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静かな暗闇に、人は今日も火を灯す

「世界に広がる暗闇 震える花々 灯される小さな火 どれだけか細い灯りでも、誰かの夜を照らすでしょう」


 人は遥か昔から闇と相対してきた。夜に広がる真っ暗な闇、人を蝕む病、戦争や貧困、天災と対立。夜の暗さは数え切れないほど多くの形をとって、私たちの前に現れる。あなたも経験したことがあるだろうか。明るい部屋から出て、明かりのない夜道を歩いたときの心細さ。親しい人と喧嘩をして、心がすれ違ってしまった時に広がるじわじわとした胸の痛み。そのどれもが切実で、私たちの心に静かに影を落とす。


 時には夜の暗闇に呑まれ、呆然と立ち尽くしてしまうことがあるかもしれない。あまりの寒さと孤独さに身を震わすこともあるだろう。人はそれを弱さと言うかもしれないが、私は懸命にこの世界で生きている証だと思う。それは花が零した熱い灯火の欠片だ。


 暗闇は容易く人の視界をさえぎってしまう。そんな時は、どうか慌てないで欲しい。真っ暗に見えるような世界にも光は存在する。闇はあなたの周囲にある光全てを持ち去ってしまったかもしれない。だが、唯一持ち去ることが出来なかったものがある。それは、あなたの中にある光だ。


そっと目を閉じて、胸に手を当て、深呼吸をしてみよう。意識することは、手のひらに感じる熱と自分の心臓の鼓動だ。焦らなくていい。ゆっくりと時間をかけて、自分の内にある灯火を感じよう。あなたの灯火は、確かに、あなたの心臓の鼓動に合わせて脈動している。


 人はこの小さな灯火を、夜の闇の中で懸命に震わせてきた。ある人は闇を照らす電球を発明し、またある人は、灯火たちを束ねて組織をつくり、世界に火を掲げた。暗闇の中、凍えながら作品を創った人もいれば、震える人にそっと寄り添って、熱を伝えた人もいる。その全てが世界に広がる闇をそっと照らした。


 一つ一つの灯りはとても小さなものかもしれない。世界に広がる闇は濃く、あなたをひるませることもあるだろう。その時は、どうかあなたの胸の中にある灯火を感じて欲しい。夜の暗闇に圧倒され、世界から光が失われてしまったかのように感じても、あなたの胸の中には確かな灯りが宿っている。それがどれだけおぼつかないものであっても、世界に灯る確かな光だ。『ない』と『ある』の間に天と地ほどのひらきがあるように、あなたがこの世界にいる、ただそれだけで世界の闇は少し後退する。


 人が繋いできた灯火の中で、懸命に生きるあなたに敬意を。どれだけの暗闇があなたの視界を遮ろうとも、あなたの胸の中には確かな灯りが灯っている。どうかそのことを忘れないで。静かな暗闇の中で、あなたが灯すその火が、この世界の夜をそっと照らす光となる。

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