涙よ、世界を包む灯火となれ
「瞳から零れた一滴の雫 響く雨音 隠れた太陽 地面に落ちた熱い雫は、世界を静かに変えるでしょう」
人は生きるなかで様々な涙と出会う。悲しい時にこぼれる涙、嬉しい時ににじむ涙、怒った時にあふれる涙、感動した時に湧き出す涙。その全てが人の心からこぼれた、熱い想いの結晶だ。あなたも経験したことがあるかもしれない。親しい人とはぐれ、ひとりぼっちになってしまった孤独さから、涙があふれた。逆境の中で必死に生きる人たちの強さに触れ、涙がにじんだ。喧噪の中、ふと窓の外を眺め、目の前に広がるあまりの世界の美しさに、涙をこぼした。それは、あなたの心が動いた証だ。たとえ、瞳から涙を流せなくても心配しなくていい。涙とは、瞳から流れるものだけをさすのではない。心の中で静かに落ちる涙もある。大切なことは、その感情をしっかりと自分の中で受け止めてあげること。その涙は、あなたが懸命にこの世界を生きている証だ。どうか大切にしてあげて欲しい。
涙は時に雨となって、この世界を震わせることがある。あなたはこのような経験をしたことはないだろうか。親しい人が悲しんでいる姿を見て、胸が締め付けられた。人が心の底から流した、うれし涙を見て、つい涙ぐんでしまった。なぜこのようなことが起きるのだろうか。それは私たちが生きるこの世界が、一人ひとりの人間が持つ世界を包み込んでいるからだ。人が心の底から流す涙には、とても大きなエネルギーが込められている。外から見れば、ひとりの人間が流す小さなひとしずくかもしれない。でも、その涙の落ちる音は決して小さなものではない。小さな涙が、世界を震わせることもある。
降りしきる雨に、太陽は隠されてしまうことがある。視界をさえぎる雨粒。激しく響く雨音。その中で、ふと不安になる──もしかしたら、自分はもう迷子になってしまったのではないかと。そんな時は、どうか落ち着いて欲しい。どれだけ激しい雨が降ろうとも、それはあなたの心の熱がつくりだしたものだ。ゆっくりと深呼吸をして、目を閉じよう。意識することは、その涙がどのような想いから生まれたものかを、一つひとつ明らかにすること。時間がかかってもいいし、休んだっていい。大切なことは、その雨粒の一つひとつに、あなたの感情が込められているということを知ること。
あなたが感じる雨とは、あなたの心がこぼした熱い灯火だ。その熱には、あなたの世界を変える力が宿っている。地面に落ちた雨粒が、太陽の熱を受けて、みずみずしい緑の植物を育むように。あなたがこぼした熱いしずくは、この世界を静かに変えていく力となる。
この雨音が鳴り響く世界で、懸命に生きるあなたに敬意を。涙とは、あなたの心が震わせた熱そのものだ。どうかあなたがその涙を大切にしてあげられますように。あなたの涙は、世界を暖かく照らす灯火となる。そしてその灯火は、この世界をやさしく包み込む。




