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異世界で平凡を  作者: みちお
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4話 初仕事其の2

遅くなってすいません。

なかなか忙しくて……

なるべく予定通りにアップします。



 道沿いに進んで行くと、道の両脇に立派なレンガ造りや石造りの建物が立ち並んできた。

 この場所の景色は、本当に異世界に来たと実感できるほど異観である。


 ハイド武具店はそんな圧倒的な建築物がひしめく中に1軒、ひっそりと佇んでいた。

 木材と石で作られた簡素な店の佇まいは、明らかにこの通りで浮いている。

 最初、まさかこれではないだろう、と思い、他の武具店を探したがこの付近にはあの武具店しか見当たらなかった。


 店の外観の割にはしっかりした鉄の扉だ。

 扉の立て付けが悪いのか押してもびくともしない。

 全身に力を入れると軋みながら扉が開いた。


 店の中はランタンが5、6個天井からつるされ店の中をぼんやりと照らしていた。

 長細い店内には、両端の壁や床に様々な武具が所狭しと並んでいた。

 いや、並んでいるとは言い難い。乱雑に置いてあると言ったほうが正しいだろう。


 正直、この店やってる感じがしないぞ。

 俺たち以外に客の姿もないし。


 店の奥のカウンターまで進むが誰もいない。

 それにしてもなかなかの散らかりようだ。

 銃はさすがに無いが、いろいろな形の剣が置いてある。

 

 ふと足元に立てかけてあったロングソードを持ち上げた。

 漆黒の刀身がランタンの光を反射し、柄のところには竜の彫刻が施してある。

 刃渡りは1mほどで、重さは自衛隊で使っていたハチキュウより軽い。

 2㎏といったところか。


 なかなかかっこいい剣だな。

 金がたまったらこれを買おうか。

 



 「なんだぁ?! お前らぁ!」


 焦った。

 かなり焦った。

 エレナにいたっては、びっくりして涙目になっいてる。


 突然の大声に振り返るとカウンターの向こう側に、いかにも職人、みたいな親父さんが俺を睨んでいた。

 この人がこの店の店主だろう。


 「早急に装備を整えたい。ギルドのアリシアって娘に、ここに行けば何とかしてくれると聞いたんだが。」

 「なんだ。客かぁ?」


 なかなか気性が激しい人だ。

 まぁ職人肌はこうゆう人が多いだろう。


 「なんでも見て行けぇや。あと、その剣は高けぇぞ?」


 おっと、このロングソード高いのか。 

 にしても雑な置き方だったぞ。

 高級感の欠片もなかった。

 だが、売り物にべたべたと触るのもよくないな。


 「あいにく今、金がないんだ。代金は後で必ず払うから、すまないが何とか装備を整えられないか?」


 なかなか無茶な頼み事だと我ながら思う。

 多分断られるだろうな。


 「いいぜ。 」


 え? いいの?


 「オメェはアリシアに認められた冒険者なんだろう? なら装備はどうにかしてやるよ」

 「……ちなみにアリシアって何者なんだ?」


 ここまでつてがあるのだ。

 ただ者ではないだろう。


 「なに者って…… アリシアは俺、ドルク・ハイドの娘だよ」

 「マジかよ……」

 「おいコラ、なぁに絶句してんだ」


 いやぁ、だってね。

 このごついオッサンからどうやったら、あんな可愛い子が生まれるのだろうか。

 どう見たってアリシアと遺伝子が別物じゃないか。

 

