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オールド・オールド・サンライズ

僕は憮然として切り干し大根をご飯の上に乗せ、シャカシャカと掻き込んだ。

最近は4人で朝食のちゃぶ台を囲むことが日常となった。本当は僕とユウリの2人所帯なのに。


長谷ハセちゃんはまあいい。先輩だし一緒に料理は作ってくれるしそもそも長谷ハセちゃんの小説プロモーションが本来の目的で僕とユウリは東京にいる訳だし。


だが、セヨ《こいつ》は一体どういう精神構造でタダ飯を食っているのだ。


「いやー、ヒロオ、悪い悪い。ウチは寝相が悪い方でなー」

「畳に布団敷いてのびのび寝てる居候がどうやったら気を遣って押入れで寝ている世帯主の背骨を粉砕するような寝相の仕方ができるんだよ?」

「夢遊病かもしれん」

「夢のまま広島に帰ってしまえ」

「まあまあヒロオくん〜。セヨちゃんの粗忽さは遺伝子レベルだからしょうがないよ〜」

「そうだそうだ」

「セヨちゃん、いい加減にしなよ」

「お。ユウリまでそんなこと言うのか。怒るとシワが増えてヒロオに愛想尽かされるぞー」

「親の顔が見てみたい」

「ヒロオ、親じゃダメだぞ。隔世遺伝ていうからじいちゃんばあちゃんの顔でないと」

「なんだ。じいちゃんばあちゃんは健在なのか」

「父方も母方もバリバリに元気だぞ」


ヴン、とセヨのスマホにメール着信。

画面を見たセヨの表情が変わる。


「どうした?」

「・・・ヒロオ。今日バイト休めるか?」

「はあ?」

「ユウリも休めるか?」

「セヨちゃん、一体何なの?」

「じいちゃんばあちゃんが来る」

「へー。これがほんとの噂をすれば影か。どっちのじいちゃんばあちゃんだ」

「両方」

「両方? 父方母方の4人か?」

「ああ、そうだ・・・だから、ヒロオもユウリも一緒に居てくれ。ついでに長谷ハセも」

「え〜。今日はゼミがあるのに〜」

「なんだ? 何でじいちゃんばあちゃんが来るのに僕らが一緒にいないといけないんだ? ・・・はーん。連れ戻されるからか?」

「違う。そういう次元の人たちじゃないのだ。すべてが異次元なのだ」

「異次元の本家本元のセヨが言う異次元なら元に戻って普通だろう」

「ヒロオ! 冗談を言っている場合ではないのだ! とにかくできるだけ人が多い方がいい・・・畏れ多くて申し訳もないが、あの方にもお願いするとしよう」

「誰に」

「ミツキ様だ」


・・・・・・・・・・


「ミツキさん、すみません。セヨが何か訳分からんこと言うもんだから」


僕らはまたもや原宿のミツキさんへやってきた。僕らが止めるのも聞かずにセヨがミツキさんの家でじいちゃんばあちゃんを迎えたいと本当に土下座してミツキさんに頼んだのだ。


「うちはお客様をおもてなしするスペースもそれなりにありますから全然構わないのですけれども。それにしてもセヨ様はおじい様おばあ様を大事になさるのですね」

「いや、何かアブない雰囲気満載だったですよ。ユウリ、どう思う?」

「うん。あのセヨちゃんがあそこまで動揺するなんて普通じゃないよね。すごい厳しいのかな」

「まあ親御さんも厳格そうだからその上の代ならもっとかもしれない。長谷ハセちゃんはどう思います?」

「うーん〜。逆にセヨちゃんが対抗できないぐらいにくだけてるとか〜」

「え。無遠慮のMAX値だと思ってたセヨを超えるなんてまさかそんな人はこの世に存在しないでしょ」

「どちらにしてもまた大勢のお客様をお迎えできて嬉しいですわ。もよさん、今日もお願いしますね」

「はい、お嬢様。お昼の時間ですがティーロワイヤル用のブランデーも用意いたしましたので」


リアルお嬢様のミツキさんとリアルメイドのもよさんとで、以前ハイティーで使った庭のテーブルには香りも見栄えもよいもてなしの準備がなされていた。

僕らは原宿駅まで祖父母たちを迎えに行ったセヨの戻りを談笑しながら待っていた。


「あ。おいでのようですわ」


もよさんが庭に引き連れてきた集団は、がやがやと音量が大きい。


そして、外観も凄まじかった。


「なんだあれは」


僕は、『無遠慮』という言葉では足りないと思った。


『無秩序』


と言い直したい。



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