第七章:星を喰らう巨人と土の記憶
「……このあたりだ。“土の星印”が眠る場所は」
大地の果て、《ガルバン遺跡群》。かつて古代文明が繁栄したこの場所は、今では崩れかけた石柱と砂塵に覆われている。
リオたちは地面に埋もれた碑文の前で立ち止まった。
「“大地の守人、名をアスラ。七つの星を守る者の一柱”……?」
「この名前……聞いたことがある」
エリナが呟く。
「伝説の《星の巨人》……大地の星印を守る“機構生命”だって言われてるわ」
「機構生命? それって、つまり――」
「……魔力と機械で動く、意思を持った兵器よ」
そのとき、地鳴りが響いた。
「来るぞ!」
遺跡の奥から、巨岩のような腕が飛び出す。砂煙の中から姿を現したのは、全高十数メートルに及ぶ機械巨人――
《地の守護者 アスラ・グラント》
頭部にはクリスタル状のコアがあり、胸には「土の星印」が封じられていた。
「我、継承者ヲ、審判ス」
機械音声が空気を震わせ、両腕に装備された大剣が稼働する。
「問ウ。汝ノ意志ハ、星ノ未来ヲ紡グニ足ルカ」
リオは剣を構え、真っ直ぐに叫んだ。
「俺たちは、星を集めて、ただ守るんじゃない! この世界に残すんだ――未来のために!」
次の瞬間、アスラが動いた。
大地を震わせて巨体が迫り、大剣が空を裂く。その一撃は、風も魔法もはじくほどの重さを持っていた。
「くっ……! エリナ、ガルド、挟撃する!」
◆ガルド巨人の足元を駆け、土を抉りながら斧で膝関節を破壊しようとする。
「動きを止めてやる!」
◆エリナ高所に移動し、火と風の複合魔法《爆焔旋風弾》を巨人の目に叩き込む。
◆リオ星印の共鳴で発動した新技、《地裂・彗牙剣》。土の力を剣に宿し、コアの結晶へと一直線に突き進む。
「これが……星の力だッ!!」
三人の連携攻撃がついにコアを打ち砕き、巨人の動きが止まる。
「審判、完了……継承者ノ資格、認ム」
アスラの胸から土の星印が浮かび上がり、リオの手に渡った。
「これで四つ目……」
だがそのとき、空間が裂けるような歪みが発生した。
「なに……!?」
遺跡の上空に出現したのは、巨大な黒いゲート。そこから現れたのは――《エンシュツシ》と名乗る謎の存在。
仮面をつけた道化のような姿。彼は掌を開き、すでに手の中に一枚のチケットを持っていた。
「“星集め”もなかなか楽しそうだね。 だが、そろそろ“幕引き”を意識してもらおうかな?」
彼の背後に、複数の《黒の継承者》らしき影が浮かび上がる。
「“星の継承”とは、本当に救いなのか――それを証明する、最後の《賭け》を始めよう」
道化は不気味に笑い、こう言い残す。
「FINAL JACKPOT SHOW:開演まで、あと“7日”」
そして黒のゲートが消えると同時に、遺跡は静寂に戻った。
リオたちはその場に立ち尽くす。
「……どういうことだ、“開演”って」
「何かが、動き出してる。星を巡る、本当の目的が」
次の舞台は、砂の王国か、それとも氷の果てか。だが確かなのは一つ。星は、すべてを知っている。
――彼らに、託す価値があるかを。