8 ルナティアの心の闇
「ヒナギクの記憶から辿った方が早い」
時の管理者はそう言った。なので、お母さんの記憶から辿ることにした。
────
最近、ルナティアが血の香りをまとわせている。本人も困惑している。意味が分からない、と。
──夜中に『鎖』が人殺しをしているかもしれない。その可能性もあるため、私は夜通しで起きることにした。
こんなの慣れっこだから構わないのだが、これ以上本格的に出てこられたら困る。あたしでも抑えきれるかどうか。
「ん、ルナティアが……」
いつもと違って鎌を手にして歩くルナティア。夜だからか、死神にしか見えない。
観察を続けると、人間の家に入っていった。──その数秒後、悲鳴が上がった。ああ、『鎖』の好物って。
あたしはため息をつく。死ぬのも覚悟で『鎖』を殺さないと、ルナティアをいつか喰ってしまうだろう。それではダメだ。周りへの影響も半端ないはずだ。
長女でそこそこ大きくなったスミレに全て託すことにした。幼い二人には私が死んだことを決して伝えないで欲しい、とも。文章に残した。
覚悟は出来た。
ルナティア──『鎖』が戻ってきた。
「何を見ていた? 」
「あら、それが本性なのね」
「──食事を見られたのだからしょうがない。お前は死ね」
「ええ、もちろん覚悟はしているわよ。あたしが勝てばルナティアは解放される」
「ああ」
鎌をナイフで防ぐ。かつての戦闘能力が衰えたとは言え、まだまだのはずなのだが。
一旦離れ、ナイフを投げつける。しかし、それもダメだ。
能力を使うものの、お腹をえぐられる。意識が朦朧とする──
────
私はいつの間にか泣いていた。レンゲたちには隠している母親の死。まさか『鎖』が深く関与しているなんて。
「これは確かに黙っていたほうがいいわね……」
「バレることはないよ、たぶん」
時の管理者は妖しげに笑う。表情豊かね。
「危険だけれど、『鎖』を追うの? 」
「当たり前よ。危害を加えるのに変わりはないのだから」
「……じゃあ、頑張って。私はここにいるから」
「……そうね。無理は言えないわ」
私は見送り、ふう、と一息をつく。──これでよかったのよね? お母さん。




