15 新たな疑惑
明石との話を切り上げ、戻ってくると別館のロビーにスフィアが倒れていた。駆け寄ると、すやすや眠っているようだった。
「ハナはどこだろうか。車いすはあるのだが」
「確かに……。誰かが開けてくれて戻って来れたけれど、本館には人がいなかったし」
すると、豪勢な螺旋階段からルマントが下りてきた。ハナを抱えている。
「ルマント、何があったんだ」
「イリス様が現れるなり、ハナ様が対抗しだしたの。たぶん、いつも守られているから真似したのかもしれない」
「スフィアも巻き込まれたのか」
「ええ、そうよ」
ハナを車いすに乗せ、ルマントは軽く礼をして去った。──イリス、だと?
「おい、待て。イリスって」
「お兄様がイリス様をそそのかし、逃がしたと思うけど二人ともいないの」
「……そうなのか」
横でリサテアがぽかんとしている。どうしたのだろうか。
「今の、誰? 」
「ロドノスの妹、ルマントだ。そうか、リサテアはあまりいなかったからな」
「一度だけ話したけど、あんな人だったかな……」
「ルマントも疑っていると言うなら、筋違いだ。ハナを助けてくれたのだからな」
「そうよね……」
しかし、信用しすぎるのもよくない。もう一度、関係性を見直す必要があるのかもしれない。
その時、ハナが目をさました。
「おかえりー、ソフィア」
「ああ、ただいま」
ハナの頭をなでなでする。リサテアが叫んだ。
「誰よ、この幼女ーーーー!! 」
「……リサテア。心が傷ついているのが分からないのか? 」
「え? 」
「両親が嫌いだったリサテアには分からないのか……両親を想う気持ちが」
「……ごめんなさい、分からない」
スフィアを別館の客室のベッドに寝させ、ハナ、リサテアと共に本館に向かう。本館は随分とボロボロになっていた。
悪魔たちはいない。すごく静かだ。どこに消えたのだろうか。