25 衝撃
地下の空気はソフィアによる穴開けのおかげで少しは快適だが、鼻につんとくる血のにおいは消せてない。
《魔法使いは時に血まみれになるものよ》
《それ、昔の話ですよね》
《……ま、まあね》
それにしてもかなり広い地下空間。石作りなのがまた何ともいえない。
「ここは戦争前に当時の長が新しいお部屋をハナと将来の家族のために作るよう依頼した場所だ。これでも未完成だ」
「こんなに広いのに……」
「ハナを溺愛していたのと、これからも長く繁栄しますようにという願いもあったからじゃないの? 」
「そうだ、リサテア」
《でも当の本人は結婚したがらないのよね》
《よく調べましたね》
《周知の事実よ》
えへん、とふんぞり返ってる姿が目に浮かぶ。周知の事実とは言え、ハナと親しい人とどうやって接触したんだろう。
一番奥のに到達する。そこの壁には、他と比べて真新しい扉があった。
《ここからとても強い魔力を感じるわ。ここにいるのよ》
《分かりました》
「そこにいると思う」
「ああ。そうだろうな。ここだけ、新しくとりつけられている。私が来たときはなかった」
「踏み込みましょう」
扉を開けると、そこにいたのは──。
「ナトリ!? 」
「ここにいたの!? 」
「すごく怖かった……」
《待って! そのナトリ──》
師匠の声は二人には届かない。私が代わりに伝えようとしたが、声が出なかった。
これは思わぬ敵だ。魔法使いの私の声を封じることで、二人を騙す魔法を見事にかけている。
《ダメです、師匠。ここは二人と離れて出直さないと》
《……そうね。そろそろ、土の魔法使いのところに行かないと》
《え? 》
《今頃、名前を思い出そうとして思い出巡りでもしてると思うわよ》
師匠はまさか魔法をかけたのか。すごい。
私は一人、廃墟に戻ることにした。
《どこにいるのでしょう》
《あそこよ》
そこには、倒れている奴がいた。何か呟いている。
「……私は、誰…なんだ」
《無理だったか。やっぱり漂流者は記憶が磨耗しやすいのね》
《漂流者? 》
《さて、作戦を練り直しましょ》
漂流者とは何だろう。すごく気になるのにまたはぐらかされた。




