第八章:砂塵に沈む王国と黒の継承者
「ここが……砂の王国、ザル=ハミドか」
陽炎が揺れる灼熱の大地。城塞都市の遺構が、砂に半ば埋もれながらもそびえ立つ。かつて繁栄を極めた王国は、今はただの廃墟だ。
だが、そこに“星の気配”は確かにあった。
「第六の星印……“砂の星印”は、この地の地下にあると記されている」
エリナが古文書を読み上げる。
「しかし、それを護るのは“不死なる守護者”――《スフィラ》と呼ばれる存在だって……」
そのとき――不意に砂がうねり、巨大な蛇のような影が地中から現れた。
「来たぞッ!」
全身を砂で構成された、魔法生物スフィラ。瞳の中には、明らかに意思のような光が宿っていた。
「我ハ、星ノ封印者。選ばれざる者ヨ、去レ」
リオたちは剣・魔法・肉弾戦で応戦するが、スフィラの再生能力は常識を超えていた。炎でも風でも砕いても、砂はすぐに再構成される。
「このままじゃキリがない……!」
エリナが叫ぶ。
「砂は、崩れることで元に戻る。だったら――“構造”を破壊するしかない!」
リオは剣に《風と土》の星印を宿し、新たな奥義を放つ。
「《崩砂剣・彗烈》――!」
大地を抉る一閃が、スフィラの“核”を断ち切る。魔法陣が砕け、スフィラは静かに砂へと戻った。
胸元に輝くのは、第六の星印――《砂の星印》。
「これで……六つ目!」
その瞬間――空が黒く染まり、かの“道化”が現れた。
「いやいや、よくやった、勇者さまたち」
エンシュツシ。
仮面の男は、背後に《黒の継承者》の一人を連れていた。その人物が、仮面を外す。
「……!? レン……!?」
リオの叫び。そこにいたのは、リオのかつての戦友――レン。
彼の胸にも、黒く染まった“星印”が輝いていた。
「……すまない、リオ。でも俺は、“こっち”を選んだ」
「どうして……レン、お前まで!」
「“星を守る”だけじゃ、足りない。 星を“支配”して初めて、この世界は変えられる」
レンは仮面をつけ直し、黒の継承者として剣を構える。
「リオ、戦え。お前が進む道を証明してみせろ」
「……ああ。止めてでも、連れ戻す!」
二人の剣が交わる瞬間――砂嵐が吹き荒れ、空が震えた。
未来を賭けた“継承者同士”の激突が、始まった。