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『魔法学院のオトコの娘』 ~女子しか魔法を使えない世界でどうしてぼくが魔法学院に!?~  作者: 十草 九斗


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6.帝国の姫

 買い出しの翌日、新入生たちは寮の隣にある講堂に集められた。入学式なるものが今まさに行われているのだけど。


「貴方達は美しき花の蕾です。麗しき女神に選ばれしその才能は、修練と研鑽によってのみ花開しまう。このことを決して忘れてはいけません。奢ることなかれ。謙虚と努力のみがあなたたちを一流のプリエスタにするのです。」

 きっとこの眠気も神聖なる魔法のせいなのだろうか。先程から両の目の瞼が重たい。司祭の説教はその後も続き…

「女性にだけ使うことが許された神秘の力、それは女神様からの祝福に他なりません。来年からは時期聖女の選定も行われますが、貴方達一人一人がその候補でもあります。」

「そのことを自覚し、相応しい態度と行動を期待します」

「神々の祝福がわたしたちと共にあることを祈りましょう!」

 一同の祈りの言葉と共にようやく解放された。


「ふぁーあ、やっと終わったよ」

「随分と眠そう。そんなにつまらなかったかの?」

 咎めるように眉をひそめるエレネさんを見て慌ててあくびを嚙み殺そうとする。

「す、すいません……ああいう話はなんだか小難しくって……」

「そうかも。でも……きっと大切なことなの。あなたや私のように力を持つ人  は、その使い方を間違えてはいけないわ」

 王女様も似たことを言っていたことな… ふと考えてしまう、ぼくは…何のためにここにいるのだろうか、ここで魔法を勉強していれば、その答えがわかるのだろうか。



「そこの者!良いことを言うのじゃ!!」

「わっ!? なんです!?」

 突如として会話に飛び込んできたのは…

「……どなた?」

 エレネさんが伺うような目線でこちらを見てるけど…もちろんぼくだって知らない。

「ほう、我を知らぬというのか?ならば刮目するがよい!!」

 謎の動作(マントを振るがえすような)をした後、両腕を組んで名乗る金髪の少女。

「我こそがヴァルカン帝国第三皇女、レダ・エルネーゼ・フォン・ヴァルカなのじゃ!!」

「そしてボクは皇女様のハイパーウルトラメイド!ヤエちゃんだよ!」

 変な人がもう一人増えちゃったよ……メイド服を着ているけど、この子も学院の生徒なのだろうか。そんなことよりも、いま皇女って!?

「「……」」

 色々とあっけにとられて、ぼくたち二人が目を合わせて黙っていると、さっきまでの勢いはどこに行ったのだろうか、今度は謎の二人がオロオロし始めた。


「の、のう、ヤエよ…やはりこの自己紹介は失敗なのじゃ?」

「いやいやそんなことないってば!ボクの計算では、これでツカミはバッチシのはず」

 コソコソと喋っている言葉の端々が聞こえてくるけど、なんかこう、色々と間違っている気がする。

「行きましょうリアさん、この人たちとは関わってはいけないと思うの」

「ちょっと、ええ…」

 踵を返してこの場を去ろうとするエレネさん。作戦会議中の二人とエレネさんを見比べてオロオロとしてしまう。

「やっぱりドン引きではないか!!」

「友達を作るにはまずはフランクな挨拶がいいとおもったんだけどなぁ。」

「ほら、姫っちって普通にしてるとまともに友達が出来なさそうだし」

「我をぼっち扱いするでない!それにまだ入学したばかりではないか」

 二人で楽しそうだから、ぼくたちはいなくても大丈夫だよね……


「ええっと、私たちはもう失礼しても…」

「ああ、ちょ、ちょっと待ってぇ」

「待てなのじゃ。」


 結局二人に引き留められて自己紹介をすることになった。しかし驚いた、ヴァルカン帝国といえば大陸の東半分を支配する、大陸最大の国家だ。その皇女がこの学院にいるとは……

大国の皇女に下手に関わったら母国が滅ぶ、そんな噂が広まり、生徒から敬遠されているようだ。

(それはそれで問題になる気もするけどね…)

「貴族連中ときたら、我が皇族だと知ったとたんに血相を変えて…まるで話にならんのじゃ。学院の中では皆対等じゃというのに…」

 あんなヘンテコな挨拶をしていなかったらぼくだって緊張して、とてもまともな会話など出来なかっただろう……その意味では良い作戦だったのかもしれない。


「リアちんにエレネん、覚えたよ。これからよろしくねっ!」

そんな素晴らしい作戦を考えたのがこのヤエさんだ。メイド服を来ているがちゃんと魔法が使えるシュリスの生徒らしい。あと、リアちんってなんなんだろう……?

「こちらこそよろしくお願いします!」

「よろしくなの」

 エレネさんはさっきから随分と口数が少ないけど、もしかして彼女も皇女を前に緊張しているのだろうか。

「つまり、皇女様は友達をつくりたくて私たちに声をかけたということ?」

「ちょっとエレネさん!?」

 一国の皇女がそんなことを考えるわけが……と思ったが、レダさんの顔が赤くなっている。図星みたいだ。


「べ、別にそういうわけではないのじゃが……お、おぬし等がそうしたいのなら、我は構わんのじゃ」

「こら、姫?おとなしく、友達になってぇって頼みなさい!」

「皇女としての威厳がなくなっちゃうのじゃ!」

「この学院では皆対等じゃというのに…って言ってたじゃん。そんなんだとぼっちのままだよ?」

「我の真似をするでない!!それに我はぼっちなどではないのじゃ!!

「だって、だって我にはヤエがおるからな…」

「…もう、姫様ったら~ 大好き!!」

「我もなのじゃ…ヤエ!!」

 二人でぎゅっと抱き合うレダさん達。やっぱりぼくたちはいなくても良かったのでは……


「…だめだ、二人の世界に入っちゃってるよ…」

「行きましょうリアさん、授業に遅れるといけないわ」

「あ、待ってくださいよ!」

 向かうのは、学生寮から聖堂を挟んで反対側にある中央棟。記念すべき最初の授業がもうすぐはじまる。


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