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リアローフオンライン  作者: Mr. Suicide
第二章 鍛冶師の仕事
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バナジウム鉱石

 ダマスカス鋼、今は失われし古の技術。

日本刀における古刀と同じく、技術にも品質にも劣るはずの時代における鉄鋼技術が、今の技術では再現不可能であったりする、文字通り失われた技術だ。

ダマスカス鋼はインドのウーツ鋼が発祥とされ、その製法は科学技術が確立している今の時代でも未だ完成は見ていない。


 リアローフオンラインにダマスカス鋼は存在しない、なら何故このような事を言っているのかわからないことだろう。

しかし、聞いて欲しいことがあるのだ。

ウーツ鋼はこのゲーム内では存在している、つまりダマスカス鋼を作ることができるのではないか、そう考え俺は色々な本を読みあさりひとつの答えにたどり着く。

バナジウム鉱石を見つけることが出来れば、もしかすればダマスカス鋼が作れるのかもしれない、もしくはバナジウムが含有している鉄を見つけると言うのも一つの手だが、今までそのような注釈が着いた鉄を見た事がない。

ともすれば、あるかもわからないバナジウム鉱石が産出する鉱山を探すしかないのだが、このゲームに鉱山は大量に存在するわけで。

最近また友人が坑道になりそうな洞窟を見つけたらしい、彼はよく情報をくれるので非常に助かる、今回は産出するのだろうか。

まぁ本当にあるのかもわからないが。


「弟子」


「はい、どうしました師匠?」


 ジョンハンマーはあの日から少し賑やかになった、エルフである弟子が弟子になったからである。


「今日の夜は暇か」


「えっと・・・はい特に用事はないです」


「そうか、鉱山に行く準備をしておけ」


「買わないんですか?」


 まぁ最もな疑問だろう、しかし鉱石にも大中小のサイズがあり、大を多く産出する鉱山を選び自分で行ったほうが安く上がるし、何より色々発見もある。


「鉱石を掘ることで見える物もある」


「っはい!!わかりました!!」


 うんいい笑顔だ、ちゃんと安く上がるということに気づいてくれたのだろう、今日の夜の為に準備をしておかなければ。


「サンドウィッチを作っておきましょう!」


 どうやら弟子も楽しみにしてくれているようだ、確かに未探索の鉱山はモンスターも沢山いて素材が手に入るし、そのモンスターから時折今まで欲しかったが手に入らなかった素材が手に入ったりするので重宝する。

鼻歌を歌いながら全く使われていなかった台所で料理をする弟子を横目に見ながら、カウンターでアイテムボックスの整理をする、今日はいい材料が出るだろうか、バナジウム鉱石があって尚且つ産出するといいな、などと考えながら土曜日の昼下がりは過ぎていった。



 夜になり店を閉めて外に出る、鎧は少し前に作った「剣聖将軍の鎧シリーズ」に「剣聖紋章のマント」、武器は「ヒヒイロカネのフランベルジェ」ヒヒイロカネは上鋼鉄に火竜のウロコを合わせて鍛え「火鋼鉄」をつくり、さらに魔鉱物であるアダマンタイトを合わせて鍛えあげると生まれる鉱物である。

パッと見は「火鋼鉄のフランベルジェ」に見えるが、近くで見ると剣身が緩やかに揺らいで見える。


「っさて行きましょう師匠!」


 弟子は狩人のような格好をしている、それは俺が作った防具で「オーガキングのライトレザーアーマーシリーズ」に「三本交差剣のマント」武器は「精霊樹の弓」と「聖銀のダガー」

なんといっても見所は体のラインを強調するアーマーだろう、突き出した胸と尻が強調され細い腰のラインを一際目立たせる。

俺個人としては女性のクビレから腰にかけてのラインが、一番美しい部分であると思い三日間を費やし弟子のために作った鎧だ。


「どうしました?師匠」


「いや、成長したと思ってな」


 つい口をついて出るセクハラ発言、いやほんとゲームマスターへの通報とかはマジ勘弁、うかつでヤバすぎる一言を口にしてしまった。


「!・・・ありがとうございます!」


 嬉しそうに弟子は笑っている、どうしたのだろうか、もしや弟子は痴女なのだろうか、若干引き気味にポータルへと歩いていく。

夜を纏った空には、ゲームとは思えない美しい月が浮かんでいた。


 新しく発見された洞窟へと潜っていく、ゴツゴツとした岩が多く整備されていない洞窟を歩く、フランベルジェで見たこともないモンスターをなで斬りにしながらずんずん奥へと進んでいく。

こんなに怖いモンスターと、皆毎日戦っているのだから本当にすごいと思う。

俺はシュタイナーやエリーゼが言っていた攻略組とやらとは関係を持っていないし、俺自身そんなに他人と戦ったことがない為尚更自分の実力というものが測りづらい。

そんなこんなしているうちに開けた場所へと抜ける、こういう場所には大概敵がたくさんいて、今回も例に漏れず敵が大勢いる。


「弟子!矢を打て!」


「っ・・・はい!!」


 弟子が俺に当たるのではないかと躊躇していたようで、その背中を押してあげるために声を張る、無口が発動している状態でこんなに声を張ったことはないかもしれない。


「いきます!!」


 後ろから矢が飛んでくる、当たろうが俺の鎧の前では対したダメージにはならない、だからこそ完全に前を向いて戦うことができる。

ミノタウロスを黒くして羽を付けたようなモンスターが、目の前で両手持ちのバトルアクスを振り上げている。

まずいと思った瞬間モンスターの目に矢が飛来する、怯んだ隙に首に向けて剣を走らせ横に迫っていたゴブリンを赤黒くしてもっと邪悪な感じにしたモンスターを切り捨てる。

戦闘が終わるとすぐに素材を回収する、黒いミノタウロスは「デーモンファイター」で赤黒ゴブリンは「レッドインプ」というらしい、それぞれから素材を取りながら周りを見回す。

