34 奇跡
地下の真新しい部屋であの方は寝ていた。二人も寝ている。
多分、多大な量の魔力の消費で疲れたんだろう。私も師匠にしごかれていた頃、かなり魔力を使い2日ぐらい寝てしまったことがある。これは魔法使いなら誰でもなるらしく、あの方や師匠も耐えきれないらしい。
「今の内、かな」
「待って、イルフォ! 」
「えっ……! 」
あの方は目覚めていた。回復力には個人差がある──と言われたことを忘れていた。ほとんど使い果たした場合私は2日で全快するが、師匠は半日、そしてあの方は……数時間。(ちなみに平均だと3日半)どうなってるの!?
「まさかなめていたの? 私の回復力」
「……」
「私は古代の魔法使いであり、魔術師よ。回復だなんて簡単なものよ」
「……」
私はどうにかしてソフィアの元へ行こうとする。しかし、メグの方が早かった。
私はあの方の相手をすることにした。少々危険だが、この廃墟同然になりかけている屋敷なら大丈夫だろう多分。
「あら、素人同然の小娘が私に立ち向かうの? 」
「っ……」
しばらく寝ていないせいか、少しフラつくがなんとか持ちこたえる。
「メグ、ソフィアと一緒に逃げて」
「え!? ……分かった」
「あら、お友達を死なせるのね」
「……」
確証はないが、ソフィアはこちらを見てほほえんだ気がした。操られているとは思えなかった。
だから、魔力があまりないメグと共に逃がした。リサテアは意識が混濁しているから魔法を見せても大丈夫。(多分)
私は早速、大得意な火の魔法から発展させた炎を繰り出す。──え。
「つまらないものね」
炎は一瞬で消えた。もの凄い早さで氷のとげが炎を貫いたみたいだ。な、何これ!?
慌てて色々と試すが、消えてしまったり、そこら辺を破壊した。
「う……」
「この勝負、私の勝ちね」
────
「私はメグです。あの子の親友です」
「なるほど」
「神様ってすごいんですね。だまされたふりだなんて」
「私はまだまだだ。下級だからあまり動けないんだ」
「……ほう」
私達は少し離れた場所にいた。草花が生い茂っており、ここは放置された土地だと分かった。
私はふとリサテアが心配になった。糸使いだからまあ大丈夫だとは思うが、訊いてみるとするか。
「私以外にいたもう一人なのだが、死ぬことはないよな? 」
「ええと、悪魔ですよね」
「ああ。糸使いの悪魔だ」
「しばらく病院には通ってもらった方がいいと思います。気休め程度に」
「そうなのか」
「まあ、闘いが長引けば、の話ですが」
「……」
私はぎゅっと拳を握りしめた。私は非力だ。神様なのに、あの魔法には適いはしない。──いや、禁断の方法はあることにはある。
「今から戻ろう」
「え、無茶ですよ! あの、その、『鎖』はかなりの強敵ですし、えと、」
「構わない。例え、私が犠牲になってしまっても……ハナやリサテアの未来が明るければそれでよい」
「……」
恐らく、私は罰せられてしまう。二度とハナたちに会えなくなってしまう。──それでも、構わない。今この状況を打破しなければならない。
「それに、彼女にも大切な人がいるんだろう? 」
「……はい。そうですね。あの子のためにも」
私達は急いで戻ることにした。
────
私に氷のとげが降りかかろうとした瞬間、光が辺りを包み込んだ。とてもきれいな、ひかり。
──それはまるで、神の護りのようで、暖かな……。
「あれ、あの方は……」
「恐らく、この聖なる光に堪えられず逃げたのだろうな」
「……ソフィア」
間違いなくソフィアだったが、綺麗な黒髪が足下まで伸びていた。さっきの力で……。
その姿は守護神そのものだった。見たことはなくても、よく分かる。
「私のことは気にしないでくれ。あと、あまりじろじろ見ないで欲しい。この姿はとてつもなく恥ずかしい」
「は、はい、分かりました」
「それよりリサテア……」
リサテアは眠っているようだった。
師匠曰く、悪魔は魔法に対する耐性は高い方らしい。その気になれば魔術ではなく魔法も使いこなせるかもしれない、と。
「リサテアはしばらくすれば目が覚めるはず。しばらく、私の病院で預からせて」
「分かった」
ソフィアはメグとリサテアがいなくなると、立ち去ろうとした。しかし、私は言いたいことがあった。
「ありがとう、ソフィア。皆のためにわざわざ」
「最後に力を使えて神様冥利につく」
私には顔も見せずにそれだけ言うと、消えた。




