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リアローフオンライン  作者: Mr. Suicide
第一章 その男鍛冶師につき
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上鋼鉄のヴィーキング・ソード

 ヴィーキング・ソードという剣をご存知だろうか。

この剣は暗黒時代に北欧ヨーロッパにて広まった、ロングソードの前身でもあり幅広な剣身と、剣身に掘られた血溝とそこに掘られたルーン文字、更に模様鍛錬という特殊な技法によって剣身に蛇のような刃紋が浮き上がる。

ヴィーキング・ソードは魔力が宿る剣としてヴィーキングに使われていた、ヴィーキングはこの剣を神秘的なもの捉えていた。

つまりこの剣は、ヴィーキングという漢達のロマンや命を一心に背負い、ヴィーキングとともに長い歴史を歩んだ剣であり、血溝に刻んだルーンや蛇のような模様が鍛冶師としての魂を揺さぶってくるのだ。

「上質な鋼鉄」がやっと手に入った、前々から気にはなっていたが、錬金術師である友人が上質系の錬金法を編み出すまではと待っていた甲斐があったというものだ。

上質な鋼鉄と通常の鋼鉄の違いはなにか、それは強度や耐久値の上昇はもちろんのこと、加護やルーンが発動し力を生み出す際に、その力を増幅させる力があるという点だ。

この「力の増幅」という一点をクリアするために、友人は試行錯誤を繰り返し、材料を変え工程を変え時に器具を変え作業に取り組んだらしい。

友人曰く「高魔力結晶と粒子結界の源が重要だ、高出力なこの二つをいかに調和させて行くかが問題だった」らしいが、そんなことを言われても「成程、まったくわからん」状態だったが。


 兎に角、今俺は感動に打ち震えている。

彫金でルーン文字が生まれたときに感じた熱い思いが、フツフツとまた心の中で燃え盛っていくのを感じる。

上質な鋼鉄の数は限られている、失敗はできないししたくもない、今日のために彫金”ルーン文字”のレベルを上げてきた、そう今日という日のために。


 振るわれる右手には喜びが浮かんでいる、鎚の音色は軽快に工房の中で響き渡っていて、この瞬間を求めていたかのような感情をはらんでいた。

真っ赤に燃えた上質な鉄鉱石、どことなく感じる不思議な力は魔力というやつだろう、こんな力を感じるのは初めてで、まるで本当に鉄が生きているかのように語りかけてきている。

打ち上がった剣身を冷ます間に彫金の準備に取り掛かる、取り掛かるといっても彫金箱を持ってくるだけで済むので、これといって必要な準備はない。

鞘を作る準備をしている間に鉄が冷めたようだから刻むルーンを決めていく、戦神の加護(STR+2%)に巨人族への憤怒(巨人族に対しダメージ+3%)のルーンを刻んでいく、初めてルーンを刻むだけあってかなり緊張する。

血溝を掘っていき準備完了、慎重にルーンを刻んでいき、ゆっくりとその全貌が現れてくる、神秘的なルーンに心が震える。

ルーンを彫り上げて焼入れの準備にかかる、ここでどこまで熱を加えるかが肝だ、いきなり++を作れるとは思っていないが、+ぐらいにはなって欲しい、ここ一年近く毎日のように打ってきたのだから大丈夫と、自分に言い聞かせる。

ほごの中を睨みつけるようにして、自分の目で剣を上げる瞬間を見極める、一瞬の変化を見逃さないように目を光らせる。

今だ、剣をホドから抜き焼戻しを行う、自分の感覚を信じ600度を維持できるように焼戻しを行い、ソルバイト組織を生み出すために気を抜かずに鉄を睨みつける。

焼戻しを終えた剣身を磨くと、剣身に模様鍛錬独特の蛇のような刃紋が際立って、ルーン文字からは微細な光を感じる、それはまるでヴィーキング・ソードの誕生を祝っているかのようだ。


「・・・完成」


 一気に疲れが襲ってきた、鞘もあとは革と鞘口の装飾をすれば終わる、今日はカウンターに座りながら鞘を作ってしまおう。


「あっ・・・おじゃましています」


「・・・いらっしゃい」


 人が来ていたようだ、カウンターに俺がいないときは自動販売機能を使って買い物ができるため、別に俺が絶対にカウンターにいる必要はない。

お客は女で耳が尖っているし肌は色白だ、おそらくエルフだろうな、髪はプラチナブロンドに桃色の艷やか唇に切れ長な瞳、えらいべっぴんさんがいたもんだ、どれだけいじったのやら。

こんなことを考えつつ鞘の装飾を行っていく、鞘口と切っ先にはミスリルを使い同系統の模様を刻み統一感を持たせ、鞘本体は紫檀を使い周りに貼る革は「黒王牛の上質革」を使い高級感を出す。

ポメルの装飾を彫り込み真兪でふち取りを行い、更に高級感を持たせていく、鞘にこれだけ時間と素材を惜しみなく使ったのは久々で、とても楽しい時間だった。


「なにか・・・用か」


「えっ・・・いやあの・・・」


 何故かエルフが手元を覗き込んでいた、横目に見ると豊満な二子山はカウンターで潰れている、眼福。


「まあ・・・なんでもないなら良い」


 そう言って、奥の工房からヴィーキング・ソードを持ってきて最後の磨きを入れ、油を薄くしく。

剣を掲げるとエルフが息を飲んだのが分かる、その気持ちもわからないでもない、この剣からは神聖な雰囲気というか、なんとも神秘的な光を放っているのだから。


「上鋼鉄のヴィーキング・ソード+」


「えっ?」


「ルーンが美しいだろう」


「あっ・・・はい!」


 素直でよろしい事だ、この剣の美しさがわかるとは中々見所のあるエルフである。


「あの・・・お願いがあります」


「・・・なんだ?」


 この剣が欲しいとでも言うのだろうか、それはいかんこの剣は俺のコレクションとして永久に保存しなければならないからな。


「私を弟子にしてください!!」


 エルフが土下座をしている、毎日掃除をしているのでそんなに汚い訳ではない床に頭がつきそうなほどに体勢を落としたエルフ。

これはなんだろう、新手のドッキリかなにかだろうか、それかこいつは罰ゲームでも遂行しに来たか、おそらく後者だろう、可哀想にこんな死に職の道を少しでも進まねばならないのだから。


「いいだろう・・・来な」


「っ・・・はい!!」


 妙に嬉しそうだが、恐らく恥をかかなくて済んだことを喜んでいるんだろう。

後ろからエルフが追ってくるのを確かめてから、俺は工房のドアを開けて中に入る。

さてこいつをどうやって鍛冶師の道に引きずり込むか、今の俺の頭はそれでいっぱいだった。

勘違いされた方ばっかり書いてきたけど。

勘違いした方も書いたほうがいいのかな?

書いて欲しい人は活動報告に記事がありますんで、コメントに「ハクナマタタ」って書いておいてください。

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