やはりこの部屋には採掘ポイントがあるようだ、早速採掘をはじめるためにツルハシを取り出す。


「私がやりますから師匠は休んでてください」


「そうか・・・ありがとう」


 横で採掘をする弟子を眺める、振るわれるたびに揺れる二子山に目がクギ付けになる、眼福なり。

採掘は1パーティーで一人が纏めてやることができる為、わざわざ一人一人がカンカンとやる必要はない、この機能を使うのは初めてだ、大概一人で採掘に来てしまうから。


「師匠終わりました!」


「っよし次に行くぞ」


 そこからの同じことを四度繰り返した頃、俺たちはデカイ扉の前に立っていた、洞窟の奥まで来ると大体あるこの扉。

開ければ中にはドラゴンがいたり、でかい狼がいたりオーガキングがいたりと様々なモンスターが一匹で出迎えてくる、今回もそれだろう。


「行くぞ」


「行くんですか!?」


「当たり前だ、鍛冶師だからな」


 はい、また滑った、盛大に豪快に滑った、空気が凍るというのはこういう状況のことだろう、身内であればある程度受けると言ったな、あれは嘘だ。まったくうけない。

このギャグは封印しよう、弟子は中身も女で容姿も髪を少し長くしただけでいじっていないといっていた、もしかしたら美容に悪いから今日は早く寝たいのかもしれない。


「さっさと殺ってさっさと帰るぞ」


「わかりました!」


 先ほどとは打って変わって明るい声で返事をしてくる、どうしたのだろうかやけくそにでもなっているのだろうか。

とにかく弟子の美容のためにもさっさと中にいるのを倒さねば、あの美貌が失われてしまうなどあってはならないことだ。


 中には黒くてでかいのがいた、ここまでにいたデーモンを何倍にも大きくし、顔は異形の生物、人を三人束にしたかのような太い腕には二本の斧が握られている。

鍛え上げられた肉体をブーメランパンツで包み部屋の真ん中に立っている、ブーメランパンツにすこし笑ってしまった、そのパンツともっこり具合は反則だろう。


「回復を頼むぞ」


「え!」


 一気に突っ込んでいく、鍛冶ではHPとVIT、STRが根強く関わってくる、つまり基本的にこの三つに振って行く、そのためガチガチの殴り合いが一番効率がいいのだ。

二つの迫る斧を時に弾き時に受け流し、たまに当たることもあるがそんなことになりふり構わず剣を叩きつけていく。

今の戦い方を見たシュタイナーやエリーゼは「お前だけ別ゲー」と言って呆れていた、しかしこの戦いも奥が深い。

この戦い方をしている時にアシストが実は働くのだ、ここを通るであろう場所を斧が走っていく、それを剣で弾き体制をくずす。

体制が崩れたところで回転しながら足を攻撃、ダウンを取るためのこの動きは何度も練習して覚えた動きだ、洞窟を教えてくれた友人曰く、武器を弾くのはパリィと呼ばれるありふれた技術らしい。

ダウンした敵の頭に斬りかかる、会心の一撃が出る予感がする、一気に世界が遅くなりどこに剣を入れればいいのかビジョンが見えてくる。


 その刹那世界は加速し元のスピードを取り戻す、イメージした通り剣を振り抜く。


店に帰り着き、ドロップ品をまとめている時に弟子が工房の中から飛び出してくる。


「師匠!バナジウム鉱石ありました!!」


「ほんとか、やはりな」


 今俺は極悪な顔をしていることだろう、少し目つきの悪い俺が薄く笑ったり微笑むと、極悪な笑顔になってしまうらしく、よくシュタイナーやエリーゼに怒られている。


「っさて、今日はここまででいい、俺はこれからバナジウム鋼石を使ってダマスカス鋼を・・・」


「私も残ります!!」


 こちらにすごい勢いで寄ってきて、近すぎる位置で止まりそんな宣言をする。


「わかった、好きにしろ」


「はい!師匠!!」


 気づけば日付が代わり、もう夜が明けようかという時間まで二人でうなっていた、今まで一人でやってきたことも、二人でやると案外楽しいものだ。


 後日ダマスカス鋼は無事完成した。

その時、あまりの嬉しさにジョンが横で見ていた彼女を抱き上げながら喜びを示し、ふたりして少しの間ギクシャクしてしまうのだが、

それはまた、別のおはなし。

なんだかとんでもない事になっています。

日刊ランキング29位

ジャンル別「ファンタジー」21位

更にお気に入りは300件間近まで伸びていました。

何が何だかちょっとわからなくなっています。

ランキングに乗ることが全てではないですがそれでもやっぱり嬉しいものですね。

これから先ランキングに乗るようなことはなかなかないだろうけど、入れるように頑張ろうと思います。

本当に読者の方には感謝の一言です。


感想、誤字脱字の御報告等お待ちしております。

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