを目の前にして、尻餅をつき、後ずさっている人影を見つけた。


「あれか?」

 徐々に近付くにつれて、人影の正体が明らかになってくる。


 青色のキノコヘッドに、小柄な体格で石杖を持っていた少年だった。


 あの少年は確か、街中で見かけた奴だな。


「動けないのか?」


「ウルフにビビってるんだろ。」

 ヴァンの疑問に俺がすかさず答える。


 このゲームは、リアル過ぎるな。


「冒険者向きじゃねぇな。……助けるか?」


「聞かなくても分かるだろ?」

 俺は一気に加速して、モンスターに詰め寄ると、石剣を一振りして、ウルフを消滅させる。


 やっぱりレベルが上がったからなのか、最初よりも身体が軽いし、力も付いた感じがするな。


「立てるか?」

 俺は、未だに尻餅をついている少年へと手を差し伸べながら、声を掛けた。


「……。」

 少年は俯いたまま、手を握り返そうとはしない。


「……助けない方が良かったか?」

 助けを望んではいなかったのか? 余計なことをしちまったかな。


「い、いえ、ありがとうございます。助かりました。」

 俺の言葉で、正気を取り戻したのか、少年は俺の手を掴んで立ち上がり、お礼を述べる。


「それなら、良かった。お邪魔じゃなくて。」


「と、とんでもない!! 本当にありがとうございました。」

 少年は、両手をブンブンと振り、深々と頭を下げる。


「俺はクラウド。こっちは仲間のヴァン。俺は今日からこのゲームを始めたんだけど、君もそうなのか?」


「は、はい。えっえっと、僕はスカイと言います。」

 スカイは背筋を伸ばして名乗る。


「スカイは戦闘が苦手なのか?」


「……はい。ゲームとは分かっているんですが、怖くて、動けなくて。」

 俺はヴァンに目配せをすると、ヴァンは頷いて応える。


 別に俺とヴァンはデキている訳ではないからな。


 一緒の仕事して、共に過ごしている時間が長いからこそ、相手の考えがお互い分かるのだ。


「俺達と一緒にバトルしてみるか?」


「え?」

 スカイは驚いた表情を浮かべる。


 そんなに驚かなくても良いだろうに。


「一人じゃ怖くても、仲間がいれば大丈夫だろ?」


「いいんですか? 僕なんか居たら足で纏いですよ?」

 スカイは、俯きながら答える。


「勿論いいさ。何回か戦えば慣れてくるだろ? 少しずつ戦いに慣れていこうぜ。」

 俺は、スカイに右手を差し出す。


「あ、ありがとうございます。」

 スカイは、俺の右手を握り返し、握手を交わす。


「一応一緒に戦うんだから、職業とか教えてもらえると助かるんだが?」

 武器や職業を言いたくない人もいるから無理にとは言えないけどな。


「そ、そうですよね。僕は、武器が杖、属性は空間属性、職業は、……落ちこぼれ魔法使いです。」

 はい? 空間属性ってなんだ? 職業が酷くないか?


「……空間属性ってのは?」

 イマイチイメージ出来ないな。


「よ、よく分かりません。まだ魔法を使えないので。一応激レアと書かれていました。」


「激レア属性って事はかなり当たりなんじゃないか?」

 激レアと記載があるならきっと普通の属性より強いのだろう。


「そうだな。空間ってぐらいだから、ゲートみたいなのを出せるようになるんじゃないか?」

 ヴァンの言うように、ゲートとか使えたら便利そうだな。


「そうだな。それと……その職業は?」

 凄い聞きにくいけど、気になって仕方がない。


「え、えっと、これしか選択肢がなくて……。」

 スカイは頭を掻きながら、苦笑いする。


「「ドンマイ。」」


 こうして、スカイの俺達三人でモンスターと戦うことになった。



 三人でモンスターを探し始め、棍棒を片手に持ったゴブリンを見つけた。


「アイツと戦おう。」


「ひぃ!?」

 スカイは棍棒を持つゴブリンの醜い顔に、ビビっていた。


「……スカイは、チュートリアルバトルやったんだよな?」

 ヴァンがスカイに疑問を投げ掛ける。


 確かに、チュートリアルバトルでゴブリンを見ているのだから、そんなにビビらなくてもいいだろうに。


「え、えっと、怖かったので、直ぐに終わらせてしまいました。ごめんなさい。」

 スカイはモジモジしながらそう答えた。


「……別に謝ることは無いよ。大丈夫だ。俺達も一緒に居るんだ。ゴブリンが攻撃して来たら、ガードしてやるから。」


「は、はい。よ、よし。やーー!!

 スカイは、俺の言葉を受けて顔を上げ、ゴブリンへと杖を振り上げて突撃する。


「え?」

 杖が武器だからてっきり魔法を放つのかと思っていたのだが、杖で殴るのか?


「ギギ!!」

 ゴブリンが雄叫びを上げて、棍棒を振り上げる。


「やっやっぱ無理!!」

 スカイは直ぐにブレーキを掛け、ゴブリンの前で立ち止まる。


「不味い!」

 相手の前で立ち止まる奴があるか!! 良い的じゃねぇかよ。


「うわぁぁ!!」

 スカイは、頭を両手で抱えて蹲る。


「はあーー!」

 俺はゴブリンの攻撃を石剣で受け止める。


「立てスカイ!! 今のままで良いのか!? お前は何をするためにここに来た!」

 俺はゴブリンから目を話すことなく、スカイに叫ぶ。


「はっ!? ぼ、僕は、変わりたい。なよなよした自分から変わるためにここに来たんです!」

 スカイは立ち上がり、目に闘志が宿る。


「だったら、戦え!!」


「はい! やーー!」

 スカイは、杖でゴブリンの腹に突く。


「ギィーー!?」

 ゴブリンは、そのまま仰向けに倒れた。


「やった! ぼ、僕戦えました!」

 ぴょんぴょん嬉しそうに跳ねて、小動物みたいな奴だな。


 俺は、自分を変えようと頑張っているスカイを見て、知り合ったばかりだが、スカイのことを気に入った。



「ギーー!!」

 いつの間にか、起き上がっていたゴブリンが、スカイ目掛けて棍棒を振り降ろそうとしていた。


「あっ!?」

 間に合わない!!


「ギェ!?」

 ゴブリンは横に弾き飛ばされて消滅する。


「……お前ら油断し過ぎだぞ。しっかりトドメはさせよな。」

 ヴァンがゴブリンに横から盾突撃してくれたのか。


「助かったよヴァン。ありがとう。」


「あ、ありがとう、ございます。」


「気にすんな。もう少しバトルするだろ?」

 ヴァンは照れ臭そうにしていた。


 その後も、何度かバトルし、スカイが恐怖せずに戦えるようになったので、本日はここでログアウトすることにした。


「今日は本当にありがとうございました。お二人のお陰で少しですが、変われた気がします。また、機会があったらパーティーを組んでいただけますか?」

 スカイは深々と頭を下げる。


 今日のパーティーは、スカイの訓練のためにしたものであったので、戦闘後は、スカイをパーティーから外したのである。


「ああ。また一緒にバトルしような。」


「ありがとうございます。」


 こうして、俺のNM初日が幕を閉じたのだった。


新たに仲間を加えたクラウド。


次回は、現実編

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