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リアローフオンライン  作者: Mr. Suicide
第四章 普通の鍛冶師
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獄氷鋼鉄のウォー・ハンマー

 弟子が戻ってきて、数ヶ月が経った。あれから弟子は以前にもまして気迫のある、力強い鍛冶を行っている。今までも充分真面目に取り組んでいたが、見られているこっちが気圧されるほど、作業を見つめている。今日は最近では珍しいぐらいに、客足が遠く店内も閑古鳥が鳴いている。

 弟子が掃除をしながら鼻歌を歌っているのが、作業場まで聞こえている。弟子の可憐な声が耳に心地よく、気分も晴れてくる気がする。


 今は暇つぶしがてらに、鍛冶場に火を入れて武器を作っている。普段あまり作ることが無いが、どうしても作ってみたくなり、シュタイナーに頼んでレシピを手に入れてもらった。普段自分が振るっている鎚が、武器としての特性を持ってウォー・ハンマーになる。なんとなく鎚を振るって戦鎚を作るとは、これいかにと思っていたが、最近の弟子を見て感化されたのか、自分の幅を広げたくなったのだ。

 ハンマーとは、もともと石で出来たものの事を言い。ウォー・ハンマーと言うと鉄製の物を思い浮かべがちだが、実際のところ戦闘用の鎚(槌)はすべてウォー・ハンマーとも言えるわけだ。今回は13世紀頃から見られ始め、槌頭が金属で出来ていて、ハンマー部と爪のように尖ったピック部のある、もっともオーソドックスなウォー・ハンマーだ。


 もともとは、歩兵用の武器として存在し、最も長いもので2m近くあったとされる。金属製の全身鎧が流行した頃に、全身鎧に対抗して生まれたため、ハンマーでの打撃は内部まで強烈な衝撃を与え、ピックでの打撃はその鎧を貫くほどの威力があった。肉体の露出を極限までに抑えた全身鎧の前に、通常の剣では戦い辛かった。400年近い間使用されていたことが、金属製の鎧に対し有効なこの武器の優秀さを物語っている。

 更にこの武器の槌頭を大きくなると、ホースマンズ・ハンマーと呼ばれ、その名の通り騎乗して戦う騎馬兵の武器へと変化する。爪の部分が細長く、まるでピッケルのようになるとウォーピックと呼ばれ、本来まったく別の武器ではあるが、同じような効果を持った武器となる。


 今回は獄氷鋼鉄と言う、最上級金属を鍛え上げ武器に仕上げる。最上級金属は、上級金属に鍛え上げたインゴットを、更に他のアイテムと合わせて鍛えることにより生まれる金属である。この金属は意外にも扱いは難しくない。上級を++まで鍛えられるなら、同じような要領で++まで鍛えあげることが出来る。しかし、それ以上に難しい事がある。それは、特殊な鍛冶道具の調達だった。

 上級鉱石をある程度打てるようになった頃、一通のメールが届いた。差出人はゲーム内に名前だけ登場する、伝説の鍛冶師だった。内容は、いわばクエストの始まりを告げるもので、様々なアイテムを取りに行き素材を集め、不慣れな錬金を駆使しホドを作り、頭が痛くなるほど複雑な彫金を施し魔術をかけ、極めつけは頭がおかしくなりそうなほどの量のインゴットを鍛えて新しい鍛冶に備えた。備えさせられたともいう。


 それにより、今作業場には2つのホドがあり、通常の「ホド」と、上位互換の「幻想のホド」が並んで存在している。作業場の拡張を行って、ついでに棚を増やし作業台も広くして、段違いに作業がしやすくなっている。まあ広くなったせいで、狭い空間における弟子とのハプニングの頻度が減ったのは残念だが、鍛冶をしている最中にも、弟子の揺れ動く2つの情熱が目に入り、非常に眼福なのでよしとする。

 幻想のホドに灯る火は、文字通り幻想的な色だ。青のような、白のような幻想的な色をしている。しかし、一度鍛えだせばその金属によって様々な表情を見てくれる、意志を持っているかのようなホドだ。獄氷鋼鉄を熱する炎はより一層青白く、冷たさすら感じそうな程、冷徹な雰囲気を放っている。魔力結晶石をはめ込むことによって動くこのホド、その中からウォー・ハンマーの槌頭を取り出す。炭で起こした火で炙っていた時と全く違う、その真っ白な姿に心を奪われる。ピックの部分をひたすら叩いていく。鋭利な先端が更に凶悪に、尖っていく。今回は持ち手であるポールの部分も、金属で作るつもりでいる。本来はそのようなことはしないが、この武器は店のショーウィンドウに飾るつもりでいるので、実用性は度外視している。

