好敵手は死神と強襲する ー04ー
説明が多くてすみません!
次を早めに更新しますね!
「く……っ!!さすがだな、スケボーの申し子……まさかここまでとは……!俺の負けだ……」
その後ーーー
ギャラリーからスケートボードを借りたブレイクは、柘榴がやった超絶技巧の技を見よう見まねでやろうとした。
しかし実際のところ柘榴は複数の魔法を使い、あの技を成功させたのだ。
正直、魔法もなしに柘榴がやったことを再現しようなんて無理がある。
何度か試したが自分にはできないと判断したらしいブレイクはがっくりと膝をつき、自らの敗北を認める。
(魔法もなしにあそこまでできたことが怖いですけどね、私は……)
さすが狼男。
柘榴は胸の中でそう思った。
狼男。
ヨーク王国での正式名称は人狼。
一般的にもよく知られているように、普段は人間だが満月を見ると狼の姿になってしまう一族。
ヨーク王国の人狼一族もそれは変わらない。
違うとすれば、彼らが尋常ではなく身体能力が高いこと。
鬼が純粋なる腕力系だとすれば、人狼は万能系。
走力、瞬発力、持続力……
全てにおいて人狼一族はトップクラス。
肉体的な頑丈さや、治癒力、腕力では鬼には勝てないが、それ以外では人狼に敵うものなんていない。
真正面からの腕力勝負に持ち込めば鬼が勝つ……
つまりそれ以外では鬼が人狼に勝つ見込みがほとんどない、ということだ。
それくらい人狼は強い。
戦闘のエリートである。
しかも強みはそれだけではない。
人狼が強いのは、「狼」という種族的な部分にもある。
鬼は強い者に従うが、怒りがスイッチとなって強さを増すため戦闘中は基本的に我を忘れて暴れ尽くす。
人狼にはそれがないのだ。
強い者に従う特性そのままに、戦闘モードに入る。
まるでひとつの大きな獣のように見事な集団戦も行え、個人戦でも強い。
それが人狼の強さ。
そして恐ろしさでもあった。
そんな強さは、危うさでもある。
自らが強いという自覚があるため、人狼は尊大だ。
強い者には従うが、自分より弱いと思うと徹底して見下した態度に出る。
エリート志向と選民思考が強いのだ。
人狼一族の強さであればヨーク王国で重要な地位を独占することも可能であるが、それが成し得ていないのはそういった理由もある。
そしてその危うさはそのまま、ブレイクの危うさへと繋がっていた。
尊大で選民思考が強いエリート。
実力は兼ね揃えているが、自分にも他人にも厳しい。
平民出身の主人公を最初は見下してナメてかかり、次第に認めて行き、気がつけば恋をしてる。
その過程で自分がいかに尊大だったかと気づき、ブレイクは成長するーーー
端的にいえばそんな話である。
(ま!今の私には関係ないですね!)
ブレイクを成長させるのは主人公の役目!
自分は悪役令嬢なのだ。
嫌われることは大歓迎だが、好かれることは遠慮したい。
とりあえずここでスケボーの申し子たる柘榴にできることは、円満にこの場を去って行くこと。
ブレイクに自分が四方木 柘榴だとバレぬよう、大騒ぎにならないよう、素早く確実に。
ということで、まずは……
「私の凄さを認めてくださったようですね。ギャラリーを集めてしまうのはスケボーの申し子である私の運命……その件については謝罪しましょう」
柘榴はブレイクに向け、そっと手を差し出す。
「この流れでなんとなく謝罪し、いい感じでまとめてしまおう」作戦である。
ブレイクは尊大であるが単純。
殴り合いの後、親友になる……
そんな一昔前のヤンキー漫画にありがちな展開をナチュラルに受け止める、純粋な性格をしていることは化物学園をプレイしてきた柘榴には把握済み。
この良い雰囲気で見逃してもらおう!
柘榴はそう思っていた。
「スケボーの申し子……!」
全てうまくいった。
ブレイクは感動しながら、柘榴の手を握ろうとする。
その瞬間ーーー
「柘榴!!」
冬青の声が響く。
振り返ると義兄がこちらに近付いて来ていた。
しまった!
