第三話 時の力
界路はママから貰った誕生日プレゼントの
【時の歯車】を首にかけて、パパとの稽古に向かっていた。
界路(今日はやけに身体が軽い。
これならいつもより早く動けるかも!)
そう思いながらパパに剣を打ち込む界路の動きは、いつもよりも格段に速くなっていた。
パパ「す、すごいな界路。いきなり上達し過ぎじゃないか?」
急激な成長を遂げた界路の攻撃に戸惑いながらも、パパはその剣を受け止め、弾き返した。
カンッ!
コツンッ
界路「いてて…わざわざ当てなくてもいいじゃん!」
パパ「ダメだぞ!パパが攻撃をしなかったら、お前は甘えるだろ?剣を弾かれてもいいやと思って。
そんなんじゃ、いつまで経っても上達しないからな。」
そう言って界路を見つめるパパは驚いた。
パパ(顔の傷も腕の傷も、もう治っている…。)
そんな事を思っていると、界路が突っ込んできた。
界路「ぼーっとしてたらやられるよ!!」
速度を更に上げた界路の攻撃がパパの剣を弾いた。
パパ「なっ…」
そして状態を崩したパパに対して界路は更に速度を上げる。
界路(こ、これならパパに勝てるかも!!)
界路の攻撃がパパに当たろうとした時、急に界路の身体が重たくなった。
界路「あれ、なんだこれ…身体が重い。」
(疲れてはいたけどこんな急に身体が重たくなるなんて…)
界路がパパに剣を当てる前に力が抜けて、その場に倒れ込んでしまった。
パパ「どうした界路?今の動きはすごく良かったぞ!なんで急に倒れ込んだんだ?」
界路「分かんない…なんか急に力が抜けちゃって。」
パパ「急に…?まるで魔力切れをしたみたいだな。剣の稽古をしてるのにおかしな奴だ。」
そして、パパが僕に近付いてきた。
パパ「お前もまだ子供だしな。パパが少し無理をさせすぎたのかもしれないな。今日はもう帰るか」
そう言って、僕をそっと背負いパパは家に向かって歩き出した。
パパの背中は大きくてごつごつしていて、少し汗くさかった。
けれど、その背中は不思議と安心できて僕はそのまま眠りについた。
パパ「ただいま!」
ママ「おかえり!あら、界路は疲れて寝ちゃったのね。」
パパ「急に倒れ込んだんだ。疲労が溜まっていたのかもしれないな。」
ママ「そうね。界路はまだ子供なんだから、あまり無理はさせちゃだめよ?」
パパ「そうだな。そんな事より母さん!界路は見違えるほど強くなっているぞ。やっぱり俺の教えが良かったのかもしれないな。」
ママ「良かったじゃない。パパの子だからきっと剣の才能があるのよ。」
パパ「そうかもしれないな!ははは。
そういえば界路はもう6歳だし、そろそろ学校へ入学させても良い頃だな。」
この世界の学校は通う義務はないが、基本的にみんな6歳頃から学校に行き、一般的な知識を身につける。
6歳〜12歳までは、魔法や世界の基礎知識を学び、剣の稽古や魔法の訓練を行う。
そして12歳からは、剣術専門と魔術専門の学校に分かれ、自分の得意分野を磨いていく。
中にはどちらも優れた才能を持ち、認められた者だけが通える【魔剣士学校】も存在するが、僕には関係ないだろう。
パパ「界路の実力があればすぐに上達して剣聖になれるのも夢じゃないぞ!」
ママ「ふふふ。そうね、界路はなんと言っても私たちの子供だもんね。明日、学校に通わせる手続きをしてくるわ。」
パパ「おお!頼んだぞ、母さん。」
パパとママは、僕が寝ている間に学校へ通わせる話をしていた。
学校とはどんな場所なんだろう?新しい発見や、人との出会い。
ドキドキ、ワクワクな界路の青春ラブストーリーが始まろうとしているのかもしれない!