 ハンマーの部分は、外周にメイスと同じような装飾を入れていく。ハンマーの打撃部分の中心を叩き、凹ませ外側が板状になるように成形し、板状の部分に装飾を施す、イメージとしては魔王の持っていそうなウォー・ハンマーである。

 ポールの部分はすでにミスリルで作ってあり、バット(石突き)の部分には重國鉄をあしらいバランスをとる役目を果たす。もちろん硬ければ硬いほど威力が増す、というのも理由だが。

 最上級金属独特の焼入れを行ったあとに焼戻しをする。ミスリルや聖銀とは違う、光沢のある白銀、まるで凍っているかのような槌頭が出来上がった。ミスリルのポールとあわせ、ホドの炎をうまく利用して溶着していく。

 出来上がったウォー・ハンマーを磨き上げ、ショーウィンドウに飾ろうかと重い腰を上げると、随分と店が騒がしいことに気付く。


 「お断りします!」


 「いいじゃん! 俺らのクランで専属鍛冶になってくれたら、素材を集めとかも全部やっちゃうよ!」


 「何度も言っているように、私はこの店の従業員です! 他に行くつもりはありません!」


 「俺ら有名クランだぜ? その俺らの専属になれたら、アリスちゃんも有名になれるよ?」


 どうも質の悪い客が来ているようだ。リアローフオンラインでは鍛冶師や錬金術士など、生産職をクランの専属に雇うことができ、救済措置としてNPCでも条件を満たせば、専属として雇うことが出来る。アリスは美人なので、この手の勧誘は非常に多く、よく店の中で誘われているが。今回のは随分としつこい奴のようだ。


 「あなた方と有名になんかなりたくもない! 私はここで師匠と一緒に有名になりますので、お気遣いなく!」


 「おいおい、あんなショボくれたおっさんとなんか無理だって! 俺らのほうがイケてるぜー?」


 「呼んだか?」


 ショボくれたおっさんという言葉につい反応し、思わず声が出てしまった。ショボくれたおっさんと言うのは、非常に言い得て妙だろう。今俺の装備は昔風なシャツに、革のズボン、鍛冶をしていたせいでオールバックの髪は乱れ、疲れから眉間にしわが寄っているだろう。しかし、皆時が止まったかのように動かなくなってしまった。そんなにショボくれたおっさんオーラがすごいのだろうか、ちょっと凹んでしまう。

 何があったのかを聞くために弟子の方に近づく、そういえばウォー・ハンマーを持ったままだったことに気付き、持ち歩くのに楽なので肩に載せるように片手で担ぐ。まあ何があったも何も見たまんまだろうが。


 「ヒィッ!!」


 「ッズラかれ!!」


 数人いたプレイヤーは一気に飛び出していった。全員引きつった顔をしていたのは、この外見があまりにもやばかったからだろうか。そんなに酷い外見だろうか、いぶし銀をイメージしたこの外見が、まさか人に引かれるほどのものだとは思わなかったし、気付かなかった……。


 「師匠、ありがとうございます」


 「気にするな」


 まあ、追い払ったことには変わりはないが。しかし、心境は非常に複雑だ。自分の外見を見て引かれるのは、リアルではないにしろショックである。


 「よかったのか?」


 「はい! 私は師匠とずっと鍛冶をしたいんです!」


 嬉しい事を言ってくれるものだ。照れ隠しに頭をひと撫でして、出来上がったウォー・ハンマーをショーウィンドウに飾る。出来ることなら、このままアリスにいて欲しい気もするが、そのうち自分の店を持つことになるだろう。その時までは、一緒に鍛冶をしていきたいものだ。そしてできれば、尊敬できる師匠でもありたいものである。


 後日、筋肉と書いて馬鹿と読むダイナスが、あのウォー・ハンマーを欲しがって頼み込んできたが、あれは誰にも売らんとつっぱねた。あんなにかっこいい武器を売るなんてとんでもない。

さて、色々また勘違いしてそうですね。

そしてジョンは思い込みが激しい。

汗かいてるナイスミドルって、いいよね……。

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