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書という光、暗闇を払う

「書に内包された世界 時を越える かつて経験した闇を踏み越えるため 在りし日の光 変わることなく」


 この世界を生きる人たちは自分が抱いた想いを伝えるために言葉を紡いだ。しかし、口からこぼれた言葉は直ぐに世界に吞まれ消えてしまう。人の想いはあまりに多様で、口伝による伝承は多くの歪みを生んだ。人は文字を使い、想いを刻んだ。言葉が正しく届くように、広い世界に吞まれ消えてしまわないように。そうして本が生まれた。


 あなたにとって本とはどのようなものだろうか。孤独を癒してくれる隣人、新しい視点をくれる先生、気に食わないけんか相手、生理的に受け付けない天敵。そのすべてを本はあなたに用意してくれる。本の数だけ、あなたはあなたを知ることができる。何が好きで、何が嫌いか。何を美しいと思い、何を醜いと思うのか。そのすべてがあなたの糧となる。


 本とは書き手が抱いた想いの結晶だ。それ故に、その本には作者の内面が濃く現れる。ここで間違えないで欲しいことは本と作者を混同しないこと。本とは抽出された想いの結晶であり、現実世界で生きる作者には他の要素もまた多く含まれている。だから同じ作者が書いた本であっても、異なる本であれば想いの形はまた違ったものとなる。つまりあなたは本の数だけ異なる作者に会うことができる。


 人は生きるうえで漠然とした不安や、誰にも吐露することができない葛藤を抱えることがある。そんなときはまず深呼吸をしよう。温かい飲み物を飲み、しっかりと食べ、睡眠をとろう。そして、たくさん本がある場所へいこう。たくさんの種類の本が置いてある大きな本屋さん。蔵書量が多い図書館。そこには今を生きる、過去を生きた人たちが私たちのためにたくさんの自分を置いてくれている。


大切なことは無理に解決策が書いてある本を探さないこと。ぶらぶらと本棚を歩き、気になった本を読む。それを繰り返すことであなたに似た誰かを見つけることができるかもしれない。あなたの傷を、億が一でも癒してくれる解決策が見つかるかもしれない。


 しかし、それでもあなたが感じた欠落を癒してくれる本が見つからないこともある。それはあなたの世界から色を消し去ってしまうような衝撃を与えるかもしれない。そんなときはゆっくりと目をつぶり、深呼吸をして、大きく息をはこう。そして、ペンと紙を用意する。


あなたは今、自分を最もよく知り、その欠落を癒すことができる唯一の書き手となった。あなた自身のために、あなただけの本を書こう。かつて先人たちは想いを伝えるために筆をとった。伝える相手は他人だけではない。自分に伝えるために本を書いた人もいる。それが今本という形で私たちの手に残り託されている。


 過去と現在、そして未来が複雑に交差するこの世界で懸命に生きるあなたに敬意を。本とはこの世界を生きた人たちが残す書き手自身の姿でもあり、未来の私たちが読むことができる手紙でもある。その中にはあなたが必死に生きた証が刻まれた本もあるかもしれない。今日もあなたという火がこの世界に確かに灯っている。

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