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紅行進曲  作者: 寺嶋涼夏
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プロローグ

小説は書いたことがなく、これが初めてです。

誤字脱字誤用など、お目汚し多々あると思いますが、ご容赦願えればと思います。


女の子の主人公です。

エロ・逆ハーレムなどはありません。(予定)

若干厨2性を孕んでいるかもしれません。

俺TUEEEEE要素は薄めです。

タイトルは思い浮かばず、適当です。

(後で変えられるのかな)

ザクザクザク…




少女は一人、暗い夜道を雪の降る中歩いていた。


しっかりと防寒具を着込み、慣れた足取りで歩を進めている。寒さで頬と鼻の頭を赤く染め、呼吸のたびに白い息が漏れては寒空に消えてゆく。


少女はある一軒家を目指していた。あたりに街灯はなく、目的地の家の明かりだけが頼りだ。雪が降っているせいなのか、辺りに人の気配はなく、ただただ少女の息遣いと、ギュッギュと雪を踏みしめる足音が響くのみ。

それなのに少女は一片の不安や怖さなど、感じていないようだった。むしろ僅かに微笑んでいるようにも見える。

10歳前後のか弱い少女が、ほぼ真っ暗な夜道を一人で歩いているというのに。


やがて目的地にたどり着くと、ドアのノッカーに手を掛け、コンコンと2回鳴らした。ドアに何か声を掛けるでもなく、じっと外で待っていると、間も無くその扉は開かれ、一人の女性によって招き入れられた。


「遅くなりました、先生」


少女は帽子とマフラーを取り、肩に積もった雪を払いながら言う。


「寒かったでしょう。さぁとりあえず中へ」


「はい、お邪魔します」


先生と呼ばれたその女性は、にこりと微笑みながら少女を家の奥へと案内した。少女が通されたのは応接室のようだった。部屋の真ん中にはローテブルが置かれ、それを挟んでソファーが2対。

そしてそのソファーの片側に、男性が座っている。


「こんばんは、師匠」


師匠と呼ばれた男性は少女を見るとソファーから立ち上がり、部屋の間際に立つ少女をソファーへ座るように促す。


「いやあ悪いな、急に呼び出して。

本当ならこちらから出向くべきだったが、なにぶん手が離せない用があってね。」


「いいえ師匠。師匠達が忙しい身なのはわかってます」


そう言って少女は微笑むと、分厚いコートを脱ぎ、帽子とマフラーと一緒に脇に置いてソファーへと腰掛けた。

少女が座ると同時に、男性も腰を下ろす。


「ミアキス、ちょっと待っててね。今お茶を入れてくるから」


「ありがとうございます」


先ほどの女性は少女の返事を待った後、応接室から消えて行った。

女性が部屋を出たのを確認した後、少女は男性の方へ視線を戻し、口を開く。


「それで師匠、話というのは…」


「ああ、以前から話している通り、だよ…」


少女の問いかけに、男性の返事はことさら歯切れが悪い。手を口の辺りで組み、視線をテーブルの辺りに落としている。

少女は男性の顔をハッとした表情で暫く見つめた後、何も答えられないまま、同じように視線を落とした。


静かな部屋に重い沈黙が続く。部屋を暖かく染める暖炉のパチパチという音が、なんだか皮肉に聞こえて来るほどに。



「お待たせ」


その沈黙を破るように、女性がティーセットを手に戻ってきた。男性の隣に座りティーセットの載ったトレイをテーブルに置くと、女性は空気を察してか、カップに紅茶を注ぎながらゆっくりと口を開いた。


「わかっていたはずでしょう、ミアキス」


「でも…でも…、他に手は無いんですか!?」


「彼も覚悟の上だわ。それはあなたが一番よくわかっているはず」


紅茶が注がれたカップとソーサーを少女の前にカチャリと置くと、女性は少女を真っ直ぐ見つめながら言った。


「私も、出来ることならこんなことはしたくない。でも、やるしかないのよ」


「……じゃ…」


「?」


「私じゃダメなんですか!?…なんで…なんで…!!」


少女の瞳は悲しみで潤み、悲痛な表情を浮かべながら訴えた。

男性は少女の顔を見ることが出来ず、変わらぬ姿勢のまま眉間にシワを寄せ静かに目を閉じていた。

そんな少女を見て女性はスッと立ち上がると、少女の隣に座り直し少女の手を自身の手で優しく包み込んだ。


「私はいつもみんなに守ってもらって…何の役にも立てないで…。そしてまた…!もう嫌なんです、守られてばかりなのは嫌なんです!」


少女の目からは今にも涙がこぼれ落ちそうになっている。

それでも必死に堪えているのは、"彼"に少女よりも厳しい運命が待ち受けていることを彼女自身が一番よくわかっているからだろう。



「それは違うわ。これからあなたは、あなた自身の力で多くの人を守るのよ。そのためには彼がやらなくてはならないの」


「……」


「…ミアキス」


女性が少女の名を呼ぶと、少女はゆっくりと女性と視線を合わせた。


「もう時間がないの。以前よりの計画が始まるわ。そのために一時的にあなたの記憶を閉じます。


いいわね?」



覚悟を決めたのかそれとも諦めたのか、女性からの問いに、少女はコクリと力なく頷いた。

女性は少女の瞳の前を手で覆い自身も目を閉じると、静かに何かを唱え始めた。その様子を男性は先ほどの沈痛な面持ちのまま、無言で見守っている。

女性の詠唱が続いていると、少女は自身の頭の奥がミシミシと締め付けられるような感覚に襲われる。

記憶の封印が始まっているのかもしれない。

初めて味わう感覚に、少し恐怖を覚えて少女はぎゅっと拳を握った。

でももう後戻りは出来ない。

もうそろそろ詠唱が終わる。

少女は覚悟を決めた。

だがその覚悟は"彼"との別れを意味しているのを少女は知っている。




詠唱が終わる刹那、少女の頬に大粒の涙が伝った。



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