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リアローフオンライン  作者: Mr. Suicide
第一章 その男師匠につき
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覇國鉄のエストック

 たまには変な武器を作りたくなる。

 剣身が2つに別れ、片刃の剣になるロングソード、軽さを追い求め軽くなりすぎたバスタード・ソード、穂先が三股になった槍。重くしすぎてそうそう振れなくなった斧。

 しかし、意外や意外、そんな武器ほどすぐ売れるのだ。人の欲望というものは、果てしないものがあるのだと思う。そしてそういう客ほど、何度も何度も足繁く通ってくれたりする。儲けなんてどうでもいいゲームの中であって、そんな客の方が嬉しいものであったりする。

 そんな客ほど注文が細かく、こだわりが強いのだ。そんなこだわりに、何処までも付き合っていくことが、ここ最近感じるようになった楽しみである。

 自分の技量も上げながら、自分の知識も増やしながら、自分の経験を積む。変な客であればあるほど、自分の中で新しい世界を開いていけるようなきがする。


 今回はどこぞの脳筋が気に入りそうな、覇國鉄と呼ばれる鉱石を使ったエストックを作ろうと思う。覇國鉄は兎に角重く、硬い鉱石である。重く硬い分、要求されるステータスも大きくなっていく。ステータスの殆どを筋力に降った人間のみが、振るうことを許されると言っても過言ではない程の金属である。

 エストックは13~17世紀頃に使用された刺突剣の一種で、歴史はレイピアよりも長い。レイピア登場以前から使われており、針のような太い剣身を持ち、突き刺すことに特化している。特にチェインメイル(鎖帷子)等を貫くために開発されており、針のようにするどい先端が特徴だ。

 この剣、鎧すらも突き抜ける威力があったとされるが。実際には、鎧の隙を狙った戦い方が主流であった。何故か。想像して欲しい、動いている鉄の物体をまとった人間に、鉄の剣を刺した時、果たして抜けるのだろうか。つまるところ、よしんば鎧を貫通させたとしても、それを抜くのに手間取っていれば、自分も串刺しにされるだけである。


 この剣、意外と覇國鉄に合うかもしれない。そんな思いつきから、なんとなく作ってみようとなった。重國鉄に鋼殻竜と呼ばれるモンスターのウロコをあわせて鍛えあげることによって生まれるこの固く重いインゴット。見た目よりも頑丈な剣身を持ったエストック。使い方は非常に簡単。鍔の部分を引っ掴んでひたすら突くだけである。


 今回は、長めの剣身のものを作ろうと思う。本来であれば1.3m程なのだが、少し長めの2mの物を作っていこう。その分重くなるが、自分でも持てることを確認済みである。しかしながら、自分の身長よりもでかい武器を撃つのは久々である。長ものの武器であれば作ることもあるが、剣というカテゴライズの物では随分と久しぶりである。


 ホドに火を入れ、今日も打つ準備にとりかかる。覇國鉄は、その重さと硬さのせいで非常に加工がしにくい。どれ位しにくいかというと、通常ロングソードを打ち上げるのにゲーム内時間で3時間のところ、5時間かかるのだ。

 打つための鎚も専用のものを用意し、重國鉄を使用した鎚で覇國鉄を鍛え上げ、新しい鎚を作り上げた。

 丁寧に火を入れていく。ふいごを前後させ温度を調整し、鉄の色をじっくりと観察する。鉄が真っ赤になるまで、ゆっくりと時間をかけて熱していく。取り出して叩く、叩く、叩く。2つのインゴットを使用してつくり上げるため、普段やっている時よりちと重い。


 鉄が馴染むまで叩いたら、今度は素延べの工程に入る。ここでエストックの形のすべてが決まってしまうため、ここも重要な工程の一つである。


 叩く、叩く、叩く。


 ホドに入れ、もう一度熱していく。


 叩く、叩く、叩く。


 気づけばもう何時間も素延べを行っている。剣身はとうにホドに収まる長さではなくなり、モーメントの影響で持ち上げるのも辛くなってくる。


 「師匠、手伝います」


 「ああ、すまんな」


 すかさず、近くで見ていた弟子が剣先を火バサミで挟み持ち上げる。しかし、ここは覇國鉄。あまりの重さにプルプルしている弟子。一向に上がらないエストック。プルプルする二子山。


 グレイト。


 「もう!師匠も持ち上げて下さい!」


 「ああ……すまんな」


 プンスコ怒っている弟子を見ながら、また打っていくのを再開する。火造りまでいよいよあと少しといったところで、一気に素延べを終わらせていく。


 火造りを行い、全体の形を整え、徐々に冷やしていく。冷えるまでの時間、少しの間店へと戻る。椅子に腰掛け、一息つくと、弟子がパタパタとかけてきてタオルを渡してくる。手と顔を拭えば、タオルに汚れがつく。本当によく出来た世界だ。


 「師匠、あれ誰の武器ですか?」


 「誰かの武器だ」


 「ふふっそうですか」


 何が楽しいのかわからないが、ニコニコしている弟子を横目に、最近手に入れたアイテム「老眼鏡」を使いながら依頼書を確認していく。これは納期がもうすぐだなとか、これを打つのは楽しみだなとか、そんなとりとめもない事を考えながら時間をつぶす。


 「親父!なんか馬の上で使える武器をくれ!」


 「こらダイナス!大声を出すな!迷惑だろ!」


 さて、こういう奴ほどすぐ売れっちまうもんなんだ。本当にタイミングが良いもんだ。

さて、新連載始めました。

傭兵のお話です。

まだ始めたばっかです。


「猟犬とお嬢様」

http://ncode.syosetu.com/n8245dd/

読んでくれよー

頼むよー

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