ピト・イン・ザ・カネカシ大学寮
「なんだこの猫は」
「ピトって言います」
寮にピトを連れて帰った。
予想通りオカモ先輩が面白くなさそうなのでごくシンプルに答えたら更に不機嫌になった。
「名前なんか聞いてない。なんでこんな汚らしい猫がこの神聖な寮にいるんだ、ということだ」
「先輩共の方が汚いぞ」
「なんだと、セヨのくせに」
「ウチのくせにとか意味がわからんぞ」
「オカモ先輩、飼っちゃダメですか?」
「いや・・・いくらユウリちゃんの頼みでもこればっかりは。この寮には寮生活のための規則が定められているんだよ」
「え、そんなのあるんですか?」
「ヒロオ。お前もきちんと守れよ。言うぞ
①先輩には絶対服従
②部屋の掃除は年一回
③ご飯の用意は後輩の義務
④寮費の5%は先輩へ
⑤動物を飼うべからず」
「オカモ先輩〜違いますよ〜。それは寮の規則じゃなくて〜オカモ先輩が去年の寮祭の時に酔っ払って言った、単なるオカモ語録じゃないですか〜」
長谷ちゃんの今の一言に僕の耳がぴくっとなる。
「え? 寮祭?」
「うん〜 そうだよ〜」
「えー嫌だー」
間髪入れずにユウリが拒否反応を示している。ユウリのリアクションはごく正常だ。
「寮祭なんて、楽しそうだな」
セヨの反応は異常だ。
「にゃあ」
「お? ピトも寮祭好きなのか?」
「こら、セヨ。勝手にピトを利用するな」
「ヒロオ、ピトは動物だから正直だぞ」
オカモ先輩が厳かに言う。
「寮祭は来週だ。ピトが寮祭で何か芸をするのなら置いてやってもいい」
「そんな、猫が芸なんて」
「ヒロオ、甘いぞ。猫であろうが郷に行っては郷に従え。寮祭の掟を守れん奴は住む資格がない」
「え? 掟? まさか」
「そうだ。住人全員、芸をしてもらう」
退寮したい。