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嘘よ氷花となりて、涙を覆え

「心からこぼれた嘘 降り積もる雪 地面からのぞいた小さな花 そのかすかな揺らぎが、世界の雪をとかすでしょう」


 人は生きる中で嘘がこぼれてしまうことがある。それは、意識的であったり、無意識から生じることもある。嘘とは、心からこぼれた感情の結晶だ。善悪にかかわらず、その人の深いところにある感情がにじみだす。あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。何かを失敗してしまったとき、バツが悪くなってつい事実と違うことを言ってしまった。友達と話すとき、心の中では違うと思いながら、話を合わせた。嘘というものは、心がつくった防御機能のようなもの。もし、あなたがそのことで悩んでいるのであれば、どうか落ち着いて欲しい。その嘘がどのようなものであれ、あなたの心の中から生じた叫びには違いがない。ゆっくりと目を閉じて深呼吸をしよう。その叫びには無限の可能性が秘められている。こぼれた嘘は、自分の心を知る上で、とても重要なカギとなる。


 想像して欲しいのは雪の結晶だ。嘘というものはとても繊細なもので、知ろうと手を伸ばすと、身体の熱ですぐに溶けてしまう。ひとつ一つは、小さなものかもしれない。降り始めた雪が、太陽の熱ですぐにとけてしまうように。嘘というものは、時間の経過とその量によって持つ性質が変わってくる。降り始めた雪は少しずつ周囲の気温を下げ、地面に積み重なっていく。小さな雪の結晶は、集まることで強度を増す。そして、巨大な雪のかたまりへと変わってしまう。これは、人の心からこぼれた、嘘という雪の結晶でも同じだ。大切なことは、降り積もってしまった雪のかたまりを、無理にどうにかしようとしないこと。雪のかたまりは非常に強固で、とても冷たいものだ。なんとかしようと頑張ってしまうと、その冷たさに、身体の芯まで凍り付いてしまう。まずは、暖かい飲み物を飲んで気持ちを緩めよう。それからでも遅くはない。


 最初にすることは、心からこぼれた嘘に気づいてあげること。既にある雪のかたまりを見るのではなく、こぼれ落ちてくる雪の結晶を、そっと手のひらで受け止めてあげる。嘘という雪の結晶は、言い換えれば、その人の心の中にある花がこぼした、花びらのようなものだ。姿や形、温度は変わってしまっているかもしれないが、その雪の結晶が映す色はあまり変わっていない。ゆっくりと観察をしよう。その嘘がどのような心の声から生じたものかが分かれば、雪の結晶を花びらへと変えることができる。その花びらは、灯火となって、あなたの雪をとかす熱となる。花びらが多くなれば、あなたが生きる世界はほんの少し暖かくなるかもしれない。そして、その暖かさが、あなたが見る世界に色をつける。


 花びらが雪となって落ちるこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。嘘とは、あなたの心がこぼした感情の結晶だと私は思う。その感情がどのようなものでも、あなたがこの世界に生きている大切な証だ。その嘘が、いつかあなたを暖める花となってくれますように。今日もあなたという花が、世界に確かに咲いている。

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