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出版社女性編集者、第1の敵

午後イチのアポは「月影浴鐘撞堂書店」


担当は花井部長とそう年齢が離れていなそうな早乙女さおとめさん。


クールビューティ、というイメージの女性編集者だ。


「小説はざっと読ませていただきました」

「ご感想は?」

「エンターテイメント性に著しく欠けますね」

「え〜、そうですか〜?」

「長谷さん、私は自分の感性を信じていますから。付き添いの花井部長はいかがですか?」

「確かにエンタメ小説としてはこなれていませんね。それは事実として受け止めます」

「はい」

「その上で、いいポイントが何かなかったか早乙女さんにお聞きしたいのですがですが」

「はい。3点あります」

「はい」

「①描写が執拗、②文章が偏執的、③リアルさにやたらこだわる」

「すみません〜」

「いいえ、長谷さん。私はお褒めしているつもりなんですけど」

「確かに。中途半端に器用さを褒められるよりは俄かには習得不能な作者の人生の蓄積に興味を持っていただく方がいいですね」


花井部長のコメントを聞きながら早乙女さんはユウリの顔を何度も覗き込む。ついでに僕の方もちらっと。


「あの、花井部長。この女の子は?」

「ああ。この小説の主人公のひとり、シナリのイメージキャラクターですよ。ユウリちゃんっていいます」


にこっ、と営業愛想笑いをするユウリ。


「それからこの男の子は主人公タイシのイメージキャラクター、ヒロオくんです」

「はあ」


僕たちを見る目が、『中二病?』みたいな感じだ。

ウチもイメージキャラクターだぞ、とかセヨが喚いたけれども全員黙殺した。

花井部長が続ける。


「それでプロモーション用の映画も撮ったんですよ」

「はは・・・アマチュアの自主映画ですか」


失笑する早乙女さんに無表情で花井部長が告げる。


「・・・カネカシ大学映画研究会のカタヤマ監督で」

「えっ!」

「では、お邪魔しました。失礼します」

「あの・・・ちょっと待っ・・・」


早乙女さんが言い終わる前に花井部長はさっさと席を立ち編集室のドアをばたん、と閉めた。


「さ、じらし営業一件完了。カタヤマくんのネームバリューを利用しないテはないからね」


今更ながらにあのぐにゃぐにゃのカタヤマ先輩のすごさを思い知らされた。

僕は花井部長に聞く。


「次の出版社もカタヤマさんの名前を出すんですか?」

「いいえ。早乙女さんは権威好きだからああ言ってみただけ。あとの4人はまた違うわ。相手を見て対応するわよ」


花井部長が、なんだか怖い。


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