表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の檻  作者: 麗夜
74/150

第74話「王の呼び出し」

翌日、国王からエレナに呼び出しがあった。

謁見室に入ると、国王が一人で座っていた。側近も近衛兵も、今日は最低限の人数だけだ。

「エレナ・コール」

「はい」

「セルディアからの婚約打診については、聞いているか」

「昨日、殿下から伺いました」

国王が少し間を置いた。

「率直に話す」

「はい」

「セルディアとの婚約は、この国にとって重要な意味を持つ。東方との関係を安定させ、ガルデニアとの問題で生じた外交上の隙を埋める。それはルシアンが一番よく分かっている」

エレナは黙って聞いていた。

「お前のことは——評価している。この宮廷に来てから、お前が果たした役割は大きかった。ルシアンが変わったことも、分かっている」

「……ありがとうございます」

「しかし」

国王が、静かに言った。

「しかし——王族の婚姻は、個人の感情だけでは決められない。それは、お前も分かっているはずだ」

エレナは少し間を置いた。

「……はい」

「ルシアンは、お前への気持ちと、国への責任の間で揺れている。そのまま揺れ続ければ——どちらも失う可能性がある」

「陛下は、私に何を求めているんですか」

国王が、エレナを見た。

「お前が——静かに、ルシアンの傍を離れることが、最善だと私は思っている」

部屋に沈黙が落ちた。

エレナは、その言葉を正面から受け取った。

静かに、離れる。

「陛下は——ルシアンはこのことを知っていますか」

「知らない。これは私の判断だ」

「……ルシアンが、自分で選ぶことはできませんか」

「選べば——お前を選ぶ。そしてセルディアとの関係が壊れる。それはこの国にとって、大きな損失だ」

「ルシアンの気持ちより、国の利益が優先されるんですか」

国王が、少し苦しそうな顔をした。

「……私も、それが正しいとは言い切れない。ただ——王族として生まれた者が負う重さというのは、そういうものだ」

エレナはしばらく黙っていた。

「……考える時間をいただけますか」

「ある。ただ——長くはない」

エレナは一礼して、謁見室を出た。

廊下に出た瞬間、足が止まった。

壁に手をついて、しばらく動けなかった。

(静かに、離れる)

その言葉が、頭の中で繰り返された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