 「まぁ、アリシアがここを紹介したってことはオメェ、固有スキルの持ち主なんだろ。だったら装備一式ただでやらぁ」

 「本当にタダでいいのか?」

 「あぁ。だが条件がある。最初の装備は選べねぇ。あとオメェは今後一切このハイド武具店で装備を買う。どうだ?」


 なるほど。

 まぁそれ位ならこっちのメリットが大きいだろう。


 「よし分かった。それで頼む」

 「じゃあ早速装備を用意してやらぁ」


 そういって床に積み重なっている装備品の中から銀色の胴当てを引っ張り出した。

 かなり傷が入っていて、銀の輝きも鈍い。

 贅沢を言える立場ではないが、少しボロすぎるだろう。


 「なぁに不満そうな目ぇしてんだ。確かに見た目は悪ぃが、防御力はなかなかだぜ」


 確かに頑丈そうだが。


 「その防御力ってどうやって確認するんだ?」

 「ステータスの見方が分からねぇなんてヘンな奴だな。 試しに今着てるそのダサい服に手ぇ当ててみろ」


 こっちの世界ではジャージはダサいらしい。

 それより、今まで何度もジャージに触れているが何もおきなっかたぞ。


 「手ぇ当てるだけじゃぁなんも起こらねぇよ。もっとその服について思うんだ」


 そうは言うがなかなか感覚がつかめない。

 思う、思う、思う、思う……


 おっ!

 なんかジャージが光ってきたぞ。

 よし、この調子だ。


 すると文字が浮かび上がっててきた。


 だよねー。

 読めないよねー。

 薄々感じていたけど。


 だが数字だけなら覚えた。

 どうやら前の世界と同じ、10進数のようだ。


 ふたつの欄に数字が書いてある。

 一番上の数字が、100

 二番目が、14、だ。


 「ドルク、この文字はなんて書いてあるんだ?」

 「ぁあ? オメェ字読めねぇのか?」

 「……遠い田舎から出てきたばっかりなんでな」


 ドルクはふぅんと言ってステータスに目を向ける。


 「えーっと…… ぼ、防御力100だぁ!? 皮装備より高ぇぞ。耐久値は低いがな」

 「いいほうなのか?」


 ジャージって意外と強いんだ。


 「まぁ低レベルの魔物ならどうってことねぇな。オメェは何のクエストを受けたんだ?」


 たしか鉱山で魔鉱石を見つけろって言ってたな。


 「鉱山での魔鉱石の採掘だ」

 「こりゃぁなんかの縁だな。そのクエストは俺が出したんだよ。そういうことなら話が早ぇぜ」


 そういいながらドルクは、カウンターの下からバックパックを取り出した。

 

 「これだけありゃ、クエストは楽勝だ。防具はその服で大丈夫だろう」

 「何が入っているか見ていいか?」

 「もちろんだ」


 中に入っているのは、


 つるはし

 シャベル

 火打石

 ランタン(替えのろうそく7本)

