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chain 魔法と悪魔編  作者: 神崎美柚
Ⅱ 推理
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21/35

21 転換

 ハナは無口で、何を言っても反応しない。まるで眠っているようだった。

 元の世界から出発する前に一応、ここのことはあらかた覚えてきた。館の北にある山に廃墟があるからそこだと思う。


「……薄暗い」


 手頃な木を拾い、火を灯す。ここには光がほとんどない。まさに廃墟だ。

 この廃墟はリィー派という神にもっとも近い悪魔の種族が暮らしていた場所。戦争でかなり荒らされているから床も所々ない。


「意外と早いじゃないか」

「……! 」

「魔法で適わないから今度は力業かな」


 回し蹴りをしたが、全く効いていないらしい。……せっかく習ったのに。

 私は糸を引っ張り、異常事態を知らせる。これ、本当に使えるの?


「残念ながら、君には興味ない。──へっぽこ魔法使いの君にはね。でも、そこの魔法使い、中々の使い手のようだ。興味深いよ」

「……」

「さあ、魔力を貰おうか」

「……──」


 彼女が小さく呟いたかと思えば、彼の右手がなくなっていた。灰になって床に落ちていた。


「ち、ダメなのか……」

「ハナ! 」


 リサテアとスフィアがやってきた。た、助かった。


────


 この男、ムカつくわ。私の魔力を奪おう、なんて。冒涜よ。

 まあ、両手を焼いたら楽しみが減りそうだし、手加減をしておくわ。

 さて、これからどうなるかしら──。


────


 一旦身をひいた彼。私達は廃墟の中を調べることにした。


「ここがリィー派の……」

「噂には聞いてたけど、本当に嫌な場所ね」


 生き残りであるマリアという女性についても師匠から習った。

 彼女はモーキュネストに逃げ込み、安定した生活を送っている。戦争後、ここに戻りお墓を作ったとか。


「それにしても広すぎるわね」

「確かに」

「この無駄のように思える広さもリィー派を頼っていた悪魔がお金をつぎこんだなれの果て」

「……じゃあ、自分で自分の作ったものを壊したことになるの? 」


 私は俯く。どう言おう。

 師匠から聞いた話によると、戦争はかなり凄惨だったらしい。(暇だからよく見ていたと師匠は言っていた)悪魔はほとんどが狂い、まともだったのはほんの数名。地獄絵図みたいだったらしいが、師匠はなぜか楽しいと感じたらしい。(変な人だ)


「ええと、その……色々と」

「ここを破壊したのは私の元仲間だ」


 突然ソフィアが現れた。首の部分が大変なことになっている。手当しないと。


「──」

「……異界の者はこの特殊な包帯をどうにか出来るのか? 」

「私、師匠に治癒についても色々教わりましたから。師匠と私は包帯無しでも魔力をこめればこのような傷は楽勝です」

「……すごいな」


 しかし、この特殊な包帯を持っていたということは、師匠の弟子かもしれない。あの人はすぐに教えたがるから。


「この特殊な包帯は誰の? 」

「モーキュネストのリンの物だ。与えてくれた人はもういないみたいだが」

「……なるほどね」


 ──リン、幸せかな。

 そういうことなのか。そういうことなのね。


「これで大丈夫」

「そうか。ありがとう」


────


 へえ。中々やるわね、このソフィア。

 魔法使いの素質がありそうだわ。

 面白いけれど、こいつは中々のっとれないわね。使えない。そろそろ、保管しているあの体を使うときかしら。


────


「あれ、」

「ハナ、起きたのか」

「……うん」


 中にいた彼女が消えていた。私には分かったが、まさか転換!? いや、ありえない。いくらあの方でも使えるはずがない。


《使えるわよ、ご令嬢は》

《師匠、いきなり何ですか》

《やっと電話に頼らなくて済むのよ。嬉しくってたまらないわ》

《ああ、電話苦手ですからね》

《だって、私の時代にはなかったんだから……。それよりも、転換を使ったのなら確実にご令嬢よ。追いかけなさい》

《追跡なんて無理です! 》

《膨大な魔力を有している人を捜せばいいことよ。ああ、もう一人いるっけ? それじゃあ、サポートは任せて》


「どうしたの」

「ハナの中から別人格が消えたの。それを追いかけたいなあって」

「当ては? 」

「まあ、一応」


 とりあえず苦笑いをしておいた。

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