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chain 魔法と悪魔編  作者: 神崎美柚
Ⅲ 行動開始
34/35

34 奇跡

 地下の真新しい部屋であの方は寝ていた。二人も寝ている。

 多分、多大な量の魔力の消費で疲れたんだろう。私も師匠にしごかれていた頃、かなり魔力を使い2日ぐらい寝てしまったことがある。これは魔法使いなら誰でもなるらしく、あの方や師匠も耐えきれないらしい。


「今の内、かな」

「待って、イルフォ! 」

「えっ……! 」


 あの方は目覚めていた。回復力には個人差がある──と言われたことを忘れていた。ほとんど使い果たした場合私は2日で全快するが、師匠は半日、そしてあの方は……数時間。(ちなみに平均だと3日半)どうなってるの!?


「まさかなめていたの? 私の回復力」

「……」

「私は古代の魔法使いであり、魔術師よ。回復だなんて簡単なものよ」

「……」


 私はどうにかしてソフィアの元へ行こうとする。しかし、メグの方が早かった。

 私はあの方の相手をすることにした。少々危険だが、この廃墟同然になりかけている屋敷なら大丈夫だろう多分。


「あら、素人同然の小娘が私に立ち向かうの? 」

「っ……」


 しばらく寝ていないせいか、少しフラつくがなんとか持ちこたえる。


「メグ、ソフィアと一緒に逃げて」

「え!? ……分かった」

「あら、お友達を死なせるのね」

「……」


 確証はないが、ソフィアはこちらを見てほほえんだ気がした。操られているとは思えなかった。

 だから、魔力があまりないメグと共に逃がした。リサテアは意識が混濁しているから魔法を見せても大丈夫。(多分)

 私は早速、大得意な火の魔法から発展させた炎を繰り出す。──え。


「つまらないものね」


 炎は一瞬で消えた。もの凄い早さで氷のとげが炎を貫いたみたいだ。な、何これ!?

 慌てて色々と試すが、消えてしまったり、そこら辺を破壊した。


「う……」

「この勝負、私の勝ちね」


────


「私はメグです。あの子の親友です」

「なるほど」

「神様ってすごいんですね。だまされたふりだなんて」

「私はまだまだだ。下級だからあまり動けないんだ」

「……ほう」


 私達は少し離れた場所にいた。草花が生い茂っており、ここは放置された土地だと分かった。

 私はふとリサテアが心配になった。糸使いだからまあ大丈夫だとは思うが、訊いてみるとするか。


「私以外にいたもう一人なのだが、死ぬことはないよな? 」

「ええと、悪魔ですよね」

「ああ。糸使いの悪魔だ」

「しばらく病院には通ってもらった方がいいと思います。気休め程度に」

「そうなのか」

「まあ、闘いが長引けば、の話ですが」

「……」


 私はぎゅっと拳を握りしめた。私は非力だ。神様なのに、あの魔法には適いはしない。──いや、禁断の方法はあることにはある。


「今から戻ろう」

「え、無茶ですよ! あの、その、『鎖』はかなりの強敵ですし、えと、」

「構わない。例え、私が犠牲になってしまっても……ハナやリサテアの未来が明るければそれでよい」

「……」


 恐らく、私は罰せられてしまう。二度とハナたちに会えなくなってしまう。──それでも、構わない。今この状況を打破しなければならない。


「それに、彼女にも大切な人がいるんだろう? 」

「……はい。そうですね。あの子のためにも」


 私達は急いで戻ることにした。


────


 私に氷のとげが降りかかろうとした瞬間、光が辺りを包み込んだ。とてもきれいな、ひかり。

 ──それはまるで、神の護りのようで、暖かな……。


「あれ、あの方は……」

「恐らく、この聖なる光に堪えられず逃げたのだろうな」

「……ソフィア」


 間違いなくソフィアだったが、綺麗な黒髪が足下まで伸びていた。さっきの力で……。

 その姿は守護神そのものだった。見たことはなくても、よく分かる。


「私のことは気にしないでくれ。あと、あまりじろじろ見ないで欲しい。この姿はとてつもなく恥ずかしい」

「は、はい、分かりました」

「それよりリサテア……」


 リサテアは眠っているようだった。

 師匠曰く、悪魔は魔法に対する耐性は高い方らしい。その気になれば魔術ではなく魔法も使いこなせるかもしれない、と。


「リサテアはしばらくすれば目が覚めるはず。しばらく、私の病院で預からせて」

「分かった」


 ソフィアはメグとリサテアがいなくなると、立ち去ろうとした。しかし、私は言いたいことがあった。


「ありがとう、ソフィア。皆のためにわざわざ」

「最後に力を使えて神様冥利につく」


 私には顔も見せずにそれだけ言うと、消えた。

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