Case:03 「野郎二人が動き始めるようです。」
あれから二時間が経過し、バイクの使い方(道交法とか完全無視して、本当にバイクを動かす為だけの説明)を大矢に教え込んでいた。
原付に乗っていただけの事はあり、一通り教えてから実践させてみれば、ものの三十分余りで普通に乗りこなしてやがった。
しかし、舗装された道路ではなく草原という事も有り、念の為に大矢の練習がてらトロトロと走ってたんだが……
「ヒャッハー! このバイク最高だぜぇ!!」
「……ありえねー」
1300ccの白バイを奇声を上げながらウィリー走行させる大矢の姿が。
こいつ、実はマッド・マックスの世界からの転生者じゃなかろうか?
Fake Cop Story
Case:03 「野郎二人が動き始めるようです。」
――タン
「うーむ」
――タタン
「あ、当たった。つー事は、こんな感じか?」
――タン、タン、タン
「おー全弾命中。案外、扱いやすいなこれ」
奇声を発しながら白バイをぶん回す大矢を放置し、木に向かってP-230JPをぶっ放す。
拳銃と言えば、反動が凄いってイメージが有ったんだが、実際に撃ってみるとそう大したもんじゃなかった。
ベルムには入れなかった(入ろうと近くまで行ったが、門が閉じられてしまっていてどうしようもなかった)事だし、こればかりはどうしようもないからと少し離れた場所へとやってきた。
周りは一面草原で、所々に木が立っている程度なので視界は良好。
一応、猛獣とかに遭遇したら洒落にならんので、拾ってきた木にライターで火を付けて置いた。
近場に湖も有ったので、万が一火事になっても大事にはならんだろう。多分。
「おー様になってんじゃねーか、滝本」
「お前も練習しとけよ」
咥えていた煙草に火を着け、右手で拳銃を構える。
――タン
「おぉ、凄ぇな」
「ガキの頃からエアガン振り回してたし、大学じゃぁ射撃部に居たからな。なんとなくコツがつかめりゃ、こんなもんだろ」
「成る程ねぇ……じゃ、俺もやってみますか」
そう言うと、大矢は白バイに跨ったまま左手で構える。
「オイオイ、いきなり片手撃ちか?つーか、お前は右利きだろ」
「左じゃねーと走りながら撃てんだろうに。ま、見てろって」
そう言うと、大矢は白バイを急発進させ的である木まで加速する。
木とすれ違う寸前でブレーキを掛け、白バイを横滑りさせながらもその姿勢を維持したまま左手の拳銃で木を狙い撃つ。
――タァン
命中。木片が舞い上がると同時に大矢は、再びアクセルを回し動き始める。
――タァン
再び命中。この野郎、映画の見すぎだ。
「どうよ?」
「どうよって……お前、本当に何者だ?映画の中でしかあんなん見たことねぇぞ?」
「しゃーねぇだろ。滝本と違って、こんな遠くから撃って当てる自身ねーし」
「遠くって言ったって、たかが100m程度だろうが」
「……滝本、お前はもう少し常識ってもんを知った方が良いと思うぜ?」
お前だけには言われたくねぇよ!
その後、大矢が『街に入れなくても、村なら何とかなるんじゃね?』と言いやがったので、PDAで調べてみれば直ぐ近くに村があることが判明。
もっと早く言いやがれ、ダボが。
「時計だとまだ六時だが、結構暗くなってんなぁ……気ぃ付けろよ、大矢?」
「分かってんよ――って、ヲイ!あれみろ、あれ!」
一旦、白バイを停めて大矢の指差す方向を見る。
「ありゃぁ――盗賊って奴か?」
「見てぇだな、馬車が追いかけられてやがる」
土煙を上げながら疾走する馬車を、若干の距離を開けながら5頭の馬がその後を追いかけている。
馬に跨ってるのは、革鎧を着た小汚い連中で、手にした弓で馬車に向かって攻撃を仕掛けていた。
「あの馬車、こっちに向かってきてねぇか?」
「着てるな、確実に。あぁ、ライト着けっぱだから気が付いたのか?」
ホルスターからP-230を取り出し、左手に握る。
「で、どうするよ?」
「決まってんだろうが。この制服着てて逃げるこたぁ許されねぇよ!」
「じゃ、やるとしますか?」
白バイのアクセルを吹かし、タイミングを見計らう。
「行くぞ、大矢! ――これより現場へ急行する!」