心の冷えを捉えて熱の在処を知る
『冷え込んだ心 それは熱の在処を知るための道しるべ 熱なくして 冷えは生まれず 関心なきところに 冷えはなし 故に 冷えにこそ 熱の本質あり』
私たちは生きるなかで心が冷え込んでしまうときがある。それは上手くいかないときの自分であったり、世の中で起こった悲しい出来事だったり、他者との間に生じたすれ違いだったりする。そんなとき、対象に向けていた熱は葛藤へと変わり、強烈な冷えへと転じる。心の中で発生した冷えは冷笑や攻撃、拒絶や断絶といった場所へと私たちを連れて行こうとする。
そのような事態に出会ったときは目を閉じ、胸に手を当て、大きく深呼吸をして欲しい。葛藤がもたらす強烈な冷えは、私たちを暗がりへと引き寄せるとても強い引力を持っている。それは自分が本当に欲しかったもの・したかったことを誤認させてしまうほど強力なもので、その引力に身を任せると自分が見たかった光景を見失うことがある。それを防ぐために意識的な自衛が必要となる。
最初にやること。それは強烈な冷えを感じたとき、その対象に対する発言や行動を遅らせ、保留すること。冷えた心は私たちの思考に影響を与える。意識したものでなくとも、その冷えの影響が言葉や行動に出る可能性がある。緊急で対処しなければならない場合を除き、持ち帰ることが無難だ。身体を動かして好きな音楽を聴き、好きな食べ物を食べ、しっかりと睡眠をとる。そしてある程度落ち着いてきたら、なぜ心が冷えたのかを考える。
意識すること。それは心の冷えにつながった人物や出来事の評価をすることではなく、自分の心にピントを当てること。対象のどのような出来事に対して、自分の心がどのように動いたのか。冷え込みの原因となった痛みは自分のどのような感情を刺激し、その感情はどのような価値観や背景から生まれたものなのか。それをひとつ一つ明らかにしていく。
一例を挙げる。ある面接で、厳しい批判と共に頭でっかちだと指摘され NO を突き付けられた。この際、ショックを受け、帰宅後、心が冷え込む。そのときにすることはまず、しっかりと体の調子を整えること。動揺していたり、葛藤が強い状態で正確な判断をすることは難しい。睡眠をとり、ある程度気持ちが落ち着いたと判断したら分析に取り掛かる。
今回は頭でっかちという言葉と NO を突き付けられたことが心の冷えに繋がった。それはつまり、知識はあるが行動が足りていないという指摘に対して、充分な反論が出来ず心が傷ついたということ。また NO を突き付けられたことで心が冷えた背景には、自分が学んだ知識や能力を活かして貢献したいという強い想いがあった。それがどちらも否定されたことで心に強い痛みが走った。そして、それが心の冷えへと繋がった。まずはそのことを自分自身に理解させる。これが、心の冷えに引っ張られ、暗がりへと引き寄せられないために必要な作業となる。
その後に自分がとる行動を決める。先ほどの例だと、面接でNOを突き付けられた結果は変わらない。変えることができるのは理由から導き出した次にとる行動。心の冷えから見えた自分の奥底には、学んだ知識や能力を活かして貢献したいという想いがあった。だから、それを軸に方針を定める。知識が評価される市場を探す、頭でっかちと言わせないだけの経験を作る、価値観が認められる労働の場を見つける。これが心の冷え込みから発生した暗がりへの引力を振り切り、道を歩き続けるための一つの方法となる。
これを万人にとっての正解だと言うことは出来ない。強烈な冷えや衝撃的な出来事に直面し、当事者としてその渦中にいるとき、このような考え方が出来る人はほぼいない。筆者も出来ない。だからこれはこういう考え方もあるというひとつの事例。
あなたにはあなたの方法があり、進む道がある。だからこそ、あなたに敬意を。あなたが歩く道。その道があなたの生きる世界を優しく色づけてくれますように。今日もあなたという火がこの世界に確かに灯っている。




