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chain 魔法と悪魔編  作者: 神崎美柚
Ⅲ 行動開始
30/35

30 白い病棟

 白い建物。そこに入ると、すごい叫び声が聞こえてきた。


「復讐してやる! してやるんだから! 」

「落ち着いてください、イェリスさん」


 噂で聞いたことがある。異界にある手に負えない精神病患者専用病棟──。特に手に負えないのがこのイェリスという女性ということも。


「イルフォニア!? 」

「メグ……」


 振り返ると、メグがいた。白衣を着ている。


「シーザス様から聞いたの。神様を助けたいという少女のことを。まさかイルフォニアとは……」

「シーザス様が!? 師匠何を考えているの……」


 あんな変わり者がなぜ関わるの? うーん、分からない。

 とりあえず今はソフィアを……。え、神様?


「シーザス様からの許可があるから、とりあえずついてきて」

「えっ、ちょ……」

「……イルフォニア、師匠のことはどれくらい詳しいの? 」

「……あまり知らない」


 やっと暴れなくなり、床に倒れ込んだイェリス。彼女を指さすメグ。


「彼女が精神病に陥った原因の一つ。それがあなたの師匠」

「……」

「あなたの師匠の教師時代にイェリスは事件を起こしたの。告発したのはあなたの師匠。おかげで加害者も被害者も不幸せになった」

「……」


 メグが病棟の奥に進む。そして、重たそうな鉄の扉を魔法で開ける。私とメグが入ると自動で扉が閉まった。


「この人は師匠のお母さん。火傷がヒドいけれど、一応生きている」

「……この人って、あの大火を起こした加害者」

「いえ、被害者よ。この人も精神病なの。可哀想に、火傷があまりにもヒドいせいでずっと喋っていないの」

「……」


 ベッドに横たわる包帯だらけの女性。生きているのが不思議だ。しかもこの人、自分に炎をつけたのに死ねなかったんだ……。


「彼女の最後の優しさが人をほとんど死なせずにすんだの」

「じ、じゃあ師匠のお姉さんとお兄さんは? 」

「別の病室よ。お父さんだけこんがり焼けたみたいだけど、彼女たちは顔以外火傷。顔は無傷」

「あの、何で急にこんなこと」

「神様救いたいのなら、まずは過去を知るべきかなって」

「……あの、さっきから神様って言ってるけど」

「ソフィア。ああ見えて守護神。だから守るのは得意なの」


 師匠はなぜそこを伏せたのだろう。私は確かに神は嫌い。でも、師匠の頼みならば親しく接することぐらい出来る。新米じゃないのだからなめないでほしい。


「そろそろ行こうか」

「あ、うん」


 ソフィアが神様なら私は何をするべきなのだろう。──リサテアの救出?

 休憩室に入り、メグは紅茶をくれた。私がコーヒー飲めないこと覚えていたんだ。

 ソファに座り、メグが話出す。


「守護神はあくまでも、見守るの。ただただ一人を守る為以外は力の使用は禁止。破れば人間となる。だからソフィアは自力で動けないと思うよ」

「え、そうなの? 」

「今までは黙っていたソフィアのお母さんもルールを定めたらしくて」

「そっか……」

「だからね、私達で行こうよ」

「は!? 」


 その言葉に愕然とした。メグは魔法使いとしては劣っているはず。なのに、そんなことを言って大丈夫なの?


「私も頑張ったんだから。少しは出来るわよ」

「あ、うん」

「さあ、行こう! 」


 私は慌てて紅茶を飲み干した。

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