老いてなお、この青空を見上げて
「衰える肉体 かすれる吐息 にじむ視界から見た世界は それでも美しく広がっていた」
人生には衰えを感じる瞬間が必ずやってくる。身体を鍛え、精神を鍛え、実績を鍛え、美しさを鍛え続けている完璧な人間であっても、ひとである限り、老いを感じることはある。あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。若いころ楽々と行えていた作業をしたとき、思わず息切れをしてしまった。病気にかかり、ふと鏡を見たとき、鏡に映った消耗した自分の姿に衝撃を受けた。このような時は、かなりショックを受けるだろうが、どうか落ち着いて欲しい。目を閉じてゆっくりと深呼吸をしよう。大切なことは、その感情をしっかりと自分の中で受け止めてあげること。そうすれば、その衰えに対して、自分がどのような立場を取るのかを、選ぶことが出来るようになる。
全盛期のときは気にならないが、体力や精神力も、年齢や体の状態によって変動する。活力に満ちあふれているときは、どれだけ動いて作業しても、あまり疲れず、世界が輝いて見えるものだ。もしあなたがその状態にあるのであれば、どうかその感覚を大切にしてあげて欲しい。それは、何よりも得難く、価値あるものだ。注意することは、自分の中にある感情を無視しないこと。ひとつ一つは小さなよどみでも、集まればあなたの輝きを弱める原因となる。喜びも、悲しみも、愛おしさも、怒りも、その全てがあなたの輝きを作り出す源だ。しっかりと感情と向き合い、対処しよう。運動をしたり、好きな芸術作品に触れたり、友達と遊んだり、新しい趣味を始めたっていい。そうすれば、あなたはより長く、力強く輝き続けることができる。
もし疲れてしまった時は、ゆっくりと腰を落ち着けて、深呼吸をしよう。老いるということは、それだけあなたがこの世界で生きてきたということ。あなたの視界は昔と比べて、狭く見えにくくなってしまったかもしれない。だが、あなたが見てきた世界は広大で、視界に映る世界は、一層の深みを増している。それはあなたにしか見ることができない景色だ。
あなたの視点は、この世界にとってかけがえのない灯火となる。いつか、誰かが暗闇の中で道に迷ったときに、あなたという灯火と出会うかもしれない。暗闇の中で静かに輝くその灯火は、道に迷った人に新たな方向を指し示すだろう。あなたがこの世界にいる、それだけでこの世界は新たな方向性を得る。そこから見た世界は、より美しい光景が広がっているかもしれない。
全てのものが老いていくこの世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。老いとは、この世界であなたが確かに生きてきた、強さの記録だと私は思う。あなたのその強さが、この世界を優しく照らしますように。今日もあなたという灯りが、世界を美しく照らしている。




