プロローグ
プロローグ
白稜学園の2年B組に在籍中の落ちこぼれたる俺は、誰も残っていない教室で目を覚ました。
2年からの転校生はこの学園では非常に珍しい。
それというのも、この学園にはパートナー制と言うものがあり、一年の頃から同級生とパートナーを結び共に学び成長するという独特の校風があるからだ。
そんな学園に2年から編入してくる者はそうそういないだろう。
ただし、中には上級生とパートナー契約を結ぶ人もいる。
卒業後に新しいパートナーを見つけなければならないわけだから非常に少なくはある。
その人達の為に学園はパートナーの人数制限を設定していない。
一年の時は1名と限定されているが、卒業生と組んでいた人を考慮に入れ、二年からはその限定数が解除される仕組みになっている。
だから編入ができるわけだが、クラスにいた仲間と違い知らない転校生をパートナーにしたがる者はいない。
今組んでいるパートナーとの関係がギスギスしてしまう可能性があるからだ。
試験にしろなんにしろ、文字通り絶対の信頼を寄せられるパートナーが必要な学園なのだ。
この学園には本物のお嬢様やお坊ちゃまが通っており、多くのパートナーを持つのは大抵彼らだ。
そして彼らはこの学園で組んでいたパートナーを執事やメイド、護衛といった形でそのまま雇う場合が多い。
将来の就職活動先にもなる場合があるわけだからよそ者は嫌われる。
だからやっぱり転校生は珍しいし、嫌われる傾向にある。
成績が悪く、運動能力も低い俺こと山田一郎ならば当然だろう。
教師が先日言っていた言葉を思い出す。
「成績もダメ、運動もダメ。今のあなたは執事も護衛も無理。次の試験までにパートナーができなければ転校早々で悪いけど退学になるから。」
期日はもう3日しかないのだが、パートナーができる気配は今のところない。
(誰も起こしてすらくれないしな)
外は既に闇が広がっていた。
ふと時計を見る。
時刻は17時5分
そういえば、今日約束があったのだった。
「17時半に商店街で買い物に付き合うこと。いいわね!」
今朝聞いた姉の笑顔と嬉しそうな声が蘇ってくる。
8年振りのこの街への帰郷ともなれば気分も上がるのだろう。