第五話 初めての魔法学習
界路が初級校へ入学してひと月ほどが経過した。
今日は待ちに待った魔法学習の日だ!!
1人でも学校に行けるようになり、明るい女の子の杏子ちゃんと友達になり、他のクラスの子とも馴染んできた頃だ。
杏子「あ、界路くんおはよ!」
界路「おはよ!!」
界路は元気よく杏子ちゃんに挨拶をし、授業が始まるのを待った。
午前中はいつも通り世界についてのお話だ。
この世界には【三大国家】という、世界の中心となる3つの国が存在する。
そして、その国々を中心に中規模や小規模の国家が存在している。
界路が住んでいる国はなんと、三大国家のひとつである火の国【カリエンテ】なのだ!
と言っても良く分からない界路だったが、世界の中心という言葉に偉大さを感じていた。
他には光の国【アポロン】と南の帝国【アルベリオ帝国】が三大国家に該当する。
世界について学ぶ中で、午後からの魔法学習が待ち遠しくて、界路はとてもソワソワしていた。
午前の授業を終えて、いつも通り杏子ちゃんとご飯を食べ、クラスの子とも少しお話をして、待ちに待った午後の授業が始まる!
安土先生が教室に入り、ついに魔法学習の授業を始めた。
まず最初に安土先生はこう話し始めた。「魔法を扱う上で大前提となるのは、自分に魔力がある事が大事だ。
どれだけ魔法の知識を身に付けても、自分に魔力がなければ発動できない。」
界路はドキッとした。自分には魔力が無いかもしれない──そんな不安が胸をよぎった。
それを察したのか、安土先生は優しく微笑んで言った。「魔力がなければと言っても、誰にでも魔力はあるんだよ。例え魔力量が少なくても心配する事はないよ。魔力は鍛えれば増やす事ができるからね。でもその人によって増やせる限界値がある事は覚えておいてね。」
優しい安土先生の言葉に界路はひと安心した。
「それじゃあ実際に先生が魔法を見せてみようか。」そう言って安土先生は手の平を上に向けた。
ボワッ!!
界路「…!!」
杏子「すごい…!」
「すげー!!」クラスのみんなもそう答えた。
安土先生の手の平からは、杏子ちゃんの小さな炎とは比べ物にならないほど大きな炎が立ち上がり、炎の熱を感じられるほどだった。
すごい。それ以外の言葉が見つからない。
杏子「安土先生!わたしもできるよ!!」
そう言って、杏子ちゃんは可愛らしい小さな炎を先生に見せた。
安土先生「あはは。杏子ちゃんはすごいね。杏子ちゃんはどんなイメージで炎をだしたの?」
杏子「わたしはね、手の平に燃えて!!って強く思って出してるよ!」
安土先生「そうだね。杏子ちゃんの言う通り、魔法を発動する上で魔力の次に大事なのがイメージする事なんだ。」
魔法を発動するにはイメージ力が大事。
つまり、炎を出したいと思ったら、炎をイメージして手の平からそれを出すイメージをする。
安土先生はそう言っても、実際はもっと複雑なんだと思う。実際、界路は炎をだせない。
ブワッ!!
界路が頑張って炎をだそうとしていると、後ろの方から熱を感じた。
それは安土先生の炎ではなく、同じクラスの奄美九羽だった。
安土先生「すごいなキミ。」思わず先生もそう言った。
九羽「ふんっ」
奄美九羽は恐らくクラスで一番優秀だ。しかし、性格は少しツンツンしていて、僕は苦手だ。
杏子「奄美くんすごいね」
界路「…」
界路は、何故か劣等感を感じた。その理由は分からない。
杏子ちゃんや安土先生が炎を出すのは素直に凄いと思えるのに、奄美が出すと、なぜか素直に褒める事ができず、炎を出せない自分に劣等感を抱いてしまった。
結局、僕は炎を出せなかった。
界路「ただいま。」
ママ「おかえり!界路。ご飯できてるわよ。」
界路「今日は疲れてるからいいや、お風呂に入って寝るよ。」
ママ「??」
そう言って僕はお風呂に入って自分の部屋にこもった。
ママ「大丈夫かしら、あの子。」
パパ「お前は分かっていないな。」少しにやけながらパパが言った。
ママ「どういうこと?」
パパ「界路はな、年頃なんだよ。気にするな」
ママ「意味わかんない。界路が友達から何かイジワルされたのかもしれないじゃない。」
パパ「これがずっと続くようなら、界路に聞いてもいいと思うが、今はそっとしておいた方がいいと思うぞ。」
パパの言う通り界路は今、そっとしておいてほしいだけだった。何があったのか聞かれても、自分自身もよく分かっていない。
しかし、界路は着実に大人の階段を登っている最中なのです。