14 襲来
別館の豪勢な造りにはあきれた。折り紙を折っているけど、シャンデリアが眩しい。
「あら、本館で何か……」
本館が騒がしい。しかし、防音のせいで聞こえない。ハナも心配そうに見ている。
「え、イリス……? 」
本館の廊下を歩くのはイリス。あの髪はそうだ。
というか、こちらに来ている。……ヤバい?
「……毒に犯されし者、ね。面白くなってきたわね」
「ハナ? 」
ハナが立ち上がる。私はびっくりして、折り紙を落としてしまう。
そして、扉の向こうからイリスが現れた。イリスは笑っている。
「今がチャンスだと思ったの。あの騎士さんはいないし。ロドノスが異界との扉を封じてくれて助かるわ」
「確かにそうかもしれない。でもねえ、イリス。私のこと、分かるかしら」
「……笑わせないで」
見たこともない攻撃を繰り出すハナ。私はきょとんとしてしまう。
イリスは分かっているらしく、必死に避けている。
「魔法を使うってことは別の世界のか」
「ええ、そうよ。名乗る必要はないけど」
私はただひたすらに見守るしかなかった。
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ロドノスの妹として潜入させられたものの、なぜ師匠は自分から来なかったのかと私はまだ怒っていた。あんたのは本物の妹さんと同じ貧乳だから、という理由では納得できない。プンプン。
「イリスが逃げ出したぞ! 」
「捕まえろ! 」
私は魔法を使おうとして、やめた。師匠曰く、この世界では魔法は未知なるもので、取得している者はもちろん、知っている者も少ない。しかも立場上、マズい。
私はソフィアを呼び出そうと思い、異界に行こうとする。しかし。
「ルマント」
「お、お兄様!? 」
「どこに行く気だ」
「……そんなの、私の勝手です」
「だが、行かせない。ルマント──いや、異界から来た女」
「な、お兄様、何を」
「それはなあ、私もそうだからさ」
ニヤリと笑うロドノス。ああ、こいつも紛れ込んできたのか。でも誰なのだろうか。私は師匠みたいに色んな知識を持っていない。本当に困った。
すると、魔法を繰り出してきた。ゴーレムをうみだしているところを見る限り、師匠と同じ時代の人だ。益々分からない!
イリスの捜索のために悪魔は皆いなくなっている。ここにいるのは私とこいつだけ。魔法は繰り出し放題だ!
「ほう、水、か」
ゴーレムが私の攻撃を弾く。古代魔法はまだかじっている程度で、使うな、と師匠にも言われている。だから絶対的に適わない。──よし、逃げよう。
────
しばらく続いた攻防を止めたのは、乱入してきたロドノスと女性だった。ハナの攻撃がよく分からない土の塊を砕いた。
「え、どういうことなの!? 」
「あ……」
女性はヤバいな、という顔をしながらも私を追い出した。私は廊下で倒れた。
────
「この人ってハナ様……なのに、何で魔法!? しかも古代魔法!? ありえない……本当にありえない」
と、私が苦悩している間にイリスが倒された。ロドノス(仮)が殴ったらしい。可哀想に、頬が赤い。
「ん、どうしたの? 」
「さっきの……ええと、」
「なんのこと? 」
先ほどまでの鋭い眼光から元に戻っている。どうして?
「見間違いだったみたい……」
私は、疲れているのかな? それとも、ハナの中に誰かいるのかな。