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リョウサイ・パフォーマー

解散危機寸前のエア・バンド、「見世物委員」の初ライブは衆目の白眼のなか終了した。


見ようによってはキュートな僕らの容姿ルックスを評価してくれたのか、アンダーグラウンドな歌詞を陽の当たる場所で歌った長谷ハセちゃんの『異才』を哀れんだのか、取ってつけたように置いてあったニットの帽子に10円玉を入れていく通行人が何人もいた。


「おお? 商売になるかも?」


と帽子の持ち主である先輩がお金を集めるとなんだか虚しさがこみ上げてきた。


余興は続く。


僕らの後の先輩方の芸は輪をかけてひどかった。


・針の穴に1発で糸を通す先輩

・ゲップでローソクの火を消す先輩

・3秒だけ皿回しができる先輩

・誰も知らないアングラ劇団員のモノマネを披露する先輩

・ロイヤルミルクティーを一気飲みする先輩

・日本一硬いせんべいをお茶で柔らかくしてから食べる先輩。柔らかくなるまで30分間その芸を見せ続けられる僕ら


「ああ・・・セヨが『先輩共』と呼ぶ気持ちが分かる」

「お? ヒロオ、初めて意見が合ったな。そうだろうそうだろう」


そういうセヨはポテトチップスと羊羹ようかんを一気に頬張り、


「口の中でポテチのかけらが餡に《あん》に練りこまれていくこの感触!」


という異次元なことを言ってる。

こういうところがなければそれなりに見た目はかわいいのに。


「ああ・・・」

「ヒロオ、大丈夫? さっきから元気ないけど」

「ユウリはこの地獄絵図の中でよく平気だね」

「だってしょうがないよ。こういう人たちなんだから」

「まあそうだね」

「それに、わたしこういう雰囲気結構好きだよ。ヒロオがいじめられてた頃はこんなわいわいする感じ無かったでしょ?」

「そっか・・・確かにそうだ」

「実はわたしも無かったんだよね」


あ。


やっぱりそうだ。


ユウリはいじめられる僕に構ってくれてたから、自分自身も白眼視されてたんだ。


ごめん、ユウリ。

ありがと。


「では、僭越ながらトリを務めさせて戴きます」

「にゃあ」


白いブラウスに洗いざらしのブルージーンのミツキさん。

そして隣にはスレンダーな純白のピト。


絵になるペア。


さてさて、何の芸をしてくれるのか。


「ネコマワシをします」


ユウリが聞き返す。


「え。『猫まわし』ですか?」


「『ネコマワシ』です」


僕には分かった。


ユウリもミツキさんも同じ発音をしている。

なのにユウリは漢字とひらがな、ミツキさんはカタカナの単語を言っていることが本能で僕に伝わってくる。


ネコマワシ?


限りなく嫌な予感しかしない。


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