表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRAVE GIRL  作者: 星菜 琉衣
3/9

第3話

今回もBL要素はなしです。


千影のライバル登場します。



(腹立つな~須藤の奴…っ)

煙草をくわえ道を睨み付けながら街中を歩いている千歳は、周りから見たら恐ろしい以外なんでもない。

さすがは最強の不良、《早瀬兄妹》の片割れ早瀬千歳は持ってるオーラが違うのか。

(どいつもこいつもあたしをからかいやがって…。)


『あいつ、お前のこと好きなんだよ。』


『俺が、千歳チャンの初めての男になってやろうか?』


『千歳さん、柊先生のこと好きなんですか?』


「好きなワケあるかァァァッ!!!」

今まで周りに言われてきた言葉が頭に悶々とよみがえり、側にあったポリバケツを持ち上げて電柱に叩き付けた。

通行人は目を合わせないようにそそくさと通り過ぎて行く。

そして、今の出来事を知らなかった騒ぎ歩いていた女子高生達が、千歳の腕にぶつかってしまった。

「いったぁ~、ちょっと気をつけろよ!」

そう言ってきた女子高生を横目でぎろりと睨み付けた。

「あァ!?」

「ヒッ…!!」

「ちょ、バカ!!湘凜の早瀬千歳だよ!!」

「は、早く逃げよ!!」

青ざめる女子高生達は殺気立った千歳の前から慌てて走り去った。

「そっちが気をつけろや!!」

「早瀬さーん。」

「あァ!?」

逃げていった女子高生達に怒声を浴びせている千歳は、名前を呼ばれ殺気立ったまま、その野太い声の方に振り向いた。

ガラの悪い学ラン姿の数十名の男達。

赤い髪やら金髪やら。体格のいい不良達が千歳の前に立ちはだかっていた。

といっても、千歳の身長も高いから、ほとんど変わらない高さの男ばかり。

千歳にとって怯える対象でもなんでもなかった。

「なにか用か。」

「早瀬千歳だな。」

「だったらどうしたよ?」

「ちょっとツラ貸せよ。」

「は?やだね。」

千歳は先頭の金髪に近づき、挑発するようにくわえていた煙草の煙を顔に向かって吐き出し、吸殻を投げつけた。

「あっづ!!なっ、なにしやがる!!」

「うるさいんだよギャーギャー。雑魚はとっとと消えな。」

「っ!!いい度胸じゃねえかゴルァ!!」

「力づくでも連れて行くぞ!!」

挑発につられた男達は、一斉に千歳に襲いかかった。


――――――――――……


カチッ…

「ふー…。」

煙草に火をつけゆっくり吐き出す。

全く無傷の千歳の周りには、地面に横たわりうめき声をもらしている金髪達。

一分もかからない、まさに瞬殺。

「骨がなさすぎんだよ。無駄な体力使わせやがって…。」

千歳は伸びを一回すると、投げ出された鞄を拾いその場を立ち去ろうとした。

だが、千歳の背の方からまた制止の声が聞こえてきた。

「待ってよ、千歳ちゃん。」

「…?」

その声に振り向けば、赤毛の学ラン姿の男が、背後に大勢の不良を引きつれそこに立っていた。

目だけでは数えられないほどの数。

ニコニコと笑顔を崩さない男は、千歳にとって聖と同じ部類に入るような雰囲気があり、その顔は千歳も見覚えがあった。

「…凪沙…。」

「あは、覚えててくれたの?嬉しいなぁ。」


東雲しののめ高等学校トップ。

つじ 凪沙なぎさ(18)

