表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リアローフオンライン  作者: Mr. Suicide
第二章 NPCの仕事
17/47

師匠とお仕事

 鍛冶屋ジョンハンマーの店主である師匠に、ダマスカスのレイピアを四本という依頼が来た。

依頼主は「エリーゼ武具店」の経営をしている四人で、元々腰に下げる武器を統一しておく人達らしい。

今までも何回か依頼が来ているらしく、綺麗な女の人から何時もの事の様に依頼を受け取っていた。

その時、やたらと師匠にボディータッチが多く、少々不機嫌になってしまった。


 互に名前を呼び合う程の仲で、更に過度なスキンシップにも慣れているような態度、しかもエリーゼさんがこちらを見て微笑んだのだ。

真っ赤なロングの巻き髪に形のいい眉、目は意志の強さを現す様にきつめで、しかしその中にも優しい光が灯っている。

体型はスレンダーで、私のように出過ぎて邪魔になるような体ではなく、モデルのようにスラッとしていて憧れてしまう。


 ダマスカス鋼を作り出す為に何度も鉱山と店を往復し、その間ずっと師匠の後ろをついて回った。

そこで気づいたのは師匠の努力の凄まじさで、朝から晩まで鍛冶に関する事を延々とやり続けるという集中力に、何度も何度もハンマーを振っても尽きないスタミナに驚かされた。

ダマスカス鋼は、ウーツ鋼にバナジウム鋼を坩堝に入れて、そこに妖怪樹の枝を加えて熱することで作ることができる。

最初に一度だけウーツ鋼とバナジウム鋼を合わせて鍛えて失敗したが、その時に「やはりか」と一言つぶやいて、直ぐに坩堝に入れて熱する加工へと移った。

一体どこまで知識を持っているのか、少なくとも私は勝てないだろう。


 最近師匠は私にも仕事を任せてくれるようになって「お前もようやく鍛冶師として一人前だな」と言われた時は胸がいっぱいになった。

まあその後「まだ技術は二流だがな」と言って、何時も通り薄い笑いを浮かべていた。


 師匠がダマスカス鋼の上質なインゴット++を取り出す。

ここまでの鍛錬は苛烈を極め、ひたすらに熱せられたダマスカスのインゴットにハンマーを叩きつける後ろ姿は、どこか鬼気迫るものがあった。

ここ数日間はインゴットをひたすらに鍛える毎日が続き、新しい技術が生み出される瞬間に立ち会えた感動はひとしおだった。

私は見ていることしかできなかった、今はその事実が悔しかった。


 師匠がナックルガードを作り始め、その見事な曲線に目を奪われる。

鍛冶は派手さなどはなく、ひたすらに地味な作業の繰り返しだ。

しかし、私の目に写るダマスカス鋼は、まるで魔法のように形を整えられていく。

複雑な形にダマスカス鋼を曲げていく様は、ダマスカス鋼が師匠の指示に従っているかのようにも錯覚してしまう。

普段作るよりも時間をかけ、じっくりとダマスカス鋼と向き合っている師匠は、厳しい表情の中にもどこか楽しそうな雰囲気があった。


 剣身を四本打ち上げ、ようやく私にも出番が回ってくる。

師匠が休憩がてら食事や、店の事務処理をしている間にある程度だが磨き上げていく。

師匠が休憩を終えると、今度は師匠自ら磨きへと入り、私の後を引き継ぎ磨き上げていく。


「綺麗・・・」


「これぞダマスカス、だな」


 師匠の調整が入り、更に磨き上げられたダマスカス鋼の剣身は、神秘的な木目状の模様を生み出し存在感を放ってて、思わず剣身に見とれてしまう。


 師匠が彫金の道具を準備し、とうとう最終段階の作り込みに入る。

一つ一つにしっかりと、自分の全てを注ぎ込むかのように、彫金を施していくのを背中側から手元を覗き込む。

いつも師匠は手を抜かずに、最高の仕事をしようとする人だし、事実今までどんなにランクの低い剣でも真剣に取り組む人だ。

今回頼まれた依頼も一緒だとわかっているし、その四人の女性に特別な思いがないということも、私が一番分かっている。

しかし、なんだか師匠が女性のために、と考えるとすごく不快な気持ちになる。

こんなんじゃ鍛冶師としてダメなのに。

師匠から頼まれたポメルへの彫金をさっさと済ませて、師匠の方へとよっていく。


「完成だな」


「はい、やっと完成ですね」


 失礼な態度をとってしまった。

それをごまかすように最終チェックをする、絶対に呆れられたことだろう。

最終チェックを終わらせ、背伸びをして体を伸ばす。

少し体に残る疲労感がなんとも心地よく、ひと仕事を終えたのだと実感する。


 師匠は最後の彫金を剣身に施し、私は定位置になった師匠の隣でその技術を盗もうと、食い入るように見つめる。


 最後の彫金も終えて待つだけになり、まだヘソを曲げている私が、なんだか子供の頃に戻ったように感じる。

しかし、それもこれも師匠が悪いのだ。

ここ一週間は忙しかったのもあるが、あまり鍛冶の技術についての講義はなく、ひたすらに女性の為に武器を作っていたのだから。


 そんな私を見て、師匠には珍しい困った顔で笑っていた。


その後、出来上がった剣をエリーゼさん含む四人組が取りに来た。

その時にもやはりエリーゼさんは師匠の腕にに抱きついてスキンシップを取り、その時思わず声を荒げて咎めて、私も反対側の腕に抱きついてしまった。


 その後に自分のしたことの恥ずかしさにベットで転げ回ることになってしまったが、どこか心が温かく、また明日から師匠から技術を盗もうと決意を新たにした。

師匠の腕の逞しさが、いつまでも頭を離れなかった。

日間ランキング五日間連続一位です。

最早これは何かの陰謀ではないかと思っております。

読者の皆様、本当にありがとうございます。


今回は弟子の嫉妬回です。

本人は、修行の時間を奪われるからといっていますが、真実はわかりません。

ちょっと無理やりだったかな、と反省です。


ご感想、誤字脱字の報告お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