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悲しい世界

作者: 吉田結樹

 光あふれる世界。人はその眩しさに酔う。

 ブルーライトが作る世界は偽物だ。

 偽物の世界にいる偽物の自分を操って、偽物の快感を得る。

 ただ、それには本物がいる。現実にある体が必要不可欠。


 でも、もう無理だった。


 僕は死ぬ。生きられないなら、死ぬしかない。

 僕は現実に生きて来たんじゃない。僕は虚無に生きてきたんだ。


 でも、もう終わり。


 金も食料も全て無くなって。虚無に生きれなくなって。

 働けばいい、と思うかもしれない。


 でも、それは違う。


 働くということは、現実に生きるということだ。

 僕は虚無に生きるんだ。生きていたいんだ。

 こんな腐った現実に生きたいわけじゃない。


 だから、死んでやる


 僕は現実で何年ぶりかわからない決意をした。

 そうして、僕は現実に生きることになった。

 死ぬ、ということは現実の行動だからだ。

 僕は死ぬ為に現実を生きる。

 これは僕の最後の決意だ。




 朝。決意をした後、手始めに鉄道に行こうとした僕は、時刻が深夜ということに気づき、仮眠をして現在。

 最寄り駅に来ていた。

 通勤ラッシュの人並みに紛れながら僕は歩く。

 切符を買い改札を通り抜け、レールの目の前まで行く。

 ……沢山の、人がいた。僕はその中のたった一人。ここで僕が死んだら、沢山の人達は困るだろう。

 不思議なものだなぁ、と僕は感慨にひたる。

 僕が死ぬということはつまり、人が死ぬということ。世間では人が数人死ぬだけでニュースに取り上げられる。そんな世の中で、人が死ぬ。それは重大なことのように思える。

 でも、その影響は「沢山の人達が困る」だけなのだ。

 僕は周りを見渡す。スーツを着ている人達がいた。彼らは皆、サラリーマンなのだろうか。

 彼らはこんな朝早くから仕事に行く。大変だろう。でも、彼らはきっとそれでも生きる。

 僕にはそれが不思議だった。こんな世の中に生きるくらいなら、死んだほうがマシなのに。彼らは自殺ということを考えたことがないのか? それとも、生きる理由というのを持っているのだろうか。わからない。

 ただ、わかるのは。ここで死ぬのは良くないということだった。僕は死にたいだけだ。迷惑をかけたい訳じゃない……。

 僕は駅から立ち去った。






 僕は公園に来ていた。そして、悩んでいた。

 というのも、僕は大変喉が乾き、腹も減ってきていたのだ。

 昨日から、何も食べていない。水ならあるが、それも決意してから飲んでいない。

 僕にはわからなかった。僕は死ぬことを決意した。なら、生きる為のことである食事や水分補給は避けるべきではないか? いや、僕は死ぬ為に一時的に生きているのだから今は食べても飲んでもよし。というか、空腹じゃまともに考えられなくて死ねないし、倒れて病院行ったらそれこそ死ねないじゃないか。

 ……どっちが正しいのだろう。

 多分、前者は感情論だ。それで、後者は理論。だから後者の方が正しいのだろうけど、何となくやるせない。

 ああ、ああああああああああああああああ。

 わからない、わからない。

 ……とりあえず、水を飲もう。考えるためには、死ぬ為には水が必要だ。

 僕は公園で水を飲むと、少しだけ元気になった気がする。

 ……空腹で倒れる前に、死のう。

 僕は改めて決意して、せっかく死ぬのならあの場所がいいかもしれないと、僕は歩きだした。






 僕は墓場に来ていた。僕の両親が眠る場所だ。

 それにしても、人は何故墓参りなんてするのだろうか。死んだ人に会えるわけでもないし、なんの得があるのだろう。

 そんなことを考えながら、僕の死に場所になる墓を見つめる。

 それにしても、人は何故死を悲観するのだろう。死んだ後のことは誰にもわからないのに。現実よりも良い世界、楽園がそこに、死の先にあるのかもしれないのに。

「何故皆は、死にたがらないのかな」

 僕は言いながら、死ぬ為の準備をする。頭を思いっきり墓にぶつければいいだろう、と墓の前で構える。


 その時だった。彼女が現れたのは。


「何してるの?」

 知らない人だった。何で決意をしたときに、現れるのだろうか。

 何をしているのか。それを聞いて、僕が死のうとしているとしって、他人である彼女は僕を助けられるのか。きっと助けられないだろう。助けるならばもっと早く来てくれればいいのに。