身長186㎝。体重63㎏。

赤の髪色に金のメッシュ。細身のモデル体型で、女顔。

とても早瀬千影の最強のライバルであり、

凶悪な不良校をまとめるトップには見えない甘いマスクの持ち主。

以前湘凜と東雲で権力争いをし戦争してから、

千影はライバル視し、千歳は苦手な相手とする。


「相変わらず可愛いね。」

「なにふざけたことぬかしてやがんだ。」

凪沙の言葉に眉を寄せ、煙草の煙をゆっくり吐き出す。

「こいつら、お前の仲間か?」

「うん。下っ端の下っ端くらいかな。やっぱり千歳ちゃんにとっては、準備運動にもならなかった?」

「…で、なにか用か?」

「…ん~、千歳ちゃんにっていうか、千影くんに…かな?」

「…千影に?」

「うん、そうそう。」

「……?」

笑顔の凪沙の背後についていた男達は、会話途中に鉄パイプや竹刀等の武器を手に千歳の周りを囲み始めた。

「…千影に用なんじゃないのか?」

「うん。でもさ、千影くんってバカじゃない?頭悪いっていうかさ。その反対、千歳ちゃんは大人だし話通じるかなと思ってさ。」

「…なんの話だ?」

「まぁそれは、俺達についてきたらゆっくり話してあげるよ。」

凪沙がにこりと笑った瞬間、千歳の背後に迫ってきていた男が頭上で鉄パイプを振り上げていた。

だが、もうとっくにその気配を感じ取っていた千歳は、すぐさま体の向きを変えその手首を掴む。

「っ…!!」

千歳は男の手首を捻り上げた。

ゴキッ、と変な骨の音が鳴り響き、男は手首を押さえ呻いた。

それを見ていた周りの男達が、思わず一歩後ずさった。

地面に落ちた鉄パイプを拾い上げ、千歳はそれを肩に乗せ煙草の吸殻を地面に落とした。

「…本当、お前も相変わらず汚い野郎だな。」

「あはは、褒め言葉どうもありがとう。」

―――瞬間、大の男達が千歳に一斉に襲い掛かった。

「うるぁ!!!」

男達の罵声の中、千歳は鉄パイプ一本だけで戦場を駆けた。

襲い掛かってくる男達を次々に殴り倒していくが、千歳といえどやはり《女》だ。

この数の男を相手に一人で対応が間に合うわけがない。

千歳の動きが少しだけ鈍った隙を見て、男の一人が千歳の背中に一思いに鉄パイプを振り下ろした。


ゴッ―――!!!