ここにいるのがバレてしまった!
しかもーーー
「…………ざくろ?」
ブレイクの表情が曇る。
伸ばしていた手をそのまま、拳に変える。
「四方木、柘榴?」
ブレイクのまとう雰囲気が変わった。
ハンサムな顔が歪む。
知られたくなかった理由のひとつ。
それがこれ。
ブレイク・ルー=ガルーは柘榴のことが大嫌いだから。
ゾーイが柘榴と婚約するかもしれない……
そんな噂が流れた時、柘榴の家を訪ねてきたものが何人かいるのだ。
噂の真偽を問うためとか、ただのゴシップが好きな人とか、将来の第四王子の妻になるかもしれない人に顔や恩を売っておきたい人とか、柘榴とはどんな人物なのか見定めたい人とか、嫌味悪口羨望……
柘榴は早々に部屋に引きこもり、全員を断っていた。
何故か毎日のように連絡してくるようになったゾーイがめんどくさいからだったのだが、柘榴を訪ねてきた人のひとりにブレイクがいたらしい。
使用人がいうには激怒していた、と。
街のウワサを知らない柘榴には、何故ブレイクが激怒しているのか知るはずもない。
ブレイクは「お茶会で怪我をした柘榴がその責任をゾーイに問い、無理やり婚約させようとしている」というウワサを信じていたのだから。
ブレイク自身もお茶会に参加し、揉め事が起こった際にはゾーイの近くにいた。
以前からブレイクは柘榴のことを嫌悪しており、お茶会でも柘榴の態度に激怒していたのだ。
柘榴がケガをしたのは自業自得。
ブレイクはそう思ってる。
お茶会にいたほとんどの参加者と同じように。
むしろ良い気味だと思っていたくらいだ。
それなのに、そのお茶会が原因で友人が柘榴に興味を持ったという。
自分と同じように柘榴を嫌悪していたはずのゾーイが。
そのお茶会がゾーイの婚約者を探すために開催されたということは、政府高官の息子であるブレイクも承知していた。
むしろまだ婚約者がいないことがおかしいほどだ。
今まで女子に全く興味をもたなかったゾーイが、初めて興味を持って名前を出した女子が「四方木 柘榴」。
今や柘榴はゾーイの婚約者候補の筆頭。
ブレイクからすると、タイミング的にも柘榴が何かしたとしか思えなかった。
それなのにゾーイは何もいわない。
「何をされたんだ?大丈夫か?」。
ブレイクがそう尋ねても、ゾーイは平然という。
「柘榴は面白いんだ」と。
ありえない。
「あの」四方木 柘榴が面白いだなんて。
確かに柘榴の徹底した「自分は特別」だと思っている性質は、一部の者にとっては愉快らしい。
ブレイクの友人のひとりにも、積極的に柘榴と関わろうとする者がいる。
ブレイクからすると気が違っているとしか思えない。
そんな柘榴を。
ゾーイが婚約者に?
柘榴が面白い?
そんなことは絶対にない。
友人である自分にもいえないほどのことを、柘榴はゾーイにしているのだ。
そうに決まってる。
だからこそブレイクは怒り、四方木家を訪問した。
断られても断られても四方木家に面会の申し入れを繰り返したし、両親を通じて正式に四方木家にクレームを入れ、ゾーイにも何度も忠告した。
「四方木 柘榴は何をしたのだ」と。
「四方木……貴様、俺のことを騙したのか!?」
「ブレイク、落ち着いてください」
激怒するブレイクから庇うように、冬青がふたりの間に割って入った。
ブクマと評価ありがとうございます!
yasuさん、レビューありがとうございます!!
レビューしていただいたの、人生で初めてです!
またひとつ夢が叶いました……!
すごくすごく嬉しいです!
ブクマも評価も、今まであんまりされたことなかったのでとっても嬉しいです!
ありがとうございます!
更新頑張ります!