 馬鹿馬鹿しい。助かることを考えている自分が馬鹿馬鹿しい。

「見てわからないんですか? 墓参りですよ」

「さっきのポーズは何なの? 思いっきり頭をぶつけるんじゃないのかって思ったのだけれど」

 よく見てるな、と思った。普通、他人である僕のことをそこまで気にするのだろうか。

 いや、それは自意識過剰か。たまたまここが通り道で目に入っただけでも、それくらいは気づくだろう。

「まさか、そんなことするわけないじゃないですか」

 こう言うと、人は面白いぐらい意見を変える。

 というのも、さっきまで彼女は自分の目で「僕が頭をぶつけようとしている」ところを見ている。それは確かな情報だろう。

 しかし同時に彼女は、そんなことをするはずがないと思う。それが普通の行為じゃないからだ。

 故に、見間違いだった、勘違いだったと期待し、僕が言った否定の言葉に流される。

 僕が頭をぶつけようとしていたのは、誰が見てもわかることなのに。

 気付けるはずなのに。

「……泣きながら否定されても、信じられないのだけれど? 話すことで楽になれるなら、聞いてあげられるわよ」

 言われて気づいた。僕は泣いていた。

 悲しかったのか。違う。嬉しかったのか? 違う。助けを求めているのか。

 ……そうなのか? そうなのか。

 わからない。けれど涙が止まらなかった。

「嫌だったら振り払っていいから」

 墓の前に座り込み、ただただ泣いていた僕を、彼女は抱きしめた。

 腕で肩を包み、ギュッと力を込めて包まれる。

 温かくて、でも素直に喜べなくて、何で今なんだ、と思いながら照れ隠しに

「何でこんなことしてくれるんですか」

 と聞く。

「もしも私が貴方のように泣いていたら、こうしてほしいかなって。嫌だった?」

「嫌じゃありませんよ。ああ、もう貴方のせいで涙が止まりません。どうしてくれるんですか」

 言いながら笑顔になる。嬉しかった。

「責任を取れって言うの? ……」

 ギュッと包んでくれているけれど、彼女が黙り込んだことに、僕は先程までの嬉しさが反転したんじゃないかというぐらい不安を感じた。

 冗談のつもりで言ったのだが、重い発言だったのだろうか。

 せっかく優しくしてくれた人に仇で返すような形になったことよりも、ただ、この優しさが消えてしまうんじゃないかという自分勝手な考えが頭をよぎる。

「そう、ね。いいわ。責任、取ってあげる。貴方、一人暮らし?」

 不安が疑問に変わった。不安は消えかけていたけれど、彼女が何を言っているのかわからず、とりあえず返事をして様子を見る。

「一人暮らしですけど……」

「なら、家に来なさい。ちょうど一部屋開いているの。あ、お金のことは心配しなくていいから。お金なら無駄に余っているから」

 無駄に、という言い方と、一部屋開いている、といった時に一瞬彼女の表情が陰ったのを見て、ここが墓場ということを思い出した。

 彼女も何かを失っているのだ。僕は多分、その埋め合わせになるのだろう。

 せいぜい埋め合わせられればいいが、きっとそれは叶わない。けれど、少しでも、優しさに報いたい。そう思った。

「ついてきて。あ、ここには何で来た? 私は車なんだけど、貴方は?」

「僕は電車です」

「ならちょうどいいわね。このまま家に連れて行くわよ」

 早足に墓場を去ろうとする彼女の姿を、僕は極力見ないようにした。

 彼女はきっと、失った人のことを考えて、それで……。

 ならば僕も考えよう。両親のことと、そして彼女がいなければなくなっていた僕のことを。

 この先僕がどうなるかはわからない。死んでいたほうが良かったと考えるかもしれないし、生きていてよかったと考えるかもしれない。それはわからない。

 けれど、僕は生きていたいと思った。

 彼女の優しさに、報いたい。それが新しい僕の生きる理由で、全てだった。


 それから僕と彼女は、一生を共にした。その人生が幸せかどうかは、辛いものだったかは、悲しいものだったかは、想像に任せよう。ただ、言えることとしては

「僕は彼女に会って生まれ変わった」

 ただそれだけだ。

前になんとなく書いていた小説の続きをなんとなく書いてみました。読んでよかった、と思う人が少しでもいたらいいなと思いながら、なんとなく投稿してみました。なんとなくづくしですが、感想をいただけると嬉しいです。一言でもいいので、お願いします。

小説って、書きたいのに書けないのは何ででしょうね。いつか長編でも書いてみたいなあ……。

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