水滴を集めて海をつくる
「目の前に広がる青い海 そっと近づき 両手ですくう 隙間からこぼれる一滴のしずく 海とは、一滴のしずくが集まったものだ」
この世界には大きく見えるものがあふれている。視界いっぱいに広がる青い海。両手で囲うことができないほど巨大な木。見上げるくらい高くそびえ立つ大きなビル群。そのどれもが私たちを驚かせる。ある人はその光景を見てワクワクし、またある人はその威容に息をのむ。
あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。難しいと思うことに取り組んだとき、時間が経つにつれて、コツをつかみ、何を難しく感じていたのかを忘れてしまった。大きな問題に直面したとき、その問題の全容がつかめず、圧倒された。だけど諦めずに、時間をかけて、その問題を小さい要素に分解していき、最終的には対処可能なレベルまで落とし込むことができるようになった。
もし、あなたが何か問題を抱えていて、その問題がとても大きく見えているのであれば、どうか落ち着いてほしい。目をつぶり、ゆっくりと深呼吸をしよう。大切なことは、気持ちを落ち着けること。焦りや怒り、悲しみといった感情は、あなたの見る世界を狭めてしまう。狭まった視界では、その問題の本質を捉えきれないことがある。
ここで重要なことは、問題を解決するにあたって、感情が不要なものだとは言っていないこと。あなたの感情は、どのようなものであっても、あなたが生きていくうえで必要な熱だ。その熱は、問題を解決するにあたって大きな力となる。
ノートを取り出し、問題についてひとつ一つ書き出していこう。大切なことは、言葉にすること。言葉にすることで、問題の本質を捉えることができるようになる。言葉にする前の問題とは、目の前に広がる海のようなものだ。限りなく広く、捉え切れないほど多くの性質を持っている。その海を、ひとつ一つ言葉として定義していく。そうすることで、はじめて私たちは海というものが、どういうものなのかを知ることができる。
あなたが抱える問題も同じだ。言葉にすることは、かなり辛い作業かもしれない。時間もかかる。だけど、それをする価値はある。あなたが抱える問題という海を、言葉によって水滴にし、あなたが扱える範囲まで細かくしていく。そうすることで、あなたは海を知り、その海を構成する水滴に適切な働きかけができるようになる。そこまでいけば、あなたは海に対処することができる。なぜなら、その一滴のしずくが集まって生まれたものが海だからだ。
目に映る存在の大きさが不確かなこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。あなたが抱える問題とは、あなたがこの世界で生きている証にほかならない。どうかその問題を、あなたが受け止めてあげられますように。今日もあなたという星が、世界に確かに輝いている。
