表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彗星の飴  作者: 千疾
2/34

第二章:炎の少女と魔導の街

風が砂を巻き上げる。リオは乾いた大地を越え、ようやく一つの都市へとたどり着いた。

その名は《フラムナ》。火の神を信仰するこの街は、古くから魔導技術に優れた「魔術師の都」として知られていた。

「魔法って、本当にあるんだな……」

リオの目の前で、杖を構えた少年が空中に炎の球を浮かせている。それは本でしか見たことのなかった、“世界の理をねじ曲げる力”だった。

リオが彗星の飴を探すためには、この魔法の仕組みを知る必要がある。というのも、祖母の日記にはこう記されていた。

“蒼の結晶は、星の魔力の核。その力を引き出せる者は、星と対話できる魔導士のみ”

「だったら、探さなきゃならないな。星と話せる魔導士ってやつを」

* * *

その夜。

フラムナの広場では、珍しく闘技試合が開かれていた。魔法使いと剣士、異なる流派の戦士たちが実力を競い合う見世物だ。

リオが見物人の輪に入った瞬間、目を奪われた。

「……あの子、火を纏って戦ってる」

ステージに立っていたのは、赤い髪を炎のようになびかせた少女。彼女の名は《エリナ》。炎を操る《焔紋えんもん》の魔導士。

「火竜の牙!」

彼女の杖から放たれた炎の槍が、対戦相手の土壁を貫き、一撃で試合を終わらせた。

「次ッ! 次の挑戦者は!?」

声に押されて、気づけばリオはステージに上がっていた。

「俺がやるよ」

「剣士? まさか魔法なしで来たんじゃないでしょうね?」

「残念。こっちは剣だけで勝つ」

* * *

戦いが始まる。

エリナの魔法は、火の魔力を自在に操る高位術。対してリオは剣技のみ――だが、読みと機動でわずかに押し返す。

「この剣……ただの剣士じゃないわね」

「そっちこそ、火を“形”にして使うのがうまい。まるで生き物みたいだ」

剣と炎がぶつかり合い、試合場に火花が散る。だがその時、突如として試合会場の地面が揺れた。

「!?」

地下から何かが飛び出した。それは黒い外殻を持つ異形の魔物グレイブモール。地底を這う大型の魔獣だった。

「どうしてこんなところに魔獣が!?」

観客が逃げ惑うなか、リオとエリナは即座に構える。

「エリナ、援護を頼む!」

「了解!」

リオは魔獣の動きを見極め、足を狙って飛びかかる。そこに、エリナの魔法が加わる。

「《業炎弾ごうえんだん》!」

赤く輝く魔弾が魔獣の背中を撃ち抜き、リオの剣がその喉を切り裂いた。

刹那の連携で、魔獣は崩れ落ちる。

「ふぅ……助かったわ。あんた、なかなかやるじゃない」

「君の魔法がなきゃ勝てなかった」

戦いのあと、二人は広場の片隅で向き合った。

「エリナ。君、星の魔力を知ってるか?」

「……その名前、どこで?」

リオの問いに、彼女は目を見開いた。

「星の魔力。古代に封じられた“彗星の飴”を探してるんだ」

沈黙ののち、エリナは頷いた。

「なら、一緒に来て。私の家に“星の魔導書”がある。……父の遺した本よ」

こうして、リオは旅の初めての仲間を得た。

炎を纏う少女と、剣を握る少年。運命は、ふたりを星の道へと導いていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