31 お茶会
「へえ、弟子を……」
「白い建物に行かせてどうする気なのかしらね。さっぱりよ」
「でも、先生。あそこにはメグさんがいますのよ」
「え!? そんなこと聞いてないわよ」
「先生にも知らないこと、あるんですね」
私は初めての弟子・カヤと共にお茶を楽しんでいた。パープルハートの庭園。私達のいる場所を中心にパープルハートが咲いている。(ここから外に通ずる道が二本ある)
カヤは今弟子に捕まえさせようとしているご令嬢の義妹にあたる。ご令嬢並みとはいかないが、中々優秀。私が鍛え、ご令嬢の弟と結婚するという名誉を果たしたのだ。
「メグさんは魔法使いとして劣っていたので、そちらに行かれたんです。白い建物──精神科病棟に」
「ああ、あの子がいる……」
「あの人の担当ではなく、あの若さでとある重傷患者の担当なんです。いつ目覚めるかも分からない、生きているのが不思議なくらいの患者の……」
「そうなんだ。──今日もお茶、美味しいわね」
「ありがとうございます」
あの病棟は精神科以外にもあるのか。にしても、カヤはもう気にかけてもいないのか。まあ、随分前の出来事だし、カヤはほぼ無関係だったし……。
「先生、幸せですか? 」
「まあ、それなりに」
「よかった……」
カヤの意味深な発言に首を傾げる。どういうことなのか聞こうとしたら、カヤの娘、シェーリがやってきた。
すごい笑顔。帰ってきてすぐ走ってきたのか。
「あら、シェリル。お帰りなさい」
「ただいま、お母さん」
「先生、シェリルが帰ってきたのでそろそろ」
「ああ、はい」
外に出ると、学院長にはち合わせた。うわっ、これはヤバい。
「あら、カヤには近づいてはならないと申し上げたはずですが」
「……」
「──お願いですから魔力のスイッチを切って入ってください。頭が痛くなります」
「ああ、すみません。痛みになるんですね」
「わざわざ干渉してきたのですか……呆れました」
私は学院長を軽く睨んだ。さっさと帰ろう。
学院長は学院を《意識》で支配している。いわゆる特殊能力の一つのそれは一番伝承しにくい。学院長はどのようにしてそれを手に入れたのやら。
特殊能力には主に《洗脳》と《操作》がある。後者を使うものが非常に多い。
──もし、弟子の近くに《操作》を使う者がいたら。とてもマズいことになる。
「あら、あれは」
帰り道。本屋の店先でふむふむ、と頷きながら本を選ぶあいつがいた。ああ、もう。何でこんな時に……。
「あ、やっと会えました」
「何? 」
「一流の《操作》の使い手が悪魔たちの世界に行ったという噂が」
「……! 」
ヴィアマンド。綺麗な空色のあざを足にもつ銀髪の女性。彼女の家は一流の《操作》の使い手。特に無機物を操り、凶器に変える《変化》という能力も備え持つ人が多い。
「これはマズいわね」
私は悔しくてたまらなかった。教師だから、私は異界に行けない。一応弟子には危険だと教えたけど。
「8月まで弟子を待ちましょう」
「あと1ヶ月ぐらい放置とはねぇ」
「仕方ないもの、無理よ、無理。あのあざは私が戦って何とかつけた呪いみたいなもの。おそらく、もう無効」
「……へえ」
弟子が無事であることを祈るしかできなかった。




