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究極の選択

『トキモ食堂』


秋葉原の裏通り、雑居ビルの一階。

まあ元々地元民でも東京人でもない僕らだから見落としてて当然だと思うのだけれども、それにしても古風な店構えだった。


一応ガラス引き戸の入り口で店の中は見えるのだけれども、開放感がないというか、進入禁止のようなただならぬ雰囲気が漂っている。


「セヨ、この店に目を付けた理由は一体何だ」

「決まってるだろう、これを見るがいい」


セヨは入り口横のショーケースを指し示す。


・マグロの中落ち定食500円

・揚げ出し豆腐定食450円

・唐揚げ定食450円

・カツ煮定食480円

すべてごはんとみそ汁、小鉢付き。

そして食品サンプルがすすけている。


「つまり、安いからか」

「それ以外に何がある」

「ねえ、セヨちゃん。衛生面とか大丈夫かな?」

「ユウリ、それは偏見というものだぞ。いくら店が古くてもきちんとした店主ならば清潔にしている筈だ」


きちんとした店主ならね。


とにもかくにもスポンサーはセヨだ。

セヨの意向とチャレンジ精神に乗っかるしかなかった。


「らっしゃい」

「邪魔するぞ」


なんだそのやりとりは。

セヨ、本当に中2なのか?


店中央のテーブルに陣取る。

夕食時なのにお客は僕らしかいない。


店主が水を運んできた。

またセヨが中2らしからぬやりとりをする。


「オヤジさん、何がオススメかな?」

「食材切らしちゃっててね。ハムエッグ定食とオムレツ定食しかできないよ」


驚愕する僕とユウリ。

まさかの二択とは。

しかも食材が玉子しかないって状態なのか?


「うーむ。じゃあ、ハムエッグ定食」


セヨが光速でオーダーした。セヨの神経はやっぱり異次元だ。


「あいよ。おふたりさんは?」

「じゃあ、オムレツください」


ユウリがそう言うと店主が眉間にしわを寄せる。


「え・・・何かまずかったですか?」

「ユウリ。空気を読むのだ」

「え?」

「ウチがハムエッグを頼んだ。ならばツレもオーダーをまとめるのが礼儀だろう。しかもオムレツの方が作るのに手間がかかる」

「お嬢さん、よくわかってらっしゃる」

「なあに。飲食店でのマナーだ」

「・・・じゃあ、ハムエッグを」


ユウリが極めて不本意そうな顔でオーダーした。


3人の目が僕に注がれる。


店主とセヨは、『分かってるよな』という目。

ユウリは、『ヒロオ、一矢報いて!』という目。


水を飲んで時間稼ぎをする僕に躊躇ない無言のプレッシャーがかけられる。


「・・・ハムエッグ」


店主とセヨが当然だろうという顔でうんうんと頷く。


ユウリは、「ふ」と薄く笑った。


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