「ッ……!!?」

一瞬、息が止まった。

声にならない痛さに一瞬動けなくなったが、次の攻撃を仕掛けられる前に千歳はすぐさま手に持っていた鉄パイプで振り切った。

だが、明らかに背中に受けたダメージは大きいもので、千歳は思うように動けなくなってしまう。

その隙をみた男達は、本気で千歳を畳み掛けようと飛び掛ってきた。

腕を取られ二人がかりで動きを封じられる。

そのチャンスを逃すはずもなく、容赦なく千歳を攻め始めた。

「ッ……!!いっ、てえなぁっ!!!」

ちょっとした隙を見て、足を振り上げ前の男の腹を蹴りつけ、解放されれば背後の二人を張り倒す。

周りも呼吸を整えるため一旦千歳から距離を置いた。

千歳はふらつきながらなんとか立ち上がるが、片膝をついてしまった。

予想以上の疲労、背中の痛みに呼吸がうまく出来ない。

ぐらりと揺れる視界に、減る気配のない数の男達。

「ッ、さすがに…この数はやばいか…。」

千歳は血の混じった唾液を吐き出し、鉄パイプを拾いよろけながら立ち上がった。

男達もまた体勢を整える。

―――だが、その時だった。

「ぐぎゃ!!」

「うがぁっ!!」

千歳の背後から、鈍い音と呻き声が聞こえてきた。

前方の男達の顔が青ざめ、千歳の背後の方に全員視線を向けている。

何事かと振り向こうとしたその時、嗅ぎなれた男物の香水の香りが鼻を掠めた。

「よぉ、俺も交ぜろよ。」

「ッ…!!千影…っ!?」

千歳の頭に手を乗せにやりと笑った千影がそこに立っていた。

思ってもいなかった千影の姿に、周りがざわつき始める。

電柱に背を預け観戦していた凪沙が、千影の姿を見て面白そうに笑った。

「お前…学校、は…?」

「終わった。ていうか、いくらお前でもこの数はやべえだろ。」

自分達を囲む男達を見渡し苦笑いを浮かべて、千影は千歳の乱れた髪を直してやる。

そして、凪沙の方に目を向け声を投げかける。

「…凪沙。」

「…こんちは、千影くん。」

凪沙が男達を掻き分けて、千歳と千影の方に足を進める。

「お前なぁ、千歳にまで手出してんじゃねえぞ。お前の狙いは俺だろ?」

「あはは、相変わらずのシスコン。美しい兄妹愛だね~。」

「本当に卑怯だな。女相手に普通ここまでするか?」

「卑怯なんて、最高の褒め言葉だよ。ありがと。」

「…本当、SなのかMなのか分からねえな。」

「千影…。」

千影は千歳から鉄パイプを奪うように取り、後ろに押しやった。

千影は笑顔を崩さない凪沙に近づき、胸倉を掴んで低い声で凄んだ。

「てめえあの話千歳にまで持ち込んでんじゃねえぞ。」

「…千影くんがどんなに言っても聞いてくれないからでしょ。」

「しつけえな。てめえらの仲間になんか死んでもなりたくねえよ。」

鋭く眼光を光らせ睨み付け、乱暴に凪沙を解放する。

「いいんだぜ?ここにいる奴ら全員皆殺しにしたって。」

「ッ…!!」

本気とも取れる千影の発言に、男達は青ざめ後ずさった。

かつては東雲で大暴れし死人が出るくらいの勢いを見せた早瀬千影だ。

まともに相手したら勝てる相手ではない。

この人数でも、千影にとっては障害でもなんでもないのだろう。

「おい、さっきの威勢はどうしたよ?」

「くっ…!!」

「ちか、げ、やめとけ。面倒なことに関わるな。」

千歳はしゃがみこんだまま、千影を見上げて声を振り絞る。

凪沙は千歳に一瞥をくれ、少し黙ったあと、またにこりと笑った

「やっぱ、今日はやめとこうかな。」

「…はぁ?」

「……?」

凪沙の言葉に、千影は眉を寄せ千歳は首を傾げる。

「今日はもう飽きちゃった。まぁ、今日は千歳ちゃんに免じて退散しようかな。」

地面に転がり呻いていた男達も起き上がり、千影と千歳を囲んでいた男達はぞろぞろと凪沙の元に戻っていく。

「また来るね。千影くん。」

「チッ…もう来んな猫かぶり。」

千影が舌打ちをすると、凪沙は嬉しそうに笑った。

そして、千影の後ろの千歳にまた視線を向ける。

「―――じゃあ、またね?千歳ちゃん。」

「…ッ……!」

意味ありげに光った凪沙の瞳に、少し悪寒を感じた千歳は肩を竦める。

満足そうに笑みを浮かべた凪沙は、不良達を引き連れその場を立ち去った。

嵐が去ったような感覚に、千歳はどっと息を吐き出した。

千影が、鉄パイプを投げ捨て、ポケットから煙草を取り出して千歳に差し出した。

「どうぞ?」

「お、おお…どう、も…。」

差し出された箱から一本抜き出し、くわえた煙草に千影に火をつけてもらう。

千歳のより少しタールが重い千影の煙草は、疲労している今の千歳にはキツイ感じがした。

「お疲れ様。生きてるか?」

「…これが大丈夫に見えんのかお前は。」

「全然(笑)綺麗な顔が血まみれ。てか、武器持っててあの数は無茶だろ。逃げろよ。」

「うるせ。」

切れた口元から流れた血を袖で拭うと、べっとりとその血が制服の袖に滲んだ。

それを見て溜め息をつき、立ち上がろうと足に力を入れるが、背中の痛みに力が入らない。

「っ……。」

「どうした?」

「…悪い…腕引っ張って起こしてくれないか…?」

「あ?あ、ああ、いいけど…。」

千影は少し腰を屈めて、苦笑いで見上げた千歳の腕を引っ張り上げる。

だが、うまく立てずに千影の体にもたれかかってしまう。

「うわっ、ち、ちょっと千歳?お前本当に大丈夫か?どっかやられたのか?」

「…いや、ちょっと疲れただけ…。」

心配そうに眉を下げる千影を心配させまいと、千歳は苦笑いで誤魔化す。

「ちゃんと手当てして冷やせよ?顔腫れるぞ。」

「分かってる。お前、バイクか?」

「ん?ああ。」

「後ろ、乗せろ。歩いて帰る気力ない。」

「命令形かよ(笑)いいぜ、乗れよ。」

「さんきゅ。」

ふらつく足取りで千影のバイクに跨り、ヘルメットを被る。

「どうしてあたしが襲われたのかは今度ゆっくり吐いてもらうからな。」

「うっ…、はい…。」

千歳の鋭い言葉に苦笑いしながら、千影もヘルメットを被った。

「ほんじゃ、しっかりつかまってろよ。」

「へーい。」

千影は後ろに千歳を乗せ、家方面にバイクを走らせた。



「…早瀬千歳ちゃん…か。」

―――その姿を、凪沙が瞳を光らせて見ていたことも知らずに。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