出版社、全滅間際
その後もひたすら出版社を回りまくった。
「うーん。異世界モノじゃないんですね。うちではちょっと・・・」
「わかりました。あ、ちなみにmarusanでは今月号をもって異世界モノの作品は取り扱わないことにしました」
「え⁈ いつ決めたんですか⁈」
「たった今です」
「あ、ちょっと待っ・・・」
バタン。
「うーん。イメージキャラのユウリちゃん? いまいちですねー」
「そうですか・・・ユウリちゃんは『チェリッシュ』の銃撃戦の子なんですけどね」
「あ、あれ⁈ そういえば!」
「じゃあ、失礼します」
「ちょ、待っ・・・」
バタン。
「作者の長谷さん? キモめですね」
「もう御社との情報交換はやりません」
「え⁈ ちょっと待っ・・・」
バタン。
「部長〜、すみません〜。わたしがキモめなばっかりに」
「わたしもすみません。パッとしなくて」
「長谷ちゃん、ユウリちゃん、あなたたちはとても魅力的よ。世の中には見えてるはずのものすら見えない人たちもいるってことよ」
「でも、午後の4社全滅であと1社ですよ」
「でも、ヒロオくん。わたしたちが勝って終わってるでしょ」
「まあ・・・女性編集者のみなさんとも、焦ったり未練そうだったりしてましたよね」
「長谷ちゃんとユウリがパッとしないのは事実だろう」
「セヨちゃん〜。わたしのことは何と言ってもいいけど〜、ユウリちゃんは美人さんだよ〜」
「長谷ちゃんはかっこいいですよ」
「はっ。傷の舐め合いは見苦しいぞ」
「セヨ。そういう自分はどうなんだ」
「ウチはそういう次元を超えた存在なのだ」
「セヨちゃんは〜、若さあるもんね〜」
「うむ」
僕はこっそりと花井部長に訊く。
「花井部長、5社目は勝算あるんですか?」
「うーん・・・五分五分、かな?」
軽四ワゴンで東京の街を疾走した