 鍋 大

 鍋 小

 食器類

 寝袋

 袋 複数枚


 だ。


 確かにこれだけあれば大丈夫だろう。

後は……

 「二日間の食料はないだろうか」

 「あいにくなんだがな、最近凶作が多くてよ。ここらへんは食糧不足なんだよ。悪ぃが、分けてやる食料がねぇ。調味料位なら分けてやるが」


 確かにここにたどり着く前に、食料を売っている店の前を通ったが多く置いてなかったな。

 大きな都市ではあるが、ここの暮らしも楽ではないようだ。


 「まぁ今晩の飯くらいは用意してやるよ」

「すまない。そうだ、晩飯の料理は俺に任してくれないか」


 貴重な食料をタダで分けてもらうもの気が引ける。

 あまりレパートリーは無いが味には自信があるほうだ。


「そいつは楽しみだな。それにもう、外は暗くなってきているから今日は泊まっけぇや」

「それは有難いが、もう宿を取ってしまったんだ」


 宿をとる前にここに来とけば金が浮いたな、と思ったが後悔してもしょうがないな。


 早速夕食の準備に取り掛かる。

 ドルクは「仕事がまだある」と言って奥の部屋に行ってしまった。


 キッチンの棚を漁ると、トマトのような実が数十個と卵、小瓶の中に入った塩と砂糖を見つけた。

 テーブルの上にはパンがある。


 確かに食糧事情は悪いようだ。

 だが、これだけでも最低限の物は作れる。


 「エレナ、手伝ってくれるか?」

 「もちろんです。」


 まずはトマト(試しに食べてみたら、トマトそっくりな味だった)と、塩と砂糖でケチャップを作る。 

 エレナにはケチャップのほうを任せよう。


 「まずこの実に十字の切れ込みを入れ、鍋で水と一緒に煮込んでくれ。皮がめくれてきたら、鍋から上げるんだ」

 「は、はい!」


 その間に俺はスクランブルエッグを作る。

 卵に少し砂糖を混ぜる。

 出来上がったスクランブルエッグを、一切れサイズに切ったパンの上に乗せる。


 「皮がめくれてきました」

 「よし、じゃあ皮をむいてくれ。向けたらつぶして弱火で煮込むんだ」

 「分かりました。……あのご主人様は料理に詳しいようですが、料理人をされていたのですか?」

 「……あぁ、まぁそんなところだ」


 実際、料理人だったわけではない。

 趣味みたいなものだ。

 ただ、調味料ぐらいは自分で作れるようになりたいと思い、作り方を勉強した。

 だがハマってしまい大体の調味料は作れるようになった。


 煮詰まったトマトソースに塩と砂糖を加え、簡易ケチャップの完成だ。

 本当は玉ねぎや酢があればもっとおいしいのだが。


 「そのソースをパンの上にかけてくれ」


 うん。

 見た目は立派な卵ケチャップトーストだ。


 「なんだかすごく美味しそうですね」


 エレナの目が輝いている。

 なんか達成感がすごい。


 ドルクも呼んで一緒に食べてる。

 ドルクは最初「見たこともねぇ食べもんだな」と、恐る恐る口に運んでいた。

 が、一口食べると二きれを一気に完食した。


 「お前、アリシアの婿になんねぇか? そしてここで住めよ」

 「それはいい話だが、アリシアが怒るぞ」


 飯ごときで娘を売りやがって。

 まぁ良かった。

 前の世界の料理がこっちの世界で通用することが分かった。


 あれ、エレナさん? 怒ってる?

 明らかに不機嫌そうな顔だ。

 エレナが俺を睨んでくる。

 

 「まぁ、オメェにはそっちの嬢ちゃんがいるしな」

 「いや、こいつは俺が保護しているだけで、そんな関係じゃ……」


 って、痛い。痛いから。

 つねるなって。


 「まぁ、今は嫁を貰う予定はないからな」

 「そうか……残念だな」


 良かった。

 エレナの機嫌が戻った。

 何事もなかったようにパンを食べている。


 それじゃあ明日もあるしそろそろ宿に帰るか。

 俺たちはドルクに礼を言って宿に戻った。

 ドルクは最後まで、「たまにでいいから、また飯を作ってくれ」と言っていた


 そういえばアリシアは帰ってこなかったな。

 ギルドの仕事が忙しいのだろうか。

 一応、アリシアの分も作っておいた。

 ドルクの奴がつまみ食いしていないか心配だが。




 宿についた。

 部屋に入り、明日の予定を立てる。

 

 「明日は朝早く出発する。長い距離を歩くから今日は早く寝るように」

 地図を見してもらったが鉱山まで40キロほどある。

 なかなか遠い。


 「分かりました」

 よし、じゃあ就寝。

 と思ったがそういや、ベッド一つだったな。


 実際に二人で入ると少々狭い。

 というか、女の子と寝るのは緊張する。

 しかも、エレナは結構な美人だ。

 童貞君には少々キツイかも……


 なかなか寝付けれない。

 エレナのほうはもう寝たみたいだ。

 すやすやと寝息を立てている。


 エレナが寝返りをうち、体をこっちによせてくる。

 柔らかな丘の感触が腕に伝わってくる。


 がんばれ、俺の理性。

 非常にうれしい状況だがここで手を出すわけにはいかない。

 エレナは俺を信頼してくれているんだ。

 手を出せばあのスラムの5人組と一緒になってしまう。


 うぉっ?!

 やばい、首筋に息が……

 これは拷問なのか?

 耐えるんだ、俺!!




 あれこれ葛藤しているうちに朝が来てしまった。

 結局一睡もできなかった。

 やっぱりベッドは二つのほうがいいかもしれん……


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