33 メイドたちは何人?
「中々、危ないことになっていたな」
「そうね。はああ。剣持たせて正解だったかも」
「ピンチだから私のとこに来たんだ? 」
「ええ。ごめんなさいね、急に」
本屋での会話後、弟子がピンチだと分かり私は近くにある馴染みの酒場に入った。そこでとりあえず弟子と会話をした。ここは魔法使い本部の者が利用するかなりお高い酒場であり、私のように魔力の高い者も利用するため会話も怪しまれない。
「俺の錬成した剣、効いたっぽいな」
「私が魔力をこめたのだから、あんたは関係ないと思うけど」
「ああん? そこいらの剣と俺の剣を同等扱いするのかてめぇは」
「別にそこまで言ってないわよ」
「まあまあ二人とも。ほら、飲みなよ」
この酒場のマスター、ミレと私の飲み仲間、タール。タールは立派な武器工房のオーナーであり、私もよく利用する。酒癖は悪いけど、いいやつだ。
ちなみに副長は酒がいっさいダメなので、ここにはいない。
「にしても、あのヴァンパイアメイドまであっちに行ってるとはなぁ」
「まあ、あの女が一人で行くはずがないから2、3人はいると思っていたのよ。でもまさかあのメイドをねえ……。こっちではしばらく大人しくするつもりなのかしら」
「リオネリアはもしかしたら、あなたの弟子がどんなものか試す気じゃない? 」
「まあ、生んでから一度も会ってないからどれほどかは知らないから試したくなるでしょうね……」
私は弟子にあえてリオネリアとは言わなかった。弟子は自分の母親の名前がリオネリアだと分かっているからである。
オルスディン家の娘としての幸せよりも、ドースティア家の夫人として生きることを選んだリオネリア。私の弟子イルフォニアを生むまで家出をする素振りを全く見せず、生んだ後忽然と姿を消したという。その後のオルスディン家は散々だったらしい。
「その、何だ? 子への愛情はねぇのか? 」
「彼女の眼中にあるのはドースティア家に嫁いだ後生んだ息子だけ。彼にしか愛情は注いでないと思うわ」
「……それじゃあ話し合いは無理なのか」
「ヴァンパイアメイドがやられたから恐らく戻ってくるはずよ。私も戦いの準備をしないとね」
「気をつけてよ」
私は酒を一杯だけ飲み、酒場を後にする。彼女が戻ってくるのは明日ぐらいだろう。今日は準備しないと……。
「あら、雨……」
本当に私はついていない。最近、運を弟子にとられている気がする。
家に戻り、ドースティア家のメイドの一覧表を探すことにする。昔、オルスディン家の当主だったレミリアの父親に頼まれて調べた物。だが当主は亡くなってしまい、私がやむなく引き取ることになったもの。これが役に立つとは思わなかった。
「《洗脳》を主に使うのが21人、《操作》を主に使うのが15人、か。はああ。本気になったらヤバそうな相手ね……」
特殊能力者は虐げられることが多い。しかし、ドースティア家は先天的特殊能力者が多く生まれる家。たとえ生まれなくても、強制的に身につけさせるという。
仕えるメイドは全て先天的特殊能力者で、虐げられてきた人たち。そのため、世間は敵、らしい。
「困ったことになったわねえ、本当」
とりあえず弟子の様子を明日まで見守ることにした。